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Alice who wishes confinement
私の居場所はどこにあるの――女児誘拐の不穏なニュースを観ながら倒錯した欲望に駆られた女子高生が体験する、エロティックでキケンで悩み多き冒険。理想と現実の狭間で揺れ動く乙女心とアブノーマルな性の交点に生まれる現代のロリータ・ファンタジー。オナニーマエストロ遠藤遊佐の作家デビュー作品!!ふと気がつくと、全裸で膝を抱えたポーズのまま床に横になっていた。
こんな状態では一睡もできないだろうと覚悟していたけれど、どうやら知らない間に眠ってしまったらしい。
後ろ手に縛られているせいで体中が痛いし、激しく喉が乾いている。その不自由さは数週間前に監禁されたばかりの頃を思い出させる。飲まず食わずでじっと尿意を我慢していた数日間。とてつもなく長かった一日が昨日のことのように蘇り、まゆりはゾッとした。
――今風邪をひいたりしたら、本当に死んでしまう。
そう思って慌てて体調をチェックする。不自由ではあるものの頭痛や熱っぽさはないようだ。
昨夜はそれほど寒くなかったんだろうと一瞬自分の幸運に感謝したが、静寂の中に小さく響く「ブゥ〜ン」という音を聞いて、すぐにそうではないことに気づいた。エアコンが付いているのだ。そういえば、昨夜はつけっぱなしだったはずの蛍光灯もいつのまにか消えている。ぐっすり眠ることができたのはこのせいだ。
きっと、眠りに落ちたのを見計らってタナベがリビングに戻ってきたのだろう。そして彼女が体調を崩さないように、最低限のケアをしていったのだ。
昨夜の別人のように冷徹な様子を目にしたときは「もうダメかもしれない」と思ったけれど、やっぱりこの中年男には優しいところがある。
体の痛みも忘れ、まゆりは素直に感謝した。
タナベは「裏切られた」というショックのあまり、美少女を溺愛して暮らした時間を一人芝居に過ぎないと思い込んでいるようだったが、実はそうではない。まゆりにとってもこの数週間は、それなりに楽しいものだったのである。
奔放でいつでも周りを巻き込む姉の富子とは対照的に、まゆりは子供の頃から真面目で、両親にさえワガママらしいワガママを言ったことがなかった。そんな彼女にとって、どう考えてもアンバランスな交換条件を「はいはい」と笑って受け入れてくれるタナベは、手放しで甘えられる初めての人だったと言っていい。
たとえそれが下心から出た優しさだとしてもかまわなかった。優しくしてくれるのは自分に女としての魅力があるという証拠だと思うと、今までに感じたことのない満足感で胸が満たされた。
そして何よりも嬉しかったのは、この数週間、タナベが自分だけを見てくれていたことだ。
2年以上にわたるひきこもり生活のせいで、まゆりは自分がこの世に必要のない人間だと思うようになっていた。寝て起きて食べて寝る、毎日が同じことの繰り返し。学校にも行かず、ただ息をして座っているだけ。これでは大きな人形と同じだ。
たまには藤原とインターネット将棋を楽しんだりもするけれど、楽しい時間は束の間で、対局が終わってしまえばそれから数週間はまた一人ぼっちの時間が待っている。もちろん学校に行っても話してくれる友達なんて一人もいない。
――私には、居場所がない。
そう思うたびに小さな絶望を感じた。
でも、仕方のないことなのだ。家族も藤原もそれぞれに自分が生きる世界を持っていて、四六時中彼女の相手をしているわけにはいかない。人間は誰でもそうなのだ。
まゆりも頭ではわかっている。わかってはいても、どうしても自分だけが置いていかれたような気持ちがしてならなかった。
しかし、タナベだけは違っていた。
「アリス、夕食は何がいい? 食べたいものを言ってごらん」
「コンビニに寄ったら面白い入浴剤を売ってたから、キミが好きだろうと思って買ってきたよ」
彼は、二回りも年下の少女に向かって恥ずかしげもなくそんなセリフを口にする。
彼の中ではいつもまゆりが最優先だった。会社から帰ってくると、その日あったことや電車の中吊り広告から仕入れたニュース、帰りのスーパーで目にした新製品の情報まで、全部彼女に話して聞かせる。“誰かがいつも自分のことを考えてくれている”と思えば、一人で部屋にいても寂しくないのだいうことを、彼女は初めて知った。
そればかりではない。寄り道は一切せず、会社で飲み会がある日も「1時間で帰るよ」と言えば本当に1時間ぴったりで帰ってくる。約束は決して破らない、模範的な夫のような男なのだ。まあ、見てくれはあまり冴えないけれど。
そんな毎日が続くうちに、まゆりはタナベを“気味の悪いロリコン”ではなく“大事にしてくれる優しい人”と思うようになっていた。
だから、どうしても卑劣な悪人だとは思いたくなかった。悪いのは、好意にあぐらをかいて裏切るようなそぶりを見せた自分のほうだ。
タナベが「どうせ僕はロリコンの変態なんだから」と自らを蔑むたびに、彼女の胸はまるで自分のことのように痛んだ。可愛い可愛いっていつもお姫様のように扱ってくれるけど、私だって役立たずのひきこもりなのよ――。
――お水が飲みたい……。
エアコンで空気が乾燥しているせいもあってか、喉の渇きはどんどん増してくる。なんとか流し台のところまで行って蛇口をひねり水を口にしたいところだが、そうはいかない。なんといっても彼女の両手は後ろ手に拘束されているのだ。
ぼんやりとリビングの中を見回すと、繋がれている柱から2メートルほどのところに水の入った深皿が置かれているのが目に入った。タナベが用意していったに違いない。
四つん這いになって皿から水を飲むのには抵抗がある。しかも全裸だ。
でも、背に腹はかえられない。まゆりはシミ一つない白い体をぎこちなく屈めると、お尻を突き出し、犬のようにピチャピチャと音を立てて水を飲んだ。いつもタナベが用意してくれていた冷たいミックスジュースとは似ても似つかぬ生ぬるい水道水だったが、美味しいと思った。
リビングには、おまるもしっかり用意されていた。
それほどしたいと思ってはいなかったはずなのに、それを見た途端、反射的に尿意が湧いてきて我慢できなくなり、可愛いアヒルの形をしたおまるにまたがってジョボジョボとオシッコをしてしまった。以前もこんなふうにして用を足していたはずなのに比べ物にならないくらい恥ずかしいのは、下着すらつけない全裸だからだろう。
濡れたアソコを拭くことさえできない気持ち悪さを噛みしめながら、自分は獲物なんだと実感する。
――そう、昨日までとは違う。今の私はタナベに飼われてるんだわ……。
カーテンの外から差し込む陽の具合から考えると、時間はお昼過ぎというところか。疲れきってけっこう長い間眠りこんでいたらしい。初めてのオーガズムを体験したことは、それほど少女の体と心に大きなショックを与えたのだろう。
まゆりは柱によりかかり、目を閉じて考えた。
――これからどうすればいいんだろう。
まず頭に浮かんだのは、携帯電話の存在だった。
監禁される前日、姉の富子がくれた小さなクマのぬいぐるみ。彼女はそれに携帯電話を隠し、アクセサリーとしてずっと学生鞄につけてあった。しかし、鞄はいつも置いてある場所にはなく、リビングをくまなく探しても見当たらない。
きっとタナベが2階の寝室に持っていったのだ。死なないために必要なものだけはきちんと揃えておいてくれたものの、読みかけのマンガやテレビのリモコン、白いフリルのワンピースなどはすっかり姿を消している。贅沢品の類は全て引き上げたらしい。まゆりを溺愛することをやめたタナベには隙がなかった。
――ああ、あれさえあれば藤原さんに連絡がとれるのに……。
こんな時のために、わざわざGPS付きの携帯電話を用意し苦労して持ち込んだのである。でも、いざという時に使えなくては何の意味もない。小さくため息をつき、唇を噛む。
――落ち着いて、まゆり。ピンチの時ほど平常心を保たなくちゃだめ。集中して今打てる最善の手を考えるのよ。
懸命に、将棋を指すときの澄み切った気持ちを思い出そうとする。焦ったらこのゲームは負けだ。邪念を捨て、頭脳をフル廻転させる。今ある情報を分析し、次に指すべき最良の一手を考えるのだ。
たぶんタナベはこれから始まる二度目の監禁生活でも、何かと引き換えにいやらしい行為を要求してくるだろう。だからこそ、先手を打って取引に使えそうなものを取り上げたのだ、まゆりはそう思った。
彼は決して力づくでいうことを聞かせるタイプではない。あれだけ激昂していても、無理矢理レイプしなかったのが何よりの証拠だ。これまでの取引の中でも、その交換条件を飲むかどうかの最終的な判断はいつもまゆりにさせていた。
ということは、何らかの行為と引き換えにもう一度携帯を手に入れられる可能性もあるはずである。問題はいつその一手を指すかのタイミングだ。いくらお人好しの中年男でも、まゆりが洋服や食べ物より先にクマのぬいぐるみを要求したら怪しむに決まっている。
落ち着いて。そう、落ち着いて……。ショックと疲労でぼんやりした思考の中で、必死に考える。
しかし本当のことを言えば、携帯がないことに安堵している自分もいるのだった。
連絡手段があれば、助けを求めないわけにはいかない。なんといっても彼女は見知らぬ変態男に監禁されている獲物なのだから。
でも、このまま逃げ出してしまうにのは抵抗がある。もし助けを求めれば、タナベは女子校生誘拐監禁事件の現行犯で警察に捕まるに違いない。そのとき彼がどんなにがっかりし、どんなふうに自分を罵るのか、考えると気持ちが暗くなる。
――悪い人じゃない。ちょっと内気でロリコンで変態なだけよ……。
すると、急に昨夜のことが脳裏に蘇えってきた。
裏切りを責め立てるタナベのねちっこい態度。ギラついた目つきで恥ずかしい部分を美味しそうに舐めしゃぶる姿は、まゆりの知っている優しい彼とは別人のようだった。
――でも……でも……。
なぜかわからないけれど、あんなに怖くて嫌だったはずなのに今思い出すと全身が甘い感覚に包まれてしまう。
クリトリスを舐め上げるザラザラした舌の感触を反芻すると、胸がキュンと締め付けられる。
アソコを触りたい、と思った。もう一度あの快感を味わいたい。タナベがそうしてくれたように、とろけるような気持ちにさせてくれるあの敏感な部分を思いっきりこすりあげたい。
自由にならない両手がもどかしくてたまらなかった。
こうなると、もう難しいことなんて考えられない。諦めて体をぐったりと床に横たえ、昨夜あった一部始終を思い返す。
タナベの欲望にギラついた目。蔑むような表情。穏やかな口調だけれど、実は下品で卑猥な言葉の数々。そして最後に訪れた、あの絶頂感。
詳しく思い出すたびに下半身が熱くなってくる。
――ああ、私どうしちゃったんだろう。
まゆりは、頭の中で何度も何度もオナニーを繰り返した。いくらやっても飽きなかった。
(続く)
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