新連載 官能ロリータ・ノベル 毎週土曜日更新!
Alice who wishes confinement.
私の居場所はどこにあるの――女児誘拐の不穏なニュースを観ながら倒錯した欲望に駆られた女子高生が体験する、エロティックで悩み多き冒険の日々。理想と現実の狭間で揺れ動く乙女心とアブノーマルな性の交点に生まれる現代のロリータ・ファンタジー。オナニーマエストロ遠藤遊佐の作家デビュー作品!!
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【1】ひきこもり少女の憂鬱
まゆりがその事件のことを知ったのは、高校三年の冬。新年が開けて2週間程が過ぎた頃だった。
その日の朝、彼女はいつものように家族と時間をずらし一人で遅い朝食を食べると、ぼんやりと自分の部屋に戻った。薄ピンクのジャージに包まれた体がだるい。考えてみれば、昨日は昼寝も入れると15時間も寝ている。おとといもその前もそんな感じだ。
寝る以外には何をしたんだっけ、とふと考えてみる。デンタルフロスを使い30分かけて歯を磨いた。新聞の4コマ漫画をスクラップした。(別に特別面白いわけじゃないけど、たとえスクラップでも毎日何かが増えていくと安心する)。時代劇の再放送を2番組分観て、あとはパソコンでソリティアを40回。さすがに目がチカチカしてきたのでベッドに寝っ転がってなんとなくアソコを弄っていたら、また眠くなって寝てしまった。
さあ、今日は何をして一日をやり過ごそう……アフリカの子供たちのためにベルマークでも集めようかな……。はぁ。
憂鬱な気分で姉のお下がりの14インチ小型テレビをつけると、あるショッキングなニュースが目に飛び込んできた。
「昨夜9時過ぎ、○○県○○市の23歳の女性が保護されました。保護された女性は1999年4月、当時通っていた中学校の下校途中に見知らぬ男によって連れ去られ、以後10年間、男の自宅の一室に監禁されていた模様です。
誘拐拉致事件の容疑者として逮捕された無職・田辺昭雄(35)はずっと、ひきこもり状態で母親と同居していました。今回の事件は、容疑者の母親へのたび重なる暴力を心配した地域の保健所職員が自宅を訪問した際に、被害者の女性を発見したことから逮捕に結びついたということです。なお、付近の住人も女性が監禁されていた気配にはまったく気づかなかったと話しており……」
まゆりは、あっという間にそのニュースに引き込まれ、テレビに釘付けになった。
その日は一日中チャンネルをザッピングし、同じニュースを何度も繰り返して観た。どんな些細な情報も見逃さないよう、食事をすることすら忘れて全部の局のワイドショーに目を通した。
10年間一歩も外に出ることなく、一人の男に監禁され続けた女の子。
――ああ、なんて素敵……!
もちろん普通の女子校生だったら、眉をひそめ耳をふさぎたくなるようなニュースだろう。しかし彼女の心に芽生えたのは、まったく逆の感情だった。
――私も、できることなら監禁されたい。10年間なんてケチなこと言わない、できるだけ長く、なんだったら一生監禁してくれたっていい。だって食事はちゃんと食べさせてもらっていたみたいだし、ワイドショーではテレビや本も与えられてたって言ってたもの。不満に思うことなんてないじゃない!
事件についての新しい事実が報道されるたびに、胸がキュンと震えるのを感じた。こんなに何かに夢中になるのは何年ぶりだろう。うんざりするほど長かった一日が短く感じられ、ずっと曇り空に包まれていた心に晴れ間が見えてくるような気さえした。
テレビの画面で、訳知り顔の中年アナウンサーが言う。
「うーん、しかし10年間も監禁されていて周囲が誰も気づかないなんてことがあるんでしょうか。現代社会の底知れない闇を感じる事件ですねえ」
ふん、この人なんにもわかってない。大手テレビ局のアナウンサーなんて、きっとなんの疎外感も劣等感も感じたことがないに違いない。
被害者の少女は逃げ出せなかったんじゃなく、逃げ出さなかったんじゃないか。まゆりはそう思った。いわゆる“自由”はないけれど、なんの義務も責任もない生活。それがそんなに悪いものだとは彼女には思えなかった。
それに、あなたみたいな有名人にはわからないかもしれないけど、たとえ隣に住んでいたとしても、人間は興味のない相手には誰も注意なんて払わないものなのだ。現に最近隣に越してきた若夫婦も、向かいの家に住んでいる朝早くて夜遅い一人暮らしのサラリーマンも、私がもう2年間もこうしてひきこもっていることにまったく気づいていないじゃないか。
そう、まゆりはいわゆる登校拒否のひきこもりだった。
本格的に学校に行けなくなったのは、高校2年生に進級した頃からだ。理由は平たく言ってしまえばいわゆる“いじめ”である。
彼女は、真面目で成績優秀な少女だった。それまで通っていた地元の公立中学から私立のエスカレーター式進学校である星涼学園に入学できるのは、毎年1人か2人。まゆりは部活に熱中しながらも一生懸命コツコツと勉強し、その難関を潜り抜けた。合格した時は両親とも大喜びしてくれたものだ。
思えばあの頃が私の黄金期だった、いったいどこで間違っちゃったんだろう……とまゆりは思う。
中学時代の部活はバレーボール部。運動神経はそれほどよくなかったが友達とひとつのことに打ち込むのは楽しく、自分のことを社交的な人間だと思って疑わなかった。しかし高校入学を機に、運命は滞り始めた。
入学式の前日に交通事故に遭い、長期間の入院を余儀なくされたのだ。そのせいで新しいクラスでの生活に出遅れ、ようやく登校した時にはもういくつかのグループが出来上がっていて、居場所がなくなっていた。地元中学から星涼学園に進んだのは彼女だけだったから、優しく迎え入れてくれる友達もいない。
そしてさらによくないことに、まゆりはとても可愛い顔立ちをしていた。真っ白い肌に子犬のような黒目がちの瞳。自分ではやや寸胴でぽっちゃり気味のスタイルを気にしているが、そのほんの少しダサい感じがかえってウブそうに見え、大きな魅力になっていた。笑うと目尻がほにゃ〜っと下がり、右の頬にえくぼができる。中学時代には上級生達が密かに「まゆたんファンクラブ」を結成していたほどだ。
少女の世界というのは不思議なもので、いくら目立つタイプでもなんらかのグループに属してさえいれば“○○グループの○○ちゃん”でいることができる。ギャルグループの中の○○ちゃん、オタクグループの中の○○ちゃん、優等生グループの中の○○ちゃん、というように守られながら生きていくことができるのだ。でも、どのグループにも入れなければ、ただの目立つ生意気な子になってしまう。
まゆりは仕方なく、しばらくの間独りで行動した。でも、他にすることがないからと一生懸命勉強して良い成績を取れば、なおさら孤立してしまう。そんな環境にいることがストレスになったのか、次第に偏頭痛や微熱を訴えるようになり、事故の後遺症という名目でしばしば学校を休むようになった。
3年生になった今では、ほとんど学校に行っていない。時々担任教師に呼び出されて職員室に足を運ぶことはあるけれど、クラスメイト達が大学受験を控え忙しくなった今では、そんな機会すらほとんどなくなっていた。
そんな時に目にしたのが、女児誘拐監禁事件のニュースだったのだ。
クラスメイトのみんなはもうすぐセンター試験。でも私はまだ高校一年の時のまま。最近ではお父さんもお母さんも諦めたのか、小言すら言わなくなっている。
家には居づらい。でも学校にも居場所はない。いつまでもこのままでいられるはずがないのはわかってるけど、殺伐とした外の世界には出たくない。
まゆりの目には、“監禁される”という状況が、この上なく素晴らしいものに映ったのである。
人権を尊重したのかニュースでははっきりと言わなかったが、被害者の少女はたぶん男の性の慰み者になったのだろう。同じ年頃のギャルたちに比べればウブだけれど、まゆりにもそれくらいのことはわかった。テレビに出てくるコメンテーターたちもそこのところを突いては、加害者である田辺昭雄をだの「色魔」だの「レイプ魔」だのと攻撃していた。
しかし、そんな言葉さえも彼女の心には甘く響いた。
高校に入ってすぐにひきこもり生活に入ったせいで男性経験は皆無だったけれど、まゆりだって18歳の少女だ。一応性に対する興味はある。いや、実際に同年齢の子たちと話す機会がないぶん、そういったことに関しては人一倍妄想を膨らませていたと言ってもいいかもしれない。
部屋にある14インチの小型テレビと高校の入学祝いに買ってもらったパソコンが彼女の主な情報源だったが、実を言えばインターネットの履歴には、エロサイトのURLがちらほら見え始めていた。暇にまかせてネットサーフィンをしていると、どうしたってそういったサイトが目に入る。彼氏とのセックスを赤裸々に告白する女子校生、不倫相手とのアブノーマルなセックスに溺れるOL、ご主人様に命令されるがままにいやらしいご奉仕をして悦ぶ人妻……。初めて見た時には驚いたけれど、そういった淫らな女たちの告白やあられもない画像を見ていると、なんだか体が熱くなってくるのだ。
恥ずかしいけど、最近は自分で慰めてしまうこともある。慰めるといってもせいぜい股間に手をやってパンティの上から火照った部分をこするくらいのものなのだが、それをした後はなぜかぐっすり眠れた。
――もしも田辺昭雄のような“色魔”に監禁されたら……。
そう考えると、まゆりはどうしようもなく胸がドキドキしてきた。
誘拐されたとき被害者の女の子はまだ13歳だったから、ただひたすら怖いだけだっただろう。幼い体を愛撫されても震えるばかりで、家に帰りたいと泣いて田辺を怒らせたりもしたはずだ。
でも私は違う。もう18歳だからセックスなんて怖くないし、男と女がすることに興味だってある。もしかしたら彼を悦ばせることだってできるかもしれない。
目を閉じると、がっしりとした体つきの大柄な中年男の姿が脳裏に浮かんだ。
田辺だ。彼はワイドショーに出てきた小さな家の一室に私を監禁する。2人きりの部屋に鍵をかけ、ロープでベッドに縛りつけて、服を脱がせようとする。そして……そして……。
悲しいかな、想像はそこでストップしてしまった。いくら興味があっても実経験がないのだから無理もない。
――でもまあいいわ。明日になったらもっと違った情報が入ってくるかもしれないし。
この時から、監禁される自分を想像するのがひきこもり少女・まゆりの唯一の楽しみになった。
(続く)
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10.09.04更新 |
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