第20講 続々・便秘体験告白【2】 文=横田猛雄 イラスト=伊集院貴子 |
第二課 掘り出し作業
先に、便秘の秘結便の掻き出し処置は、妊娠の人工中絶、即ち掻爬と同じような手技だと言いましたが、全くそうです。
中絶処置の場合は、櫻井式やジモン式などの開口径の大きな膣鏡で、膣即ち産道を拡げ、器具を使って子宮口を出口の方へぐっと引き摺り寄せます。
そしてその子宮の中へ、器具や手の指を入れて、胎児を掻き出すのです。
すべてが指先の勘だけを頼りにする、非常に熟練を必要とする仕事です。
その処置は肉眼で確かめてする訳にはいきませんので、器具を入れる時の方向の誤りや、力の入れ過ぎで子宮内膜を突き破ったり、胎児の一部を掻き出し残したりして、患者の生命を危険におとしいれる例もよくあるのですが、便秘治療はこの中絶処置に比べると、楽な処置ではあります。
それは腟鏡で肛門と直腸とを全開にしさえすれば、胎児ならぬ秘結便が、眼に見える所に鎮座ましますからです。
医師はそれを掘って、削り出せばいいのですから。
でも直腸粘膜は軟らかくて傷つきやすい所ですから、硬い便を割るには、器具に力を入れて、それが滑ったりして、粘膜を突き抜くようなことがあっては生命にかかわることになります。
この削り方と掘り出し方こそ、ベテラン医師の腕の見せ所という訳です。
見られてピンピンに立っている私のチンボとキンタマは、邪魔だからと、高圧浣腸用の黒いゴムチューブで、まとめて根本から縛り上げられて、天井のレールに吊り上げられました。
看護婦さんの両手が私のお腹に、丁度人工呼吸をするように圧し当てられて、下つまり股間の方へ徐々に押し下げられます。
先生が掘る時、便が動くといけないので、押して固定するためです。
先生の右手にある、小さなシャープペンシルのような大きさの、銀色に輝く器具は、何と、模型工作に使うピンバイスです。
ピンバイスというのは精密工具で、木などに、大工さんの使う木工用のキリよりも口径の小さい穴を、正確に開けるための道具です。
棒状の細い本体(柄)の先に、三爪式のチャックがあり、頚部のネジを廻してその三つの爪を開閉させ、そこへ、0.何ミリとか1.何ミリとかの、口径の小さいドリルの刃を食わせて、装着し、その本体を手指でひねりながらねらった所に正確にかつ確実に穴をあけるという便利な器具なのです。
ネズミの糞のように硬くてカチン力チンになった便を掘り崩すには、膣鏡で最大限に肛門を開口させてあるとはいえ、中は軟らかくて傷つきやすい直腸粘膜です。
割るといっても、夏に氷をかち割る時のように勢いよくやれば、刃物の先が滑って粘膜を突き破ってしまいます。
木工用のキリでも、滑れば大変ですから、どうする気かと思っていましたら、ピンバイスを使うとは何とまあ頭のいいことです。
これなら時間はかかりますが、指先で根気よく「の」の字廻しにひねっていけば、安全確実に穴が掘れます。
先生は私のお尻の穴に、ほとんど額を着けんばかりにして、中を覗いての大奮闘です。
見下ろしていて、これは実に変な気分です。
美しい理知的な女性に内部を百パーセント覗かれているのですから(女性が初めて産婦人科の診療を受ける時の気持ちも、こんなのではないかと思うと凄い感激です)。
横田猛雄 1990年3月号よりS&Mスナイパーにて実践派のための肛門エッセイを連載。1993年ミリオン出版より『お尻の学校[少年篇]』発行。またアナル責めのAV作品にも多数出演しており、A感覚実践派の伝道師として他の追随を許さぬ存在。2007年5月号まで同誌上で『大肛門大学』を連載していたが、高齢と健康上の理由により連載終了。そしてWebスナイパーにて、膨大かつ偉大なるアーカイブの復刻連載開始です! |
08.01.14更新 |
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