第21講 遂に開通なる【2】 文=横田猛雄 イラスト=伊集院貴子 |
第二課 ラジオペンチでこじ開けて
看護婦さんの手は、脇からまるで妊婦のお腹から胎児を押し出すように、私の腹を平手で圧迫し押し下げ、便の塊を捕らえて保持し、先生はどういうと、ほとんど私の股間に額を付けんばかりにし、左手を私の恥骨に掛けて、さっき開けた穴に右手に持ったラジオペンチの嘴先を刺し込んだようで、ウンコが押し上げられ、上へ行こうとし、それが看護婦さんの手に拒まれて、グサッとウンコに刺さり込んだようです。
充分に深く先端部が入ったのを確かめると、先生は左手で恥骨のあたりからはなし、両手でラジオペンチのそれぞれの柄を片方ずつ握り、挟むのとは反対に、グイグイと開きにかかったのです。
硬くなった粘土の塊を割るような感じで、グリッ、ミシミシ、バサバサッというような音がして、直腸の中に納まっていた私の塊が動くのが、粘膜に知覚されます。
皆さんは夢の中で、断崖絶壁の際に立っていて、突然その自分の足元か、ザラザラと崩れてゆくような場面を体験したことが、過去にきっと一度や二度はおありでしょう。
私のお尻の穴の奥で、今そんな感触がしているのです。
ミシッとウンコに亀裂が入り、わずかに直腸内が横に拡げられ、つまりウンコの先端の一部が二つに割れたのがその感じです。
あの硬い硬いウンコが、ラジオペンチというより硬い鋼の器具によって、強制的に押し拡げられ、強引に割られ、崩されて敗北してゆく……。
敗れゆくウンコも自分の分身だと思えば唯もういとおしく、軟らかく敏感な直腸壁に伝わるその微妙な敗北感にともなう快美感は、これは食べ物と同じで、食べていない人にはとても言葉では説明しきれるものではない、体験者にだけしか分からない本当に天にも昇るようないい心地なのです。
眼を移すと、先生の横に据えられた脇卓の上の銀色をした盆の上には、嘴の太くて長いのや、細いのや、先がL型に曲がったのや、様々なラジオペンチのほか、先の平たくてうんと長いヤットコだとか、柄の部分が洋鋏のようになって、先が長くて、その先端部が丸い輪になっている産科器具の鉗子だとか、そんなのが沢山並んでいるのです。
ラジオペンチは秋葉原(東京)の電器店街に行けば、色々変わったのや珍しいのや何でも揃うそうです。
それらの中から使い勝手の良さそうなのを買い込んできたり、更にそれを使いやすいようにヤスリで改造したり、焼きをなましたりするのです。
特殊なものになると、道具までこのように改造したり半自作したり、医師という職業もある面では非常に職人的な部分が色濃くあるようです。
バラバラと小石のこぼれるような音がして、砕かれたウンコのカケラが、私の直腸から外へ掻き出されてゆきます。
第一の城門はこうして打ち破られたのです。
小片に砕かれたのは掻き出され、さて新しく現われた角やひび割れを拠り所として、今度はヤットコの出番です。
挟めそうな手掛かりという手掛かりは、全て挟んで引っ張られ引き摺り出されるのです。
その間、直腸壁には又、スポイトで新たにサラダオイルがピュンピュンと放射されます。
これは粘膜に器具の金属の硬いのが当たったり、ウンコが押されて移動して摩擦が生じたりして傷が出来るといけないので、そこを滑らかにするために吹き付けるのだそうです。
横田猛雄 1990年3月号よりS&Mスナイパーにて実践派のための肛門エッセイを連載。1993年ミリオン出版より『お尻の学校[少年篇]』発行。またアナル責めのAV作品にも多数出演しており、A感覚実践派の伝道師として他の追随を許さぬ存在。2007年5月号まで同誌上で『大肛門大学』を連載していたが、高齢と健康上の理由により連載終了。そしてWebスナイパーにて、膨大かつ偉大なるアーカイブの復刻連載開始です! |
08.01.17更新 |
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