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ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者! 青山正明の世界 第44回ホラー/カルト映画における青山正明(7)

毎週日曜日更新!
The text for reappraising a certain editor.
ある編集者の遺した仕事とその光跡

天災編集者!
青山正明の世界 第44回


ホラー/カルト映画における青山正明(7)

取材・構成・文=ばるぼら

21世紀を迎えてはや幾年、はたして僕たちは旧世紀よりも未来への準備が整っているだろうか。乱脈と積み上げられる情報の波を乗り切るために、かつてないほどの敬愛をもって著者が書き下ろす21世紀の青山正明アーカイヴス!
『METAL KIDS!』
1986年3月20日発行/白夜書房


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ホラー/カルト映画における青山正明(7)

青山がスプラッターの前衛と呼ばれたデビッド・クローネンバーグに特別な思い入れを示していることは以前も少し触れたが、彼について大きく取り上げている媒体はいくつかある。1986年の『スプラッタムービー大全集』(東京三世社/1986年6月15日発行)がまずそれだ。このムックには長めの文章をいくつか寄稿しており、「イタリアン・ホラーの夜明け」でルチオ・フルチを、「血まみれ料理(ムービー)に命を賭ける男たち 2人のSFXアーティスト」ではトム・サビーニとロブ・ボッティンを紹介し、その他「スプラッタ料理(ムービー)徹底ガイド」として映像リストの採点表などを担当している。

そして中でも力の入ったと思われるのが「スプラッタ・ムービーの三巨人」という、H・G・ルイス、ロメロ、そしてクローネンバーグを取り上げた記事で、特にクローネンバーグには略年表をつけて、きめ細かな情報を載せている。これについては「ルイスとロメロに関しては、「血しぶきホラーの世界」(芳賀書店)に詳述されているので、ファンの方は、そちらを参照されたい。また、クローネンバーグについては、我が国で未だ詳細なる経歴、フィルモグラフィーが発表されていないので('85年12月9日現在)、筆者が84年の暮に制作した略年譜を掲載しておいた」という説明があり、日本でクローネンバーグを紹介する必要性を感じ取っていたようである。

『スプラッタムービー大全集』
1986年6月15日発行/東京三世社
ただ、原稿を書いた時期は『スプラッタムービー大全集』の方が早かったのだろうが、出版順ではそれより先に『METAL KIDS!』(白夜書房/1986年3月20日発行)が出ている。これは“SF&ホラーコミックマガジン”と副題についたコミック誌で、表紙イラストを士郎正宗、イラストポスターを藤原カムイが担当した、どこか海外コミックの雰囲気を持った雑誌なのだが、実態はくり鋭斗、仁木ひろし、MEIMUなどが描いたホラーコミックが中心の不思議な雑誌で、二冊しか出なかったはずである。前回取り上げた『VZONE』と同時期に創刊しているので、出版社としてもそれなりに力を入れていたのだろうが……。

話を戻す。青山はこの『METAL KIDS!』で「CULT MOVIE」という連載を持っており、前衛・実験・アングラ・カルトな映画の歴史を辿っている。さらに創刊号では更にクローネンバーグの10ページ大特集が掲載され、略年譜や作品解説が既に載っているのだ。この特集の構成自体は青山ではなく奥沢聖治氏が担当しているものの、青山の幻の処女作『HORROR FILMS』に掲載される予定だったクローネンバーグ・インタビューの抜粋が転載されている(クローネンバーグは85年春の第一回東京国際映画祭/TAKARAファンタスティック映画祭にゲスト出演のため来日している)。

『ベストビデオ』
1987年3月15日発行/三和出版
次に『ベストビデオ』(三和出版/1987年3月15日発行)での紹介記事「内臓感覚D・クローネンバーグ」がある。ほとんどAV紹介ばかりのビデオ雑誌で青山は『THE FLY』(86年作品)の解説を行なっている。ここでクローネンバーグについて「不遇のアウトサイダーを描き続ける、孤高の映像作家(アウトサイダー)クローネンバーグ」と評しており、この視点が次の『銀星倶楽部』での論文につながっていく。なお青山が元ネタにしていたと見られる海外のクローネンバーグ研究書『The Shape of Rage』からのインタビュー抜粋も少々掲載。

『銀星倶楽部16 クローネンバーグ
1992年8月31日発行/ペヨトル工房
やや時間が空くが、決定版となったのが『銀星倶楽部16 クローネンバーグ』(ペヨトル工房/1992年8月31日発行)だろう。丸々一冊クローネンバーグを取り上げたこの雑誌で、青山は論文「孤独なアウトサイダー」と「クローネンバーグ略年譜」を担当している。この論文はまずクローネンバーグ作品の主題の変化、すなわち「肉体変容(メタモルフォーゼ)」や「テクノロジー」から「孤独/アウトサイダー」という変容に着目し、しかしその後クローネンバーグが「リアリティ」という表現にこだわるあまりに出口を見失っていると断じる。これは“かつて熱烈なファンだった”人間からの目線であると思われる少し距離を置いた書き方で、1984年に『Hey!Buddy』誌で初めて取り上げた時から数年経った青山のクローネンバーグへの視点の移り方が判る興味深い内容だ。

青山がクローネンバーグに惹かれていたのはなぜだろうか。自分を重ね合わせていたから、というのは単純すぎるが、青山が最高傑作と評した『ビデオドローム』(1982年作品)についての解説を現在読むと、共鳴する同質の美学を読み取らずにはいられない。

「『ビデオドローム』は今のところのDCの最高傑作であり、「やりたいことが最もできた作品」(DC)なのである。何故か。それは主人公が、自殺という極めつけの悲劇に見舞われるからだ。/マックスは死んじゃいない。彼はビデオの世界で蘇ったのだ。DCの思惑通り、そう思った人もけっこういるに違いない。しかし、「ロング・リヴ・ザ・ニュー・フレッシュ」と唱えたところで、『ビデオドローム』の世界が幻覚だったら、自殺は再生などではなく、死でしかない」。

(続く)


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man.gif ばるぼら ネッ トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ ニコミを制作中。

「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/

02.22更新 | WEBスナイパー > 天災編集者! 青山正明の世界 |







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