『Crash』1985年11月号/白夜書房
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青山正明と「Flesh Paper」/『Crash』編(1)
映画の話をそんなに続けているつもりはなかったのだが、何人かに次の話は何?と聞かれ、流石に連続させすぎたのかと思い、この辺りでいったんエロ本の話題に戻ることにする。(映画の話は少し後に再開する)
1985年の『Hey!Buddy』の廃刊とともに青山正明の連載「Flesh Paper(肉新聞)」も一緒に終了してしまい、その後は一時的に『にんふらばあ』誌に居候する。しかし載ったのは2回だけで『にんふらばあ』も廃刊。では次にどこに行ったのかといえば、『Billy』の後継誌とされる『Crash』である。ここで青山は1995年3月号まで連載を継続することになったのだが、『Crash』との関わりについてこれまであまり触れたことはなかった。創刊号については永山薫インタビューで触れているものの、それ以降の、ライフワークとなっていく「Flesh Paper」をそろそろ正面から取り上げてみよう。
『Crash』1985年11月号(2号)〜1986年2月号(5号)
実は青山は創刊号には登場したが、その後数カ月は出てこない。時期で言うと『サバト』『フィリアック』を編集している時期で、そちらに本腰を入れていたのだろう。しかしこの雑誌自体は『Billy』と比べればパワーは落ちるものの、連載などは興味深いものが多く、「サブカルチャーにおけるエロ本」史では重要である。名前をあげると、高杉弾「エロティカル・ワンダーランド」、永山薫による危険な本紹介「BLACK BOOK 恐怖の黒本」、平岡正明とモデルなどの対談企画「人性対談」、秋田昌美「エロチック・ザ・ワールド」、下川耿史「殺人評論ファイル」、ラッシャーみよし「ピンサロ天国に学べ!」、金坂健二「セクシャル・レヴォルーションUSA」(1986年5月号〜)など。他にも単発で蛭児神健によるビデオ紹介「ロリコンパラダイス」や、短期集中で平加門「ビニ本事件簿」といった企画がある。
クレジット……編集長:中沢慎一/編集:吉武政宏、入江重美、秋田谷公司/表紙撮影・藤弘志/デザイン・ロゴ:丸山浩伸/本文レイアウト:逢坂恭祐、明日修一、青柳事務所、清野裕章
『Crash』1986年3月号
青山が再登場するのはこの6号からである。まず「クラッシュ変態講座」における「オシッコ快楽主義宣言!」に見開き・写真つきで登場。85年末に『フィリアック』2号のために撮影したスカトロモデルとのショットで、ほとんどは撮影時のグチである。「もったいない!女の肛門から噴き出す牛乳が飲めるなんて、一緒に一度有るか無いかのチャンスではないか!」と牛乳浣腸でコーンフレークを食べようとするものの、胃腸のよくないモデルのせいで「憧れの牛乳浣腸も糞混じり、クッサイクッサイで終ってしまったのであった。/それにしても牛乳浣腸はクサイ!ウンコ・オンリーよりクサイのだからたまったものではない」とあえなく失敗におわる話など、笑えるが笑えない。
他にも後半の「HOW TO オナニー」コーナーを担当し、「青山正明のもっと気持ち良く射精するための「奇跡の変態」へんたいゼミナール」というオナニー論ページがある。題して「奇跡の千摺り」。相変わらずの与太話かと思いきや、オナニー用ドラッグとしてブチル・ニトライトの体験談まで含まれている、青山らしい内容である。はみ出しコラムでは、エレベーターで何回チンポコを出し入れできるかを実験しようという話題で「私など、住友ビルの51階に迄上る間に、チンポ出して千摺り掻いて射精してティッシュで拭いて一服してしまうのだから、我ながら単なる早漏である」と自信を顕わにしている。
『Crash』1986年4月号
「奇跡の千摺り」第2回。結局オルガスムスを高める薬物はマリファナしかない、と断言しつつ、代案としてフロンガスを提案している。また他の手段として「乳首をつねりながら千摺りする人は結構多いと思うので、ここでは割愛。アナルに話を絞らせていただこう(何を気取ってんだ、俺は)」と肛門にボールペンなど棒状のものを入れることを提案。飽くなき探究心をもって挑んでいることが分かる熱のこもったテキストである。
『Crash』1986年6月号
(※5月号が見当たらないので今回割愛)そして6月号からようやく「Flesh Paper」が復活した。『Crash』がまだ9号なのに既に連載が39回目であることの説明などをしたあと、海外本『I HATE YOU!』のレビュー、TV電話、洋ポルノ、スカトールの話題が続く。『I HATE YOU!』は1980年にリヴェンジ(復讐)本の火付け役となった『GET EVEN』の版元パラディン・プレスから出た復讐本で、以降、こうした海外本の翻訳紹介が一つのメインとなっていく。スカトールはジャスミン・ティーの芳香成分だが、同時にウンコの悪臭成分であり、寝起きに覚醒するために、毎朝コーヒーやジャスミン・ティーのかわりにウンコの香りを胸一杯に吸い込むことを提案。……提案されても困るけども。
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【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5 】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
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青山正明と「Flesh Paper」/『Crash』編(1)
映画の話をそんなに続けているつもりはなかったのだが、何人かに次の話は何?と聞かれ、流石に連続させすぎたのかと思い、この辺りでいったんエロ本の話題に戻ることにする。(映画の話は少し後に再開する)
1985年の『Hey!Buddy』の廃刊とともに青山正明の連載「Flesh Paper(肉新聞)」も一緒に終了してしまい、その後は一時的に『にんふらばあ』誌に居候する。しかし載ったのは2回だけで『にんふらばあ』も廃刊。では次にどこに行ったのかといえば、『Billy』の後継誌とされる『Crash』である。ここで青山は1995年3月号まで連載を継続することになったのだが、『Crash』との関わりについてこれまであまり触れたことはなかった。創刊号については永山薫インタビューで触れているものの、それ以降の、ライフワークとなっていく「Flesh Paper」をそろそろ正面から取り上げてみよう。
左上:『Crash』1985年12月号 右上:『Crash』1986年1月号 左:『Crash』1986年2月号/以上、発行=白夜書房 |
実は青山は創刊号には登場したが、その後数カ月は出てこない。時期で言うと『サバト』『フィリアック』を編集している時期で、そちらに本腰を入れていたのだろう。しかしこの雑誌自体は『Billy』と比べればパワーは落ちるものの、連載などは興味深いものが多く、「サブカルチャーにおけるエロ本」史では重要である。名前をあげると、高杉弾「エロティカル・ワンダーランド」、永山薫による危険な本紹介「BLACK BOOK 恐怖の黒本」、平岡正明とモデルなどの対談企画「人性対談」、秋田昌美「エロチック・ザ・ワールド」、下川耿史「殺人評論ファイル」、ラッシャーみよし「ピンサロ天国に学べ!」、金坂健二「セクシャル・レヴォルーションUSA」(1986年5月号〜)など。他にも単発で蛭児神健によるビデオ紹介「ロリコンパラダイス」や、短期集中で平加門「ビニ本事件簿」といった企画がある。
クレジット……編集長:中沢慎一/編集:吉武政宏、入江重美、秋田谷公司/表紙撮影・藤弘志/デザイン・ロゴ:丸山浩伸/本文レイアウト:逢坂恭祐、明日修一、青柳事務所、清野裕章
『Crash』1986年3月号/白夜書房 |
青山が再登場するのはこの6号からである。まず「クラッシュ変態講座」における「オシッコ快楽主義宣言!」に見開き・写真つきで登場。85年末に『フィリアック』2号のために撮影したスカトロモデルとのショットで、ほとんどは撮影時のグチである。「もったいない!女の肛門から噴き出す牛乳が飲めるなんて、一緒に一度有るか無いかのチャンスではないか!」と牛乳浣腸でコーンフレークを食べようとするものの、胃腸のよくないモデルのせいで「憧れの牛乳浣腸も糞混じり、クッサイクッサイで終ってしまったのであった。/それにしても牛乳浣腸はクサイ!ウンコ・オンリーよりクサイのだからたまったものではない」とあえなく失敗におわる話など、笑えるが笑えない。
他にも後半の「HOW TO オナニー」コーナーを担当し、「青山正明のもっと気持ち良く射精するための「奇跡の変態」へんたいゼミナール」というオナニー論ページがある。題して「奇跡の千摺り」。相変わらずの与太話かと思いきや、オナニー用ドラッグとしてブチル・ニトライトの体験談まで含まれている、青山らしい内容である。はみ出しコラムでは、エレベーターで何回チンポコを出し入れできるかを実験しようという話題で「私など、住友ビルの51階に迄上る間に、チンポ出して千摺り掻いて射精してティッシュで拭いて一服してしまうのだから、我ながら単なる早漏である」と自信を顕わにしている。
『Crash』1986年4月号/白夜書房 |
「奇跡の千摺り」第2回。結局オルガスムスを高める薬物はマリファナしかない、と断言しつつ、代案としてフロンガスを提案している。また他の手段として「乳首をつねりながら千摺りする人は結構多いと思うので、ここでは割愛。アナルに話を絞らせていただこう(何を気取ってんだ、俺は)」と肛門にボールペンなど棒状のものを入れることを提案。飽くなき探究心をもって挑んでいることが分かる熱のこもったテキストである。
『Crash』1986年6月号/白夜書房 |
(※5月号が見当たらないので今回割愛)そして6月号からようやく「Flesh Paper」が復活した。『Crash』がまだ9号なのに既に連載が39回目であることの説明などをしたあと、海外本『I HATE YOU!』のレビュー、TV電話、洋ポルノ、スカトールの話題が続く。『I HATE YOU!』は1980年にリヴェンジ(復讐)本の火付け役となった『GET EVEN』の版元パラディン・プレスから出た復讐本で、以降、こうした海外本の翻訳紹介が一つのメインとなっていく。スカトールはジャスミン・ティーの芳香成分だが、同時にウンコの悪臭成分であり、寝起きに覚醒するために、毎朝コーヒーやジャスミン・ティーのかわりにウンコの香りを胸一杯に吸い込むことを提案。……提案されても困るけども。
(続く)
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
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「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/ |
09.03.01更新 |
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