『Crash』1989年9月号/発行=白夜書房
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青山正明と「Flesh Paper」/『Crash』編(5)
なぜか1989年の「Flesh Paper」はメディア批判が多い印象を受ける。またこの年からマジック・マッシュルームネタが増えてくるが、ドラッグ関係は別の時にまとめさせてもらうため省略している。
『Crash』1989年1月号
ミスター・マリックの超能力タネ明かしという、なんとも懐かしいネタだが、『BACHELOR』誌でも別のトリックのタネ明かし記事を書いており、マリックが好きだったのかもしれない。他に「ビデオ業界、お先真っ暗!?」と題した記事で、レンタルショップやビデオメーカーの方針の問題点を指摘しており、映画ライターっぷりを発揮している。
『Crash』1989年2月号
「私が昨年見た変なおじさん3人」という脈絡のない面白おじさん紹介記事や、本連載37回でも触れたショック・ドキュメンタリー・シリーズの紹介など。「正直、心からオススメできる作品は、第1段発売の「超常現象の世界」(75西独)だけであります。これは私が高校1年生の時に劇場で観て、大変衝撃を受けたキワモノ映画でして、かねてよりビデオ・リリースを切望していたのでした」。
『Crash』1989年3月号
「最大限の嫌悪を込めて“オタク”再検討”」の悪ノリが良い。「近所にとっても気味悪い奴がいるのだが、あれは一体、何なのだろう?」。人間誰しも、ふと、そんなことを思う時がある。そして、大方の人間は、奴らをどう扱うべきか判らないでいる。しかし、である。もし、奴らが“オタク”であることが判明すれば、対処に窮することはなくなる。そう、オタクは、差別し、虐待し、惨殺すればいいのだ」。他にもオタクがやるスポーツは武術とボーリングだけとか、女オタクと男オタクが結婚して赤ん坊オタクを生む由々しき事態が起きているとか、何かいやな目にあったのか分からない展開に。ちなみに宮崎勤事件前である。他には中近東の歌姫、チャバ・ファデル、サルマ・アガ、オフラ・ハザを紹介。
『Crash』1989年4月号
『平凡パンチ』が休刊しリニューアル創刊した『NEWパンチザウルス』をボコボコに批判。「つまるところ、「NEWパンチザウルス」は、一昔前のミニコミなのだ。ライターにしても漫画家にしても、ピークを過ぎた奴ばかり。あるいは、そいつらに影響された無能の新人。確かにひとりひとりは、それなりに面白そうな奴だけど、彼らの原稿や漫画って、あくまでサシミのツマ的な面白さでしょ。決してメイン・ディッシュにはなり得ない。失敗の所在は、全て編集ですな。旧パンチの常連を一掃できなかった、能無し編集者が悪い」。その他は惰眠コラム、CD『ETHNO BEATS』(BCM 1988)の紹介記事。
『Crash』1989年5月号
今度は『オレンジページ』の批判で、編集部の原稿チェックが度を越して異常であると指摘している。「50万部を越えてしまった一般誌は、どれも“知能の低い読者”を念頭に置いて誌面作りをするという」「やはりマス・メディアには関わりたくないね。エロ本は安心だ」。その他は死んだ赤ん坊の有効活用法など。
『Crash』1989年6月号
なぜか青山がイカ天にハマっており、「第8回目まで観た印象では、KUSU KUSU、花園バンド、ブラボー、ザ・ニューズ、フライング・キッズの5バンドが優れていると思った」そう。特にKUSU KUSUを気に入ったようである。その他、室温核融合、新型ビタミン剤「エスファイトゴールド」の話題。
『Crash』1989年7月号
イタリアン・ホラー『DIAL:HELP』を予想外の面白さと紹介、『週刊文春』の女子高生コンクリート詰め惨殺事件の実名報道について徹底批判、モロヘイヤ(もちろん野菜の)紹介という、相変わらず脈絡のない並び。実名報道については『危ない1号』4巻に当該記事が再録された時も変わらず批判していた。
『Crash』1989年10月号
当然触れないわけはない1989年を象徴するニュース、「とても他人事とは思えない幼女惨殺殺人、宮崎勤の素顔」が白眉。『ギニー・ピッグ 悪魔の女医』を参考に死体をバラバラにしたらしいとの話、さらにロリコンということで、ホラーとロリコンが同居する青山にとっては他人事ではない事件だったに違いない。おそらく宮崎を擁護することは自分自身を擁護することに他ならなかっただろうし、当時そうした言説は他の言論人からも多かったと記憶する。しかし最後の提言が青山らしいというか、「まず第一に、少女売春を合法化せよ。次に、国民1人に1台コンピュータを配給し、通信の検問を一切止めよ。そして、ドラッグの全面解禁だ!」という、過程を省いてみるとあまり普段と変わらない結論に達している。
『Crash』1989年11月号
ドゥシャン・マカヴェイエフ監督『モンテネグロ』紹介。この当時のマカヴェイエフはビデオがようやく数本リリースされただけの〈未だ日本上陸を果たしていない最後のアングラ監督〉という位置づけで、本格的に紹介されたのは1991年の全作品上映イベント「マカヴェイエフ・フィルム・コレクション」であるため、わりと解説にも力が入っているように見える。なおマカヴェイエフについては『宝島』でも原稿を書いている。
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新宿アンダーグラウンドの残影 〜モダンアートのある60年代〜
【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5 】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
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青山正明と「Flesh Paper」/『Crash』編(5)
なぜか1989年の「Flesh Paper」はメディア批判が多い印象を受ける。またこの年からマジック・マッシュルームネタが増えてくるが、ドラッグ関係は別の時にまとめさせてもらうため省略している。
『Crash』1989年1月号/発行=白夜書房 |
ミスター・マリックの超能力タネ明かしという、なんとも懐かしいネタだが、『BACHELOR』誌でも別のトリックのタネ明かし記事を書いており、マリックが好きだったのかもしれない。他に「ビデオ業界、お先真っ暗!?」と題した記事で、レンタルショップやビデオメーカーの方針の問題点を指摘しており、映画ライターっぷりを発揮している。
『Crash』1989年2月号/白夜書房 |
「私が昨年見た変なおじさん3人」という脈絡のない面白おじさん紹介記事や、本連載37回でも触れたショック・ドキュメンタリー・シリーズの紹介など。「正直、心からオススメできる作品は、第1段発売の「超常現象の世界」(75西独)だけであります。これは私が高校1年生の時に劇場で観て、大変衝撃を受けたキワモノ映画でして、かねてよりビデオ・リリースを切望していたのでした」。
『Crash』1989年3月号/白夜書房 |
「最大限の嫌悪を込めて“オタク”再検討”」の悪ノリが良い。「近所にとっても気味悪い奴がいるのだが、あれは一体、何なのだろう?」。人間誰しも、ふと、そんなことを思う時がある。そして、大方の人間は、奴らをどう扱うべきか判らないでいる。しかし、である。もし、奴らが“オタク”であることが判明すれば、対処に窮することはなくなる。そう、オタクは、差別し、虐待し、惨殺すればいいのだ」。他にもオタクがやるスポーツは武術とボーリングだけとか、女オタクと男オタクが結婚して赤ん坊オタクを生む由々しき事態が起きているとか、何かいやな目にあったのか分からない展開に。ちなみに宮崎勤事件前である。他には中近東の歌姫、チャバ・ファデル、サルマ・アガ、オフラ・ハザを紹介。
『Crash』1989年4月号/白夜書房 |
『平凡パンチ』が休刊しリニューアル創刊した『NEWパンチザウルス』をボコボコに批判。「つまるところ、「NEWパンチザウルス」は、一昔前のミニコミなのだ。ライターにしても漫画家にしても、ピークを過ぎた奴ばかり。あるいは、そいつらに影響された無能の新人。確かにひとりひとりは、それなりに面白そうな奴だけど、彼らの原稿や漫画って、あくまでサシミのツマ的な面白さでしょ。決してメイン・ディッシュにはなり得ない。失敗の所在は、全て編集ですな。旧パンチの常連を一掃できなかった、能無し編集者が悪い」。その他は惰眠コラム、CD『ETHNO BEATS』(BCM 1988)の紹介記事。
『Crash』1989年5月号/白夜書房 |
今度は『オレンジページ』の批判で、編集部の原稿チェックが度を越して異常であると指摘している。「50万部を越えてしまった一般誌は、どれも“知能の低い読者”を念頭に置いて誌面作りをするという」「やはりマス・メディアには関わりたくないね。エロ本は安心だ」。その他は死んだ赤ん坊の有効活用法など。
『Crash』1989年6月号/白夜書房 |
なぜか青山がイカ天にハマっており、「第8回目まで観た印象では、KUSU KUSU、花園バンド、ブラボー、ザ・ニューズ、フライング・キッズの5バンドが優れていると思った」そう。特にKUSU KUSUを気に入ったようである。その他、室温核融合、新型ビタミン剤「エスファイトゴールド」の話題。
『Crash』1989年7月号/白夜書房 |
イタリアン・ホラー『DIAL:HELP』を予想外の面白さと紹介、『週刊文春』の女子高生コンクリート詰め惨殺事件の実名報道について徹底批判、モロヘイヤ(もちろん野菜の)紹介という、相変わらず脈絡のない並び。実名報道については『危ない1号』4巻に当該記事が再録された時も変わらず批判していた。
『Crash』1989年10月号/白夜書房 |
当然触れないわけはない1989年を象徴するニュース、「とても他人事とは思えない幼女惨殺殺人、宮崎勤の素顔」が白眉。『ギニー・ピッグ 悪魔の女医』を参考に死体をバラバラにしたらしいとの話、さらにロリコンということで、ホラーとロリコンが同居する青山にとっては他人事ではない事件だったに違いない。おそらく宮崎を擁護することは自分自身を擁護することに他ならなかっただろうし、当時そうした言説は他の言論人からも多かったと記憶する。しかし最後の提言が青山らしいというか、「まず第一に、少女売春を合法化せよ。次に、国民1人に1台コンピュータを配給し、通信の検問を一切止めよ。そして、ドラッグの全面解禁だ!」という、過程を省いてみるとあまり普段と変わらない結論に達している。
『Crash』1989年11月号/白夜書房 |
ドゥシャン・マカヴェイエフ監督『モンテネグロ』紹介。この当時のマカヴェイエフはビデオがようやく数本リリースされただけの〈未だ日本上陸を果たしていない最後のアングラ監督〉という位置づけで、本格的に紹介されたのは1991年の全作品上映イベント「マカヴェイエフ・フィルム・コレクション」であるため、わりと解説にも力が入っているように見える。なおマカヴェイエフについては『宝島』でも原稿を書いている。
(続く)
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
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09.03.29更新 |
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