毎週日曜日更新!
The text for reappraising a certain editor.
『BACHELOR』における青山正明 (14)
21世紀を迎えてはや幾年、はたして僕たちは旧世紀よりも未来への準備が整っているだろうか。乱脈と積み上げられる情報の波を乗り切るために、かつてないほどの敬愛をもって著者が書き下ろす21世紀の青山正明アーカイヴス!
引き続き『BACHELOR』の書評連載を取り上げるが、都合により1993年を飛ばす。
『BACHELOR』1994年1月号
ラナ・アナガリカ・ゴヴィンダ『チベット密教の真理』/工作舎
R・アサジョーリ『意志のはたらき』/誠信書房
ケン・ウィルバー『無境界』/平河出版社
森秀樹『墨攻』1〜3巻/小学館★★★★ 三冊分の★が付けられていないのは、タイ旅行に行っていて新刊を読む時間がなく、既刊を紹介しているため。どれもトランスパーソナル心理学関係。『チベット密教の真理』は、70年代米国での東洋ブームのきっかけである『ビー・ヒア・ナウ』(ラム・ダス著)のルーツとなった一冊。『意志のはたらき』はサイコシンセシス(精神統合)の独習テキスト。「意志を自我の中心と見なすことにより、生をコントロールし、なおかつ個を超えた意識との合一を図る。それが、著者の提唱するサイコシンセシスの要旨である」。『無境界』は「あらゆる精神病理は、自己と非自己、善と悪、快と不快といった対立構造の上に成り立つ」として、意識の上にある境界線を消し去るためのセラピー入門書。そして『墨攻』は紀元前3〜4世紀、中国で戦争の虚しさを説き続けた墨家の生涯を描いた歴史マンガ。
『BACHELOR』1994年2月号
『BACHELOR』1994年3月号
二カ月連続で休載。理由は1993年11月19日、突然左目がおかしくなったため。横浜労災病院に通院し、わかったことは「最近学会で取り上げられ始めた新種の奇病だそうで、その先生も現物(僕のこと)を見るのは初めてだとのこと。ユニークなのは実生活だけでたくさん、病気はありふれたヤツがいいな、うん」「励ましの現金書留などをくれると嬉しいゾ」。
『BACHELOR』1994年4月号
テレンス・マッケナ『神々の糧』/第三書館★★★★★
西山孝純『カレン民族解放軍のなかで』/星雲社★★★★
山野一『混沌大陸パンゲア』/青林堂★★★★★
八田修『就職の王道'95』/宝島社★★★★ 現代がなぜ混迷しているかというと、人類が幻覚性植物から遠ざかり、異界との接触を失ったから、と主張の文化人類学的ドラッグ賛美本『神々の糧』。「とにかく緻密にして大胆、濃密にして鮮烈。ドラッグに関心ある人全てに読んでほしい、超力作である」。『カレン民族〜』はミャンマーで軍事政権と対抗している少数民族カレンと生死を共にした日本人の手記。青山が「ただ1点、活動資金源=ヘロイン関連の記述がないのが残念だった」とさらりと書いているが、実はかなりするどい指摘だと思う。敬愛する漫画家・山野一の『混沌大陸パンゲア』(青山が登場する!)は「前3作の残酷至上に、性とドラッグをどっさりぶち込んだ新基軸に感心」とのこと。企業人事の本音暴露本こと『就職の王道』シリーズは、東京公司の相棒である石原が編集担当している。「実際、ホント重宝な本ですよ、コレ」。
『BACHELOR』1994年5月号
山口實『生命のメタフィジックス』/TBSブリタニカ★★★★
岩崎正人『嗜癖の時代』/集英社★★★★
アンドリュー・F・ゴールドスミス『カジノ教本』/データハウス★★★
『石の神秘力』/新人物往来社★★★ 哲学・心理学・生物学の三つから生命の意味を解き明かそうとする『生命のメタフィジックス』は「理詰めで悟る“諸行無常”の境地、ってとこかな」と少し煮え切らない姿勢の高評価。おそらく理詰めで悟れるものではないという考えが青山にあるのではないかと思われる。「現代人を蝕む心の病い」とサブタイトルにある『嗜癖の時代』は、嗜癖(アディクション)をキーワードに、現代人の新しい病理を臨床データに基づいて解決策を提示していく一冊。「要は、存在そのものの価値に気づけ、ってことネ」。『カジノ教本』は本邦初のカジノ入門本。「ギャンブルにハマリたい人は必読」と書いているが、一体そんな人いたのだろうか。カラー写真で豊富に石の写真を掲載しているオカルト・ムック『石の神秘力』(現代歴史読本特別増刊)。「僕はストーン・パワーもストーン・ヒーリングも認めない。たかが石コロに、人サマの運命や健康を左右する力などあるワケはない。とは言うものの、石が何らかの触媒になりえることは間違いないと思う」という柔軟な視点の青山は、素直に綺麗な石を楽しめた様子。
『BACHELOR』1994年6月号
吉福伸逸+岡野守也『テーマは意識の変容』/春秋社★★★★
『日本 奇書 偽書 異端書 大鑑』/新人物往来社★★★
青山圭秀『アガスティアの葉』/三五館★★★
『別冊宝島196 メディアで欲情する本』/宝島社★★★★ 『テーマは意識の変容』はニューエイジの伝道者である吉福伸逸と、禅の経験を持つ春秋社編集者の対談本。主にニューエイジとトランスパーソナル心理学を軸とした対話で、「私生活をも含めた生身の言い分に、感心すること然り」と太鼓判。珍本・奇本を600余冊を収録した『日本 奇書〜』についてはまったく内容についてレビューしておらず省略。過去・現在・未来、全人類の生涯が記録されているという預言書アガスティア・ナディの現物を目にした著者が書く『アガスティアの葉』については「生真面目で繊細なTMお兄さんといった感じですかね。予言によると、来年結婚するんだって」と、わりとどうでもよさげ。目の病気のせいで参加できなかったという別冊宝島『メディアで欲情する本』は、内容についてのレビューはなく、「「いやァ、立ちテストは辛かったよ!」落合Q太郎(清野栄一)は、そう申しておりました」と知人について書いている。
(続く)
関連記事
8,500人を超えるアーティストが世界中から大集結!インターナショナルアートイベント!
デザイン・フェスタ vol.30開催中! ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』(共に翔泳社)『NYLON 100%』(アスペクト)など。『アイデア』不定期連載中。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/
10.01.17更新 |
WEBスナイパー
>
天災編集者! 青山正明の世界
|
|