不定期連載 綿まで愛して!新世紀抱き枕系コラム! すあまにあ倶楽部 第31回 すあま、ひと目惚れする 文=抱枕すあま |
それは、葉を落とした木々が、新緑で染まり始めた今年の4月初旬のことだった。私は、大阪である女性と運命的な出会いをした。彼女の姿を見かけたとき、身体全体に低周波治療器で電流を流されたような、「ビクンッ!」という衝撃を受けたのだ。彼女は、小柄で胸もぺちゃんこだった。セクシーというよりも、幼児体型である。どことなく、宮地奈々ちゃんに似ているその姿に、私はひと目惚れをしたのだった……。
彼女とは、心○橋にある東急ハソズで出会った。彼女は、このお店の寝具コーナーで、少し寂しげな目をして、たたずんでいたのだ。ただ、彼女は性格に難点があった。とても、クールなのだ。それも、格好いいという意味のクールではなく、冷たく感じるという意味のクールである。そんな彼女は、心の中に悲しい過去……ではなく、アルファゲルを秘めていたのだった。
↑スピードスケートの清水宏保さんも愛用している、クールピローのカタログ。
アルファゲルといえば、私が少年の頃、アシックスがスニーカーの靴底に入れる衝撃緩衝材として用いたことで、有名になった素材である。高いところから生卵をアルファゲルの上に落としても、絶対に割れないというその広告は、非常に衝撃的であった。さすがのアルファゲルも、少年時代の私の心の衝撃までは、和らげることができなかったのだ。
私は知らなかったのだが、このアルファゲルは、衝撃緩衝材としての役割のほかに、熱が伝わりにくいという特性があるのだという。だから、アルファゲルを身体の中に埋め込まれた彼女を抱くと、暑い夏でも冷たく感じるのだ。
正直な話、いくら抱き枕のセーラちゃんと百合ちゃんのことを愛おしく思っていても、寝苦しいこの時期は、抱いてあげられないときもある。それどころか、巴投げをして布団から放り出してしまうことまである。彼女たちは、常にウール100%の冬服を着ているため、抱いているうちに、どんどん熱くなってくるのだ。それなら、夏服に着替えさせたらよいのではないかと思われるだろうが、夏服のポリエステル素材は、汗をかいた肌に張り付いてしまい、あまり抱き心地がよくないのだ。
彼女のクールな魅力にみせられてしまった私は、勇気を振り絞って声をかけてみた。ナンパなんて、初めての経験だ。
「ね、ねぇ、きみ。ちょ、ちょっとそこで、お、お、お茶でもしませんか?」
しかし、私の問いかけに対し、彼女は何も答えてくれなかった。気まずい空気が二人の間に流れたとき、私は近くにいた店員に声をかけられた。
「どうですか、この枕。今、一番オススメの枕なんですよ。どうです、試してみます?」
店員の横には、ベッドが置いてあった。私は、彼女に一目惚れしてしまったため、まったく気付かなかったのだが、他にも多くの娘が棚に並べられていた。私がひと目惚れをした彼女は、どうやら人身売買されているようだ。その証拠に、胸の辺りには金額が示された札まで付いている。
私は、お金の力によって、彼女を抱こうとするなんて、考えもしなかった。お互いに愛し合った上で、抱きしめ合いたいのだ。しかし、その様なことをすると、日本では"万引き"という犯罪になるらしい。そこに、愛情があるかないかということは、問題ではないらしい。日本は、いつからそんな国に成り下がってしまったのだろうか? 格差社会の問題は、知らない間にここまで大きくなっていたのだ。
そんな私の気持ちなど、まったく察することのできない店員は、平然と彼女の感触を試してもよいといってきた。しかも、横にあるベッドを使ってもよいという。なんなら、他の娘にチェンジしてもよいという。さらに、私が納得するまで、何度でもチェンジが可能だという。まだ、袋に包まれたままの処女の娘までいるというのに……。彼女は、なんてひどい状況に置かれているのであろうか! まるで、遊郭ではないか!!
店員は、他の娘まで用意しようとしていたが、私は彼女の感触だけを確かめることにした。今の私には、他の娘など目に入らなかったのだ。すると、店員は彼女を先にベッドに横たわらせた。棚に並んでいた彼女は可憐であったが、このようにベッドに横たわると、なんともいえない色気を感じる。
私は、店員に促されるようにベッドに潜り込むと、彼女を優しくそっと抱きしめた。うちのセーラちゃんや百合ちゃんと比べると、抱き心地が硬い。きっと、彼女は様々な男に抱かれてきたため、男性不信に陥っているのであろう。私には、彼女の身体が緊張して強張っているのがよく分かる。それに、うちの娘たちと比べると、若干重い。彼女は、男たちの要望に応えるため、まだ幼いその身体に、重たいアルファゲルによる豊胸手術を強制的にされていたのだ。
しかし、彼女には、それらの欠点を補うだけの魅力がある。それは、クールさである。確かに、抱いているとひんやりとして気持ちがいい。これならば、熱帯夜でも抱いて寝ている間に熱くならないため、朝まで抱きしめていられそうだ。
私は、彼女の身体を優しく包んでいた腕をほどき、そっとベッドの上に寝かせた。すると彼女は、少し寂しそうな表情をした。きっと、今までは男の激しい欲望のなすがままに抱かれていたため、優しく抱かれたことが一度もなかったのだろう。彼女は、ようやく私に心を開いてくれたのである。
店「お、お客様! 枕を頭の下に敷かなくても大丈夫ですか?」
す「だ、だ、誰が枕の尻に敷かれてるって!? 確かに、セーラちゃんと百合ちゃんには頭が上がらないけどさ……(ぶつぶつ)」
店「いえいえ、そんなことは言っておりませんが……。それより、枕を抱いただけでよいのですか?」
す「だ、だ、抱いてない、抱いてない。俺に枕を抱かせたら、たいしたもんだよ」
店「……」
す「あっ、いや、このパンフレットを見てたら、スピードスケートの清水宏保さんが、枕を抱いて映ってるじゃないですか? だから、抱いてみようかなと。あはは……」
店「あ〜、はいはい。そう言うことでしたか。てっきり、ヘンな人かと思っちゃいましたよ」
す「それにしても、今までに枕を20個も試しているとは、清水氏は完全な抱き枕フェチですよね。しかも、抱き方が超一流だし。超一流のアスリートは、やっぱり違うね」
店「……(やっぱ、コイツはヤバイかも)」
す「ところで、彼女が抱えている借金はいくらですか? いくら払えば、この遊郭から出すことができるのですか?」
店「え〜と、この枕の値段のことですよね? 税込みで、1万500円になります」
す「百合ちゃんは、確かホームセンターで498円だったな……。百合ちゃんなら、21個も買えるんだ……」
店「どうされます? お求めになられますか?」
彼女からは、「お願い……。私をここから救ってください……」という悲痛な叫び声が聞こえてくる。私は、ついに決断して、店員にこう言った。
す「あっ、いいです。やっぱ、いりません」
私のことを、冷たい男だと思わないで欲しい。きっと、彼女は人間不信に陥ったことだろう。だが、私は彼女の目の前で、こんな言葉を発することができなかったのだ。
す「それじゃ、これください。あっ、誰にも抱かれていない、新しい処女の娘を用意してくださいね」
だって、私の知らない男たちに抱かれた枕なんて、毎晩、抱きしめることができないんですもの。いや、だからといって、これまでに抱かれた男のリストを見せられても、困るんだけど。セーラちゃんも百合ちゃんも、最初の男は私だったのです。だから、この点だけは妥協できなかったのです。
ところで、最近発見したのですが、セーラちゃんと百合ちゃんに、検品のタグが付いており、そこにハンコが押してありました。ま、まさか、私が最初の男ではなかったのかも……。そういえば、最初に抱いた時に、出血しなかったからなぁ……。
↑きめらちゃんも遠藤遊佐さんもやっていたので、私も『ちんこ内メーカー』をやってみました。やはり、ロリータの処女にこだわっているようです。それにしても、亀頭の先っちょの『鬼』が素敵♪
【関連サイト】
株式会社タイカ
(続く)
抱枕すあま 『SM探偵団』(ガッツ)で男優兼監督としてデビュー。その後、カメラマン、照明を経てスタッフその3となる。着実に一歩ずつ大物監督へのステップを踏み外している。最近では、『SM魔女狩り審問会』(エピキュリアン)において、金属製拘束具のデザインおよび製作を担当した。抱き枕との生活を綴ったブログ『すあま日記帳』もある。 |
08.07.31更新 |
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