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すあまにあ倶楽部

第35回

伝説のレンタルビデオ屋『ビデオ図書館』

文=
抱枕すあま


↑円頓寺商店街のアーケードに飾られている“はりぼて”。決して、中国の石景山遊楽園ではない。

名古屋市西区那古野。ここには、名古屋で最も古い商店街である円頓寺商店街がある。劇場や寄席があった頃のような最盛期のにぎわいは見られないものの、今でも地元の方々に愛されている商店街である。

この商店街の裏通りにある住宅地に、ポルノ映画館の円頓寺劇場があった。そして、この劇場に隣接して、『ビデオ図書館』というレンタルビデオ屋があった。

ただのレンタルビデオ屋ではない。伝説のレンタルビデオ屋が、そこにはあったのだ。

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ビデオ屋巡りが楽しくなくなったのは、いつ頃からだろうか? 私の場合、中学生の頃からSMビデオを見ていた。未成年の私は、当然のごとくレンタルビデオ屋でSMビデオを借りることができなかった。SMビデオを見るためには、もっぱら古本屋の一角にある中古ビデオコーナーか、レンタルビデオ屋の販売コーナーで購入するしかなかったのだ。

そのため、私は週末になると名古屋の街中をくまなく歩き回り、ビデオ屋を見つければすぐに入店し、SMビデオをお店の隅々まで探し回ったのである。当時は、現在と状況も違っていた。SMビデオは、目立つ場所に置いていなかったのだ。しかも、古本屋の中古ビデオコーナーなどでは、足下の見づらい場所に1〜2本置いてあればまだいい方で、まったく置いていないお店も多かった。

そしてなにより、お店によって品揃えが大きく違っていた。セル専用のビデオなどなかった時代である。販売しているのはレンタル落ちのビデオであったため、仕入れをしている店主の趣味が大きく反映されていたのだ。

一度行ったお店にだって、何度も通う必要があった。同じ商品を何本も仕入れている訳ではないため、一度売れてしまったら、補充されることはない。欲しい商品でも、先に買われてしまったら、それが入荷されたことすら分からないのだ。ビデオ屋巡りは、“一期一会”の気持ちで臨まなければならなかったのだ。

私が名古屋を離れてから、もう15年近くになる。この間に、アダルトビデオはレンタルビデオからセルビデオが主流になり、メディアもビデオテープからDVDへと変わってしまった。そのため、どこのお店へ行っても品揃えに個性がなく、画一的になってしまった。

都内と同様に、いつの間にか名古屋でも大きなセルビデオのチェーン店が急成長を遂げていた。私がよく通っていたような小さなビデオ屋が全滅するのに、それほど時間はかからなかった。

そんな状況の中で、唯一健闘していたのが、伝説のレンタルビデオ屋『ビデオ図書館』であった。ポルノ映画館の円頓寺劇場に隣接していたが、大通りから中に入った住宅地に位置していたので、場所が非常に分かりにくいお店であった。

お店の間口はそれほど広くないのだが、ウナギの寝床のように奥へと広がっていた。お店の中へ一歩足を踏み入れると、まるで土蔵の中にでもいるかのように、夏でも涼しかったことをよく覚えている。時々、ポルノ映画館から漏れ聞こえる女性の喘ぎ声が、独特の雰囲気を醸しだしていた。

この『ビデオ図書館』が“伝説のレンタルビデオ屋”と呼ばれるのには訳がある。それは、なんといっても品揃えが素晴らしかったのだ。今では貴重となってしまったアートビデオとシネマジックの初期作品を、すべて揃えていたのだ。お店のちょうど中央の棚に、アートビデオとシネマジックのビデオが並んでいたのだが、背表紙のタイトルを見ているだけでも、壮観な眺めであった。

他にも、初期の志摩ビデオなどの古いSMビデオが充実していた。一般作は、お店の入口付近に申し訳程度に置いているだけで、それ以外はすべてアダルトビデオだったのだが、確かそのうちの1/2以上はSMビデオだった。

某老舗SMメーカーにもオリジナルテープがなく、DVDでの再販が不可能だと噂されている国宝級の作品でさえ、普通にレンタルできたのだ。名古屋だけでなく、遠方からわざわざレンタルに来るお客さんがいたというのも頷ける話である。

『ビデオ図書館』の入口の机の上には、分厚いファイルが置かれていた。このファイルを見れば、女優名と作品名の2種類から、目的のSMビデオを探すことができた。なにせ、店内は床から天井までビッシリとビデオで埋め尽くされていたのだ。いや、店内だけでない。置ききれないビデオは、倉庫にも置かれていたのだ。その数、なんと5万本!! そのため、レンタルしたいビデオを探すだけでも、大変な作業なのであった。

私が狙っていたのは、レンタル落ちのSMビデオであった。お店の一番奥が中古ビデオの販売コーナーになっており、1990年代中〜後半のSMビデオが、1,500円で購入できたのだ。掘り出し物も多く、都内で買うよりも安かったので、よく利用させて貰っていた。

そんな伝説のレンタルビデオ屋『ビデオ図書館』は、多くのSMビデオファンから惜しまれつつ、2005年10月に閉館した。さすがの『ビデオ図書館』も、時代の波には勝てなかったようだ。私は、約3年ぶりにその地を訪れた。




当然のことではあるが、『ビデオ図書館』は跡形もなく消え、いまは駐車場へと変貌を遂げていた。周囲の電柱にあったお店の案内看板も、すでに撤去されていた。駐車場の看板に『円頓寺劇場』の文字がなければ、ここに『ビデオ図書館』があったとは、誰も気づかないだろう。

SMに関する貴重な書籍は、神楽坂の『風俗資料館』に揃っているので、会員になればいつでも読むことができる。だが、貴重なSMビデオをまとめて見たいときは、『ビデオ図書館』がなくなったいま、どこへ行けばよいのだろうか?

貴重なSMビデオを持っている人は多い。ただ、それらをすべて所有している人は、どれだけいるのだろうか? 貴重なSMビデオが揃っており、レンタルすればいつでも見ることができた『ビデオ図書館』は、まさに伝説のレンタルビデオ屋といえるだろう。できることなら、『ビデオ図書館』を“伝説”にはしたくなかったのだが……。


(続く)

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suama.jpg 抱枕すあま 『SM探偵団』(ガッツ)で男優兼監督としてデビュー。その後、カメラマン、照明を経てスタッフその3となる。着実に一歩ずつ大物監督へのステップを踏み外している。最近では、『SM魔女狩り審問会』(エピキュリアン)において、金属製拘束具のデザインおよび製作を担当した。抱き枕との生活を綴ったブログ『すあま日記帳』もある。
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08.10.02更新 | WEBスナイパー  >  コラム