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すあまにあ倶楽部 第42回

アップルビデオ閉店によせて

文=
抱枕すあま


↑八王子にあった『アップルビデオ』。残念ながら、昨年の12月23日に閉店した。


お正月に、家族でコタツに入ってテレビを見ていたときのこと。日本テレビ系の『秘密のケンミンSHOW』の中で、「大阪府民は、和菓子の『すあま』を知らない!?」という話題がありました。

どうやら、大阪府民は“すあま”のことを知らないようなのです。なんでも、江戸で誕生した“すあま”は、上方意識が強く、京菓子が一番だと思っていた当時の大阪の人々には受け入れられなかったのだとか。でも、東京では非常にポピュラーな和菓子で、とても人気があるということで、話がまとめられていました。

テレビを見ていた私は、「そうか。私は大阪では人気がないけど、東京では人気があるんだ……」などとよく分からないことを考えていました。すると、うちのオカンから、「すあまって知ってる?」と聞かれました。「ま、まあね。東京での暮らしが長いから……」と返答しましたが、まさか、自分の息子の名前が“すあま”になっているとは、想像もしていないだろうなぁ……。

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JR八王子駅から北西方向に200mほど進んだ場所に、『アップルビデオ』はあった。昔はどこにでもあった、レンタル落ちのビデオを販売していた小さなお店である。もちろん、レンタル落ちのビデオだけではなく、時代の移り変わりに合わせ、新作のDVDなども扱うようになっていた。

しかし、地域に密着した商店街が大資本のショッピングセンターの進出により衰退していったように、DVD量販店も大型のチェーン店が進出し、小さなお店は次々と淘汰されていった。都心から離れたこの八王子の地も例外ではなかった。

2008年12月23日。八王子の『アップルビデオ』は、多くの人々に惜しまれつつ閉店した。

『アップルビデオ』の社長と知り合ったのは、『S&Mスナイパー』本誌に『SMビデオ探偵団』を連載していた西村知彦氏が管理人を務める人気サイト『SM探偵団』のオフ会の時であった。その時にお会いした社長の穏和な性格に惹かれ、何度かお店に伺ったり、通販を利用させてもらったりしていた(『SM探偵団』の団員は通販の送料が無料であった)。

まだ、DVDではなくビデオが主力商品であった頃、アートビデオやシネマジックの作品は非常に高価であったため、レンタルするしかなかった。そんな中、『アップルビデオ』は系列のレンタル店から、レンタル落ちのビデオを大量に入手することができた。そのため、『アップルビデオ』はレンタル落ちのビデオの品揃えがよく、しかも安く購入できたのだ。

しかし、AV業界はいつの間にか大手メーカーのレンタル商品から、インディーズメーカーによるセル商品へと移り変わっていった。レンタル落ちのビデオよりも安く、かつ今まで見たことのなかったような魅力的な商品が大量に市場に出回ったのである。この頃から、レンタル落ちではなく、新作の商品を専門に販売する店舗が増え始めた。

変化はそれだけではない。新作の商品が次々と大量に発売されるため、お店はどんどん大規模になったいった。お店を大きくしなければ、客の要望に応えられるような品揃えにならなかったのである。そのため、資本力のある会社は次々に大型店を増やし、今までレンタル落ちのビデオを中心に販売していた小さな店舗は、次々に消えてしまった。

近くに大型店が進出してきたとき、『アップルビデオ』の社長は『SunShop』の総帥にも相談していたようである。そして、『SunShop御徒町店』をマネて、「3が付く日は20%オフ」というサービスを実施していた。一時は客足が戻ったようだったが、近くに2つ目の大型店が開業したため、『アップルビデオ』の閉店を決めたらしい。

『アップルビデオ』の閉店の日。私は、東京駅から中央線の快速列車に乗り込み、八王子の『アップルビデオ』へと向かった。東京駅からは、快速でも八王子まで1時間近くかかる。もう、これからは八王子へ行くこともなくなるのかと思うと、だんだんと寂しさがこみ上げてきた。

お店に入ると、いつものようにアートビデオやシネマジックのレンタル落ちビデオが大量に並んでいた。いつもと違ったのは、それらが閉店セール価格で売られていたことだけだった。

もはや、レンタル落ちの商品を見かけることも少なくなった。どうやら、私が愛してきたレンタル落ちのビデオをメインに販売しているような小さなお屋は、すでにその使命を終えてしまったようだ。『アップルビデオ』に並んでいたレンタル落ちのビデオだって、昔はお宝の山だったのに、現在では復刻版のDVDが安く出回っている。もはや、新作のDVDを一通り揃えた大型店でなくては、生き残れないのである。

ただ、その大型店も安泰とはいえない。エロの世界は、不景気と関係がないといわれている。ただ、知り合いのお店は、どこも厳しいようだ。理由は明白である。ネットでのDVDレンタルが広まったからである。

レンタルであれば、ネットでも実店舗でも同じではないかという人がいるかもしれないが、ここには大きな違いがある。今までは、インディーズ作品というのは、基本的にレンタルができなかった。欲しい作品があったら、買うしかなかったのだ。

しかし、ネットレンタルでは、インディーズ作品までもがレンタル可能なのである。独自の作品を作り続けているあの『中嶋興業』までもがレンタル可能だと知ったとき、私は本当に驚いたものだ。こうなると、私の場合はDVDを購入する必要性がなくなってしまったのだ。

年間20万円近くDVDを購入していた私でも、ネットレンタルを利用するようになった昨年は、2万円程度しか購入していない。だからといって、ネットレンタルに残りの18万円を使った訳ではない。このお金は、本来であればセル店に入る予定であったお金なのである。

街の小さなお店を駆逐し、インディーズ作品を販売することで急成長を遂げてきた大型店は、これからどうなってしまうのだろうか? 今までは、家族にバレることを避けるため、こっそりとお店で購入していたお父さんたちも、今後、ダウンロード販売が主流になってくれば、わざわざお店で購入する必要がなくなる。パッケージがないから、家族にDVDを見つけられることもない。

そのため、これからはレンタルを行なわないような小さなインディーズメーカーの作品しかお店では売れなくなるだろう。『SunShop\x87U』の年間売り上げランキングTOP10を見ているとよく分かる。SCRUM、電人、DragonImageなど、レンタルができない小さなメーカーの作品が上位にランクインしているのだ。

こうなると、大型店が生き残る道はただひとつしかない。そう、昔の街中にあったお店のように、小さなお店にすることだ。現在、売り場面積のほとんどを占有している大手メーカーの作品は、そのほとんどがレンタル可能である。このようなメーカーの作品は、もともと売値が安いので、薄利多売でしか利益が得られない。しかし、レンタル可能な商品は、これからさらに売れなくなっていくであろう。

これからのセル店に求められるのは、今よりもさらにマニアックな商品を揃えることである。そうなると、かつてのマニアック商品のように、1万円くらいの価格帯が中心となる可能性がある。また、これまで流通に乗っていないようなメーカーを探し出すことになるため、各店舗によって品揃えが大きく異なっていくであろう。

私は、もう一度ビデオ店巡りの楽しさを味わってみたい。確かに、ネットでサンプル動画を見て商品を選ぶのも楽しい。しかし、お店で商品を選ぶときのワクワク感やパッケージ写真に胸を躍らせて家に帰るまでの時間は、何物にも代え難い喜びがあったのだ。家に帰り、「パケ写にだまされた!!」と嘆いたのも、今では懐かしい想い出である。


↑実家にあった『七福神人形焼き』。その名の通り、七福神の顔を形取った人形焼きです。ただ、謎なのは、10個入りなんです……。7人の神様の他に、いったい誰が紛れ込んでいるんだ!?


【オマケコーナー】

○すあま家の大晦日

NHKの『紅白歌合戦』を見ていたとき、『崖の上のポニョ』を歌っている女の子を見て、すあまさんはこう言いました。

す「あっ、倉橋のぞみだ!!」

家族の目の前で、“大橋のぞみ”とロリータアイドルの“倉橋のぞみ”を間違えて絶叫するなんて……。


○すあま家の正月(その1)

箱根駅伝を見ていたときのこと。ケガで途中棄権した選手を見ながら、オカンがこう言いました。

母「これだけの選手が走っているんだから、1人くらい怪我をする選手もいるわよねぇ。だって、往復で10区間でしょ? それを23校の選手が走ってるから、全員で260人もいるのよね」

す「はぁ? 10区間を23校の選手が走るんでしょ? なんで260人になるの?」

母「だって、10区間を10校で100人でしょ? 10区間を20校で200人でしょ? だから、10区間を23校で260人じゃない?」

す「なぜそうなる!!」

我々の会話に、オトンが口を挟んできました。

父「お前は本当にバカなんだから! いいか、箱根駅伝は往路と復路があるから、正解は260人の2倍の520人なんだぞ!!」

す \(゜Д゜)/


○すあま家の正月(その2)

箱根駅伝を見ていたときのこと。茅ヶ崎の近くに来たとき、アナウンサーがこう実況していました。

ア「湘南海岸には、難敵が待ち受けています!!」

それを聞いたオカンは、こう言いました。

母「あ〜、難敵ってアレね。私だって、それくらい知ってるわよ。ほら、あの……そうそう、徳光和夫!!」

す「海からの強風のことだよ……。確かに、よく分かんない応援メッセージを選手に向かって叫んでるけどさ」


○すあま家の正月(その3)

双子の姪っ子ちゃん(小1)が遊びに来たので、お年玉をあげました。すると、同じポチ袋に入れて渡したので、どちらが自分のお年玉なのかを区別できるように、袋の裏に自分の名前を書いていました。それを見ていたオカンは、

「この子たちは、小さいのにしっかりしているわねぇ」

と目を細めていました。

しかし、姪っ子ちゃんたちは、名前を書いたお年玉を忘れて帰りました。しっかりしてねぇよ。


【お知らせ】

WEBスナイパーでは、編集スタッフを募集しています。主な仕事は、すあまさんから送られてきたコラムの9割を書き直すことです。
他には、こぶ(た)さんとyukiさんのチンコにモザイクを入れることです。
なんだか、もの凄く楽しそうなお仕事ですよーーー!!(棒読み)
今なら、特別にすあまさんの王様のクンニもお付けいたします!!(心の叫び)

※編註:すあまさんの書かれている仕事内容はともかく、本当に編集スタッフを募集しています!

(続く)

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suama.jpg 抱枕すあま 『SM探偵団』(ガッツ)で男優兼監督としてデビュー。その後、カメラマン、照明を経てスタッフその3となる。着実に一歩ずつ大物監督へのステップを踏み外している。最近では、『SM魔女狩り審問会』(エピキュリアン)において、金属製拘束具のデザインおよび製作を担当した。抱き枕との生活を綴ったブログ『すあま日記帳』もある。
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09.01.29更新 | WEBスナイパー  >  コラム