毎週日曜日更新! あの日“アイツ”を追いかけた 全ての女子たちへ! 「腐った遺伝子」 第5回 文=早川舞 ←『ハイパーストリートファイターII 〜アニバーサーリーエディション〜』 品番:1248590 税込 ¥2,079(税抜 ¥1,980) 販売元:株式会社カプコン (C) CAPCOM Co., Ltd. All rights reserved. |
今回の記事を読んでいただくにあたっての前説です。春麗は真ん中右寄り女の子のキャラ。リュウとケンは白と赤の空手着みたいなのを着ている人。 ガイルがスケートリンクみたいになってる人。ブランカはガイルに寄り添っている緑のバケモノっぽいやつ。それにしてもザンギエフと豪鬼が邪魔だなぁ。あ、あと、今は昇龍拳も波動拳も出せるようになりました。 ちなみにこれは本家スト\x87Uのジャケ写ではないです。そもそも当時はこんなおしゃれなイラストじゃなかった。
前回からの続きです。>>>前回の記事を読む
コスプレによるリアルデビューに失敗した私は、そのままズブズブと腐り続け、オタク社会の末端的存在(文化を消費するだけで自分では何も生み出さない)として、何となく中学を卒業してしまいました。
もうちょっと何かあっただろう自分、って気もするんですが、まさに人生の暗黒時代と言いますか、本当に記憶がすっぽり抜け落ちているんです。ひょっとしたら忘れざるを得ないような何かショックな出来事でもあったのかもしれないと勘繰ってしまうほどに。
ともあれ、そこから高校に入学した私に、人生初となるイベントが次々発生しました。まずはゲーセンデビューです。正確には中学卒業頃にはすでにハマっていたのですが、狂い始めたのは高校入学後でした。
きっかけは社会的現象と呼ぶに相応しくさえある人気を博した“ストII”(『ストリートファイターII』)でした。おそらく“ダッシュ”が出る直前で、人気がそろそろ一段落ついた頃のことだったと思うのですが……(話がわからない方、すいません)。
それにしても不思議なのは、どうして私はゲーセンになど入る気になったのかということです。さんざん考えたのですが、どうしてもその「なぜ」が思い出せない。田舎だった私の街では、その頃はまだゲーセンは不良の溜まり場と思われていました。どう考えても、内向的な中学生のオタ少女がひとりでフラっと入るような場所ではないのです。「魔が差す」という言葉がありますが、もう魔が差したのだとしか思えない。これぞまさに、運命のいたずらとでも言うべきものだと思います。冬ソナなんか比じゃねぇ(古いし)。
ちなみにキャラは、最初は春麗を使っていましたが、だんだん女子が女キャラを使うということが何となく気恥ずかしくなって、ブランカに変えました。私の極端から極端に走る性格というのは、つくづく当時から変わっていないようです。
いや、本当はリュウとかケンとか適当に格好良さげなのを使いたかったのですが(ガイルは何となくイヤだったけど)、反射神経に難のある文科系腐女子には昇龍拳とか波動拳とか竜巻旋風脚などの必殺技が出せなかったので……。
そういえばビジュアルでバルログを選んだこともありましたが、もう自分が何をやっているのかすらわからないレベルのスピードにまったくついていけず、一瞬で挫折しました。でもねぇ……いくら消去法といっても、花も恥じらう女子高生がブランカって……当時の自分にツッコミ入れたいです。いや、エドモンド本田じゃなかっただけいいか。
当時はよく春麗の絵を描いていました。この連載を始めたのをきっかけにまたイラスト描いてみようかなぁと思って画材屋に行ってみたのですが、何を買っていいのかわからず、結局シャーペンと消しゴムと製図ペンを買って、とぼとぼと帰ってきました……もうアレです。すいません。そう言えば“ストII”ではやおらなかったなぁ。ケン×リュウとか人気だったんですけどね。
ゲーセン通いは私の嗜好に華を添えただけでなく、実生活にも変化をもたらしました。私はこの時期になって初めて、ゲームという共通の話題で、リアル男子とまともに向き合って話をすることができるようになったのです。
女子校でもないのにひとり女子校生活を否応なく続けざるを得なかった腐女真っ盛りの時代に、ひとすじの光明が差した瞬間でした。本当にひとすじでしたけど。
そしてまぁ接触する時間が増えると当然といいますか、一緒に帰るなどのほのかなときめきイベントなどが発生したりするわけです。今考えるとここでもうちょっと目の前のリアル男子に向き合っていれば、一度は失敗したリアルデビューに再度ありつけたかもしれないと思うのですが、私はそれをしなかった。というか、できなかった。
この期に及んでもなお、私はリアル男子よりも妄想男子のほうにより愛着を感じ、逆に目の前のリアル男子に恋愛対象としてのリアリティを今イチ感じられなかった、というのが、まず理由のひとつとして挙げられます。
悪しき慣習とでもいいますか、リアルと妄想の逆転がすでに自分の中で癖になっていたのでしょう。
しかし、もっと大きな理由は、あまりの頭の悪さに心の底から当時の自分をシバきたくなるのですが、その頃流行っていた『BASTARD!!』というマンガにありました。
このマンガ、「悪の暗黒神を倒す魔法使いを目覚めさせられるのは処女だけ! 処女って偉い!」という設定があり、その設定がもうくどいほどに何度も何度も形を変えて作中に出てくるのですが、そのマンガが大好きだった私は、「へー、処女ってすごいんだー」という間違った認識が刷り込まれてしまったのです。
リアル男子とまともに付き合うことになれば、その後には当然セックスが来るんだろうということぐらいは、腐女子といえどもぼんやりとは知っていましたから、もちろん10代らしく怖いという意識もありましたがそれ以上に「処女じゃなくなったらヤだなぁ」という気持ちがあり、リアル男子との間に壁を作ってしまったわけです。
←『BASTARD!!―暗黒の破壊神 完全版 (Vol.1)』
ISBN-13: 978-4087826616
税込 ¥2,940 ( 税抜 ¥2,800)
出版社:集英社
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↑あまりのエロ描写の多さに当時連載中の『週刊少年ジャンプ』でひっそりと問題になっていたという『BASTARD!!』。昨今の若者の性の乱れはこれで一発解消ですよ! みんな私みたいに頭が悪ければね! 萩原先生スゲー! 登場人物の名前がほとんど全員メタルじみていたのも(まんまイングヴェイとか出てくるし)、今、見返すと読みどころのひとつだったんだなぁと再発見。当時は全然わからなかったけど。
しかしともあれ、こうして接触の機会が増えることにより、私は男子たちの文化をも積極的に取り入れるようになりました。その最たるものは、F1だったでしょうか。
当時はちょうどミカ・ハッキネンがロータスに在籍していた頃で、私の周りでも彼のファンが多く、「ロータスの12気筒で4位に食い込んだハッキネンはすごい」(超うろ覚え)とか何とかそんな話で盛り上がったりもしていたのですが、そのとき私の頭の中はミカ・ハッキネン×ジョニー・ハーバード(当時のロータスのセカンドドライバー)のカラミが展開されていました。
ちなみにこのふたり、本当にピットを手をつないで歩いていたことがあるとかないとか……。
↑約10年後、ミカ・ハッキネンの生まれ故郷たるフィンランドにSM目的で行くことになろうとは、このときは思いも寄りませんでした。まぁ同じベクトルの矢印が伸びた結果って気はしますけど。初めてヘルシンキの空港に降り立ったときは当時のカラミを思い出して感慨深かったなぁ。
早川舞 世界、特にヨーロッパのフェティッシュ・カルチャー関係者との交流も深い、元SM女王様フリーライター。だが取材&執筆はエロはもとよりサブカルからお笑い、健康関係まで幅広く?こなす。SMの女王様で構成されたフェミ系女権ラウドロックバンド「SEXLESS」ではボーカルとパフォーマンスを担当。
Reverse Dead Run |
07.11.04更新 |
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