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新連載 続・常識ある大人の為の肉筆紙芝居
伝説の倒錯フィクション、待望の第二部へ!
酒気帯び運転で人身事故を起こした「くみ子」が体験する、恥辱の獄中生活。唇を噛み締めた身体検査、身も細る裁判、羞恥地獄の移送を経て、ついに女囚となった「くみ子」を待ち受けていた辛酸体験とは......。一組の男女の会話で綴る、異色の被虐イマジネーション紙芝居。秘蔵されていた第二部を公開します!!
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【1】女囚の日々
房外作業と身体検査


入所したての女囚が最初に体験させられる分類調査(言い方からして女囚を人間あつかいしていない言葉です)の、わずらわしく屈辱的な検査が終わって刑務所の暮らしにようやく慣れかけると、房外作業が命じられます。私たちは、懲役囚ですから作業に好き嫌いは言えず、命令された仕事をしなければなりません。まず使役作業といって、刑務所の便所、風呂場、洗面所などの掃除やかたづけ、荷物はこびなどの雑役をやらされます。

一番びっくりしたのは戒具備品室で、手錠、足かせ、防声具(サルグツワ)、鎮静衣など見るも恐ろしい戒具が、ずらりと並んでいる部屋でした。


「言うことをきかないで懲罰を受けるとき、お前たちがお世話になるお道具なんだから、しっかり手入れをするんだぞ」

看守が、笑いながら命令します。自分の身の自由を奪うための道具の手入れをさせられる、奇妙な屈辱感をかみしめながら、私たちは、革に油をぬったり、手錠に錆止めを差したり、手入れをするのでした。

本格的な仕事では、洋服のクリーニング、人形や装飾品作り、ズック靴作りなどがありましたが、私が入れられた組は、自分たち女囚が着る下着を作る作業でした。シュミーズ、シャツ、ズロース、股引きなどを、それぞれ定められた規格通りに作り、全国の女囚刑務所に納入するのです。支給されるズロースが、呆れるほど大きく不格好なのは、何十年も前の下穿きの規格から全然変えられていないからなのです。生地がほとんど伸び縮みしない厚地の本綿布ですから、ブカブカに作らなければ穿けないわけです。

それにしたって、もう少しは形よく作れるのにと洋裁をやったことのある女囚が言いますが、規格以外の形に作ったりしたら叱られます。シュミーズなども一緒で、いまでは田舎のおばあさんでも着ないような不格好なものをわざわざ作らされ、それを自分たちが着なければならないのです。なんともばかばかしく腹立たしい気持でした。

しかも、そのブカブカズロースでさえ新品は上級囚に優先的に支給され、私たち四級囚は他人の穿き古しをはかされるのです(釈放された女囚が残していった下着を熱湯消毒して再使用するのです)。看守にいい点をつけてもらって上級に上がらないかぎり、いちばん下につける下穿きさえ、他人の穿き古しをつけさせられる、ほんとうに厳しい身分社会でした。

作業はそれなりに気も紛れて嫌ではありませんでしたが、アアやっぱりここでも、と惨めな気持にさせられたのが作業が終わったあと行なわれる身体検査でした。作業には、はさみなどの刃物や針を使うのですから、終わったあと、それらの員数を厳しくチェックされるのは、私たち女囚の立場上しかたないと思いますが、それは予想以上に厳しいものでした。

作業終了のブザーがなると、私たち女囚は一斉にその場で立ち上がり(作業中は、立ったり作業台を離れたりするには、すべて看守の許可が必要なのです)、道具類を作業台の中央にそろえて、立ったまま看守の点検を待つのです。

用具リストをもった看守がそばに来ると、

「第O班、はさみO丁、小刀O丁、木綿針OO本」

と申告し、看守たちが員数を点検するのを待ちます。

「ヨシ!」

と声がかかると、その場で全部を用具箱に納めて看守に返納します。針一本でも員数が合わなければたいへんです。

「よく探しなさい。」

と、作業台の下の床まで這い回るように探させられ、それでも出てこなければいよいよ最後の宣告です。

「やむを得ません。裸体捜検します。こっちへ並んで!」

部屋の隅に集められた私たち女囚に残酷な命令が飛びます。

「着ているものを脱ぎなさい!」

巻きぞえをくうほかの班の女囚たちはブツブツ文句を言いますが、法律で認められた職権命令なのですから一人の例外も許されず、部屋中の女囚が一人残らずズロースまでとらされて、一糸纏わぬ全裸にさせられるのです。






脱ぎ捨てた作業衣や下着をその場に残し、素っ裸のまま一列にならばされた私たちは、一人ずつ前に出て、女の看守さんに髪の中、口の中、脇の下から股間まで調べられます。針や刃物をそんなところへ隠せるものか、考えればわかりそうなものなのに......。

一方では残りの看守たち(男の看守もまじって)が私たちの脱ぎ捨てた着物を、ズロースの裏まで検査します。今まで肌につけていた下穿きを目の前で裏までひっくり返されて調べられるというのは、何ともいえない屈辱でした。しかも恐ろしいことに、こうした検査があると三回に一回くらいは作業衣の襟やズロースのゴムのなかから針が出てくるのです。

「000号! こればお前の作業衣だね。ここから針が出てきたよ!」

全裸で立たされていた女囚はまっ青になって震え上がります。

「私知りません。だれかが私をハメようとしてやったんだ。私じゃありません」

泣きだす彼女は、その場で手錠を嵌められ、ズロースも返してもらえない全裸のまま取調室へ連行されます。いくらほかの者がやったのだと主張しても、それを見ていた証人でも出ないかぎり、結局三日間の懲罰房入りなどの罰を受けなければなりません。何かで恨みを買ったり、みんなに同調せず生意気だとみられたりした女囚が落される罠なのでした(あとになって私もこの罠にかけられ、恐ろしい懲罰を体験することになります)。



「下穿きを 脱(と)うしあたしの頼り無き 全裸の前を 晒して立てり」不二夫


作業場での仕事だけではなく、週に一、二回は庭の整地や草むしりなど屋外の作業があります。当然ながら、この場合の用具のチェックの厳しさは屋内のとき以上です。草むしり用の小さなスコップが一個合わなかったときなどは、庭の隅に並ばせられ、情け容赦なく 「裸体捜検! 着ているものを全部脱ぎなさい!」 の声が掛って......。

(こんな家の外で、廻りから丸見えのところで裸にされるんだわ)

私は、体中の血が凍る思いでした。でも、ブツブツ言いながらも諦めて着ているものを脱ぎ始める女囚たちのなかで、私一人が逆らうこともできず、恥ずかしさにふるえながら、私も、作業衣の上着とズボンを脱ぎ、シャツをとり、そしてとうとう最後のズロースまで自分の手で......。

庭の隅とはいえ、囲いも何もない家の外、どこからも丸見えの場所で女の裸体を晒す恥ずかしさ! 明るい午後の太陽が、女のからだの隅々まで余すところなく照らします。吹き抜けて行く風が、下腹の恥ずかしい茂みやお尻のあたりをなぶってゆくおぞましい感触に、最後のものまで脱がされて、腰まで裸になっているのだという実感が頭の芯まで駆けのぼって、目の前が暗くなりました。

女囚たちが庭で裸にされているのを目ざとく見つけた男の職員たちが、大勢窓から首をだして、ニヤニヤと見物します。その視線が肌に刺さる思いで羞恥と屈辱に悶えながら、私たちは、台帳の記入ミスだったとわかるまでタップリ三十分あまり、全裸の肌を明るい太陽と男の視線に晒して立っていなければならなかったのでした。


「女囚は最初独房に入れられる。独房はベッドと便器があるだけで、トイレに囲いもないから、用を足しているとき覗き窓から見られれば、便器にまたがっている格好まですっかり見られてしまう。惨めさに泣いたり騒いだりすれば、たちまち戒具のお世話になる。手錠、縄は説明の要もないだろう。鎮静衣というのは南京袋みたいなものにベルトがついている。すっぽり入れられて外からベルトを締めあげられると芋虫みたいに転がっているしかない。防声具ってやっはもっと残酷な道具で、口に大きな玉をくわえさせて、吐き出せないように皮ベルトで口を覆ってしまう」


「私、あれ嫌い!」

「好きなやつはいないだろう。大声をだして暴れて、防声具をかけられるときには、当然手錠か鎮静衣で手の自由を奪われているのだから、ときおり息がつまって死ぬ事故があるといわれる」

「恐ろしい」

「今あげた戒具のなかに鞭や浣腸器が入っていない。くみ子にとっては浣腸器がないのが残念だろう」

「エーッ嘘よ」

「ところがちゃんとあるんだ。義父を殺したという無実の罪で無期懲役の判決を受けた当時ニ十五才の若妻が、あまりのくやしさ、悲しさに自殺しようと、刑務所の中で絶食したという事件があった。いくら叱られ、なぐられてもどうしても食事をしない。刑務所側はどうしたと思う?」

「さあ、わかんない」

「とうとう看守たちは彼女を医務室へひきずりこみ、マッパダカにしてベッドに足を広げさせて縛りつけ、肛門にゴム管を突き通して、お尻から栄養剤を注入したんだ」

「マアッ。ひどい......」

「タップリ注入しておいて、出てしまわないよう肛門に栓を嵌め、手が届かないように後手錠をかけて首縄で吊って、腸がすっかり栄養分を吸収しおわるまで全裸のまま独房に正座させた。若い女の身で裸体を晒させられる恥ずかしさ、ゴム管を突き通され肛門栓まで嵌められたお尻の痛さ、ムリヤリ薬を注入された下腹部の気持悪さ。そしてそれにも増して、自由を奪われた女囚の身には自殺することすら許されないのだと知った悲しさ、惨めさに、彼女はマッパダカの後ろ手錠姿で正座させられたまま大声で泣いたということだ」

「お尻に栓をして正座させた、ですって? そんな......そんな残酷なことってないわよ。痛いのよ、死ぬほど! おまけにマッパダカで後手錠だなんて」

「経験のある痛さってわけだな。そんなに痛いのかい、肛門栓をされて正座するってのは」

「知らないッ!」

(続く)



※「女囚くみ子」は、1990年代(監獄法廃止以前)に書かれた、浜不二夫氏によるSM創作物語です。一組の男女の会話から想起される獄中の描写、法律談義は、くみ子を責めるためのプレイトークとしてお楽しみ下さい。
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「女囚くみ子」第一部
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浜不二夫
異端の作家。インテリジェンス+イマジネーション+ユーモアで描く羞美の世界は甘く、厳しく、エロティック。
「 悪者に捕らわれた女性は、白馬の騎士に助けてもらえますが、罪を償う女囚は誰にも助けてもらえません。刑罰として自由を奪われ、羞恥心が許されない女性の絶望と屈辱を描きたかったのです。死刑の代わりに奴隷刑を採用した社会も書いてみたいのですが――」
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