夏休みが終わった今こそ、子供と家族連れの去った映画館へ1人で出かけ、子供向け夏休み映画を観よう！ 映画『イースターラビットのキャンディ工場』公開中!!

イースター島にあるキャンディの国。ウサギの王子イービーはキャンディ工場を継ぐことになっていたが、ミュージシャンになるという夢を捨てきれずオーディションを受けにハリウッドへ。その隙をついてヒヨコたちが工場を乗っ取ろうと画策して――。『怪盗グルーの月泥棒 3D』のスタッフに『アルビン/歌うシマリス3兄弟』のティム・ヒル監督が加わって制作されたコメディアニメ。

全国公開中!!

『レオン』でジャン・レノ演じる殺し屋の主人公は休日、1人でMGMミュージカルを観るのが趣味だった。ギャップこそは魅力の源泉、そこであなたは『イースターラビットのキャンディ工場』を観るのはどうだろう。もちろんカップルでこの映画を観に行くような、そんな無神経な人間がこの記事を読んでいるとは思えない。あなたは1人で、休日に、または平日の夜にこの映画を観に行くのだ。
大ヒットした『怪盗グルーの月泥棒』のスタッフが再集結！というふれこみの本作は、CGと実写が半々に合わさった、子供向けの夏休み映画。夏休みが終わった今、客席はガラガラに違いない。それならあなたが行くしかない、むしろ今こそより『レオン』っぽい状況に近づいているというものだ（『レオン』では場内に他に1人しか客がいなかった）。


本作は冒頭がまず最高！　あなたが工場好きの人間なら（ピタゴラ装置にときめいたり、機械の仕組みの図解本に夢中になったことがある人間なら）、ヒヨコ作業員の操る、ウサギの形のチョコレートに目を付ける機械をもう、ずっとループで観ていたい！あと1週間ぶっ続けてみていたい！と思うはずだし、観てると何となく納得してしまう動きのグミマシーンを、そこちょっと止めて！スローでもう1度見せてくれ！と思ってしまうはずだ。
さらにそこを走り回る、工場の御曹司である子供ウサギ！　これがまたかわいくて、だって耳が長いんだもん！足先、長いんだもん！柔らかくて暖かそうなんだもん！ともえもえしてしまう、豪華で気持ちのよい冒頭シーンなのだ。

ところがお楽しみはここまで。20 years later のテロップを経て再び登場するウサギ君は「工場なんて継ぎたくない！　俺はロックスターになる！」というまさかの夢見るピーターパンラビットになっている（服装もグランジファッション）。お菓子とかわいい子ウサギの話かと思っていたのに！という期待は裏切られ、それどころか映画はモフモフ！＋カラフル！のCG世界から実写に切り替わって、食卓を囲む家族が登場。誕生日席のいい年した青年は無職で、妹のほうが先に就職しているらしい……というまさかのヒーマニスト展開へとなだれ込んでいってしまうのだ。
この映画はそんな、ダメ青年の職探し、ボンボンウサギのサクセス探し、そこに加えて野心的使用人ヒヨコの反乱という、三者三様の自己実現を描いている。

ただ納得がいかないのはヒヨコの扱い方で、本作ではヒヨコの自己実現だけはかなりネガティブに、「出過ぎた真似」として描かれている。
見様によっては工場労働者のプロレタリアートが、選ばれし資本家のウサギ一族にたてつくという構図にも取れるのだが、むしろウサギとヒヨコという種の違いがあることで、これは階級闘争というより、人種差別じゃないだろうか。
野心を剥き出しにして「家出した子ウサギの代わりに私を次期、跡取りに！」と申し出るヒヨコに対して「ヒヨコのお前が？　ギャッハッハ」とひたすら笑っているウサギの工場長には「お前レイシストだろ」と突っ込まずにはいられない。アメリカの女の子が「私、ラーメン屋になりたいんです！」と言って「お前が？」と言われつつ見事にラーメンを会得する『ラーメンガール』を、この工場長には観てもらいたいものだ（まあ私は観たことないですが）。


ウサギはかわいいからいつだって最高として、人間のほうの主人公はどうしても観ていて時々「大丈夫かこいつ」という不安に苛まれてしまう。特にエンディングは、「もうノイローゼになった彼が完全にあっちの世界に行ってしまうシーンなのでは」という『ゴースト・ワールド』のあの最後のバスに乗ってしまうような恐さがあった。
それにしても、面接で訪れた会社で主人公に向かって突然クイズを出してくるメール係の男。「ヒーマニストセンサー」がビンビンに反応したのだが、その後1回も出てこなかったのは残念だ。アメリカには「子供向け映画にヒーマニストは2分以下」というレーティングもあるにちがいない。

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『イースターラビットのキャンディ工場』
全国公開中!!

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映画『イースターラビットのキャンディ工場』公式サイト

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