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(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

WEB SNIPER Cinema Review!!
『イージー★ライダー』に続く監督第2作――
ハリウッドに葬られたデニスホッパー<最後の映画>
主人公は映画撮影のためペルーの村へやって来たスタントマン。ドラッグに溺れ、放蕩にふけるうち、彼は映画作りを模した奇妙な儀式に巻き込まれ、虚構と現実の境を超えためくるめく世界へと突入していく――。

新宿シネマカリテにて公開中、ほか全国順次ロードショー
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(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

60年代のヒッピームーブメントを活写した『イージー★ライダー』の監督・主演として、一躍時代のイコンとなったデニス・ホッパー。そんな彼が、「大ヒットヒッピー映画よ、もう一度」と、夢膨らませたユニバーサルから85万ドルの予算と、最終編集権、宣伝方針を決める権利にいたるまで保障されて監督したのが本作『ラストムービー』(71年製作)だ。舞台はペルー。撮影クルーは行きの飛行機の中で、すでに大量のマリファナを吸い、酒を飲み、現地では産地直送コカインをキメまくり、編集に使用されたアメリカの拠点では、関係ないヒッピーが溜まってなぞのコミューンが発生し、1年にわたる編集作業の末ついに完成した映画を観たユニバーサルのトップは、再編集を指示したという。ストーリーも編集もすべてがカオスだったのだ。しかしホッパーは契約に基づき断固拒否! 結局そのまま公開されるも、最小限の上映を経てすぐに封印され、以後、彼はハリウッドから10年の間干されることになった。そんなヒッピー全開のカオス密閉直送便が4Kレストアで蘇ってスクリーンで観られる!ありがとうコピアポア・フィルム!

(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

私もかつて渋谷ツタヤに1本だけあるVHSを借りては、恐る恐る再生ボタンを押していた思い出があるが、久しぶりに観る『ラストムービー』はやっぱり意味不明!!!!!それでも、なんとなく前より筋を捉えることができたので、
(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

まずはその一端をお伝えしたい。本作に出てくる西部劇シーンというのは、これはペルーにやってきたアメリカの撮影クルーが撮っている映画(監督役を演じているのはサミュエル・フラー)なんですね。そしてデニス・ホッパー演じる主人公は、スタントマンとしてその作品に参加している。やがて撮影は完了し、クルーはいなくなるのだけれど、デニス・ホッパーは現地に残り、元・娼婦のちゃんねーとよろしくやっている。砂金をとりにいくような話がもちあがったり、娼館でレズショーを観たり、彼女と花畑できゃっきゃするシーンなんかは、いかにもなフラワー・ムーブメント感あっていいのだけれど、これが4Kレストアですっげ~きれい! で、その頃、地元ペルーの住民たちにもある変化がおとずれている。「映画撮影」というものを初めて見たであろう彼らが、それを見よう見まねで再現し始め、祭りがはじまってしまったのだ。しかし彼らは映画が虚構であることを知らないため、格闘シーンでは実際に人を殴りつけたりしている。彼らが再現しているアメリカ映画は西部劇......。やがて銃撃シーンの撮影が迫ってくるにつれ、不穏な予感がスクリーンに充満し始める。

(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

というストーリーなんだよ多分。これが時系列めちゃくちゃで編集されているため、いま映っているのが、サミュエル・フラー演じる監督役が撮っている映画内映画のシーンなのか、それとも主人公の身に直接降りかかっている事態なのか、混乱することはなはだしい。それでもその奥から突如すごいイメージが立ち上がってくるのが本作のカルトたる所以で、「グリンゴ!グリンゴ!」とかいってなんかわけ分からずに連れてこられたデニス・ホッパーのまわりに、現地の住民が竹ひごかなんかで編んで作ったカメラ風の物体、おなじくブームマイク風の物体、おなじくレフ板風の物体が集まってきて、撮影の真似事が始まると、ブードゥーな雰囲気が立ち上がってきてもうスゴいわけです。『ウィッカーマン』(ロビン・ハーディ監督)みたいに、生贄の不穏さもあり、このシーンのインパクトのせいで、一度『ラストムービー』を観てしまうと、その後もだいたい6年くらいの周期でまた観たくなるんですよね~。そして観直すたびに「やっぱよくわかんねえな」みたいな。

(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

本作がユニークなのは、これが映画についての映画じゃなくて、映画撮影についての映画だというところ。撮影というのは、実際の肉体が動いてなにかを作り上げている、その現場にしか存在しない集団行動で、それはじつは祭りや、儀式でもあるかもしれない。例えばもし、機材が本物で、スタッフもプロで、ただカメラの中にフィルムだけが入っていない撮影現場があったとしたら、それはなんだろう?狂気か!?パフォーマンスか!?儀式か!?っていうか『イージー★ライダー』もスタッフ含め、みんなマリファナとか吸って撮影していたらしいので、1日くらい「スタッフが全員ぶっ飛びすぎて、フィルムを入れ忘れて撮影してました」みたいな日があったんじゃないだろうか。それでデニス・ホッパーは「俺たちは一体、一日かけて何をやってたんだ......」みたいに落ち込んだものの、「待てよ?誰にも観られない映画、フィルムの入っていないカメラで撮る映画......、それこそ純粋な映画、究極の映画なんじゃねえか!?」みたいなインスピレーションを受け、ジャック・ニコルソンあたりが「ッデム!デニス、そいつは最高のアイディアだぜ。お前はそれで一本撮るべきだな......」とか適当なこと言って、本作が生まれた。そんな感じなのではないだろうか?
アニエス・ヴァルダは、映画とはインスピレーション(思いつき)、クリエーション(創造)、シェアリング(共有)といっていたけれども、人類がほぼ死に絶えたあとの「最後の映画」は、観る人のいない、撮影だけの映画になるのかもしれない。それは観客がいないままに、神に捧げるためとして、いまでも神官によって舞われている、瀬戸内海の島に立つ神社の秘技のようなものなのかもしれない。そんな映画を自らのキャリア10年分をふいにしてまで、ハリウッドのど真ん中に飛び降りて垣間見せようとしてくれたデニス・ホッパー、お前は真に勇気あるスタントマンだぜ!ありがとう!

(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

文=ターHELL穴トミヤ

革新的な内容ゆえ映画界から追放された問題作が、約半世紀の時を経てよみがえる!


『ラストムービー』
新宿シネマカリテにて公開中、ほか全国順次ロードショー

(C)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos
原題=『THE LAST MOVIE』
監督=デニス・ホッパー
脚本=スチュワート・スターン
出演= デニス・ホッパー、ステラ・ガルシア、ドン・ゴードン、ジュリー・アダムス、ピーター・フォンダ、サミュエル・フラー
提供=キングレコード
配給=コピアポア・フィルム

1971年│アメリカ映画│カラー│ヴィスタサイズ1:1.85│DCP│108分

ドキュメンタリー映画『デニス・ホッパー/狂気の旅路』も同時公開中!!
ALONG FOR THE RIDE LLC,(C)2017
原題=『ALONG FOR THE RIDE』
監督=ニック・エベリング
製作= ニナ・ヤン・ボンジョビ、シェリー・アン・ティンモンズ
出演= デニス・ホッパー、、サティヤ・デ・ラ・マニトウ、ヴィム・ヴェンダース、デヴィッド・リンチ
提供=キングレコード
配給=コピアポア・フィルム

1971年│アメリカ映画│カラー│16:9│DCP│101分

関連リンク

映画『ラストムービー』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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