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(c) Legend Pictures

WEB SNIPER Cinema Review!!
心とカラダを解き放ち、新たな自分を見つける旅
愛と性は切っても切れない関係。この二つをフィーチャーし、まったく新しい性愛の可能性を探る、ロマンティックでちょっとエッチな恋愛映画の祭典「Love & Eros CINEMA COLLECTION」。ピンク映画から活動をはじめ、『感染列島』などの一般映画も手がける瀬々敬久監督の作品を、オナニーマエストロ・遠藤遊佐さんにレポートしてもらいます!!
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今年に入ってからピンク映画を観に行く機会が何度かあり、次第にその魅力に気づきつつある私。
AVみたいにオナニーのオカズにはならないけれど、いろんな人のいろんな性愛のカタチを描いた“今どきのピンク映画”をもっと観てみたい。できればもっと頻繁にピンク映画館に足を運びたい。
そう思っていた矢先にWEBスナイパー編集部から、セックスと恋愛をフィーチャーした映画祭があると聞き、これ幸いと行ってきました。
「LOVE&EROSシネマ・コレクション」は、新宿にあるインディペンデント系映画館“テアトル新宿”で行なわれているイベントで、6人の監督が撮った個性的な作品を一作品一週間ずつレイトショー上映するというもの。
21時開始のレイトショーってのがまたイイですよね。一杯ひっかけてから、酔い覚ましの濃いコーヒーを片手にエロ映画鑑賞なんてちょっとオツじゃあないですか。

てなわけで、ほろ酔い加減の私が今回観たのは、瀬々敬久監督の『愛するとき、愛されるとき』。
タイトルを見ただけだとフランス映画みたいだけど、ピンク映画の鬼才・瀬々監督入魂の作品だけあってテーマは“露出プレイ”。カラミも多いし、股間にボカシなんか入っちゃったりもしてるわけで、中身はしっかりエロです(笑)。でも、もちろんセックスだけを描いているわけじゃありません。

海辺の田舎町で働く平凡な事務員・祐子。だが彼女には「魔法使いゆこりん」のハンドルネームでブログを書くというもうひとつの顔があった。彼女はある日、不倫相手との露出プレイ写真をネットにばら撒かれた妹を助けるため、犯人らしき男と会うことになる。妹の安全と引き換えに野外でHな写真を撮られるうちに、祐子は快楽を感じ始め、カラダも心も解放されていく……。

(c) Legend Pictures

こうあらすじだけを書くと、ヒロインは投稿雑誌に出てくるような“露出に興奮する性癖を持った女”だと思うかもしれないけれど、この映画はそんな単純なものじゃない。
佑子の暮らす海辺の町は、東京からやってくる海水浴客の男たちが夏の間だけラブアフェアを楽しんでいく通称“ヤリ逃げの町”。
そんなさびれた町で、若くして認知症になってしまった父親の面倒をみながら、ブログの中にもう一人の自分を見出して暮らす真面目な姉(江澤翠)。
姉とは反対に、愛らしく性的にも奔放な妹(晶エリー)。
株で借金を作りサラ金の取り立てに怯えながら、夢中で野外露出写真を撮る男(河合龍之介)。こいつはほんとにダメな奴で、佑子の心をかき乱しておきながら、結局露出写真をネタに金を要求したりする。けっこうリアルでヘビーな物語なんですよね。

セックスも恋愛も生活の一部。かっこいい面ばかりじゃない。
一瞬の高揚感の後には、ボケた父親や、妹への嫉妬や、借金や、うまくいかない日常が待っている。
でも、その高揚感だけが人生捨てたもんじゃないと思わせてくれることもある。なんとか毎日をやっていく糧になる。
たとえそれが、人から見たら笑っちゃうような野外オナニーや、田舎道での露出や、さびれた海の家に忍びこんでするセックスでも。

話が進むにつれて、乳がんで死んだ母親が不倫をしていたことや、妹の露出プレイ写真をばら撒いたのが佑子自身だったなんてこともわかってきます。
母親や妹と違い、女として見られるチャンスのない佑子。彼女にとって露出とは、誰かが自分の存在を息を飲んで見つめてくれることだったんでしょうね……。
ああ、わかる。わかるよその気持ち! 田舎暮らしのアラフォー女には痛いほど!!(泣)
ハッピーエンドといえるのかどうかよくわからないまま、それでもひとときのやすらぎを残して終わるラストシーン。すっきりするようなしないような、切ないようなふっと酔いが覚めるような……。でもそれが性愛ってものなんだろうなあ。
もう上映期間は終わってしまったけれど、殿方より女の人に観てもらいたいと思いました。

初日ということで、運よく監督・出演者による舞台挨拶を見ることができたんですが、それによると撮影期間は4日間、なんと出演者も出来上がった作品を見るのは今日が初めてだったと聞いてびっくり。さすがピンク映画仕込みのバイタリティ。

(c) Legend Pictures

なんでも、この「LOVE&EROSシネマ・コレクション」では作品対抗の観客動員レースなるものを実施しており、一週間という上映期間中にもっとも多くの観客を集めた作品の監督には、100万円の賞金が授与されるとか。
紙相撲好きの老人と若い女性ヘルパーの恋を描いた『老人の恋 紙の力士』も面白そうだし、AVデビューを控えた大物女優が出演する『島田陽子に逢いたい』も気になるところ。そしてやっぱり個人的には、低予算と短いスケジュールで頑張っているピンク映画系の監督にも頑張って欲しいなんてことも思ってしまう。
まあ、監督や出演者のネームバリューを考えると、どうしたって内田春菊原作/監督の『お前の母ちゃんBitch!』が本命なのは間違いないけど、これだけいろんなタイプの作品が揃っているんだし、もしかしたら意外な結果が待っているかも……。
最終日11月5日には結果発表と表彰式も予定されているそうなので、興味のある方は是非足を運んでみてください。

文=遠藤遊佐

「愛するとき、愛されるとき」
(c) Legend Pictures
監督=瀬々敬久
脚本=佐藤有記
出演= 江澤翠/河合龍之介/晶エリー/志賀廣太郎/吉岡睦雄/伊藤猛

配給=アルゴ・ピクチャーズ

2010年|119分|邦画|日本|

SISLEY+東京テアトル+レジェンドピクチャーズ
Love&Eros CINEMA COLLECTION

開催日時 : 2010年9月25日(土)〜11月5日(金)
監督:内田春菊 石川均 瀬々敬久 児玉宜久 いまおかしんじ 伊藤一平
宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
制作・配給:レジェンド・ピクチャーズ

2010年/日本/各70分以上予定/カラー/HDV
(c)レジェンド・ピクチャーズ

会場・問い合わせ先=
東京・新宿 『テアトル新宿』
〒160-0022
東京都新宿区新宿3−14−20 新宿テアトルビルB1
電話 03-3352-1846

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遠藤遊佐(C)花津ハナヨ
(C)花津ハナヨ
遠藤遊佐 AVとオナニーをこよなく愛する三十路独身女子。一昨年までは職業欄に「ニート」と記入しておりましたが、政府が定めた規定値(16歳から34歳までの無職者)から外れてしまったため、しぶしぶフリーターとなる。AV好きが昂じて最近はAV誌でレビューなどもさせていただいております。好きなものはビールと甘いものと脂身。性感帯はデカ乳首。将来の夢は長生き。
遠藤遊佐ブログ=「エヴィサン。」
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10.10.24更新 | レビュー  >  映画
文=遠藤遊佐 |