こころの傷に特効薬、
ありますか?
(c) 2008 Laboratory X, Inc.
『精神』
監督・撮影・録音・編集・製作=想田和弘
カメラがじっと目を凝らす。固く閉ざされていた精神科の扉が開く――。『選挙』の想田監督が再びタブーに挑んだ観察映画第二弾!
2009年6月13日、シアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー!
ありますか?
(c) 2008 Laboratory X, Inc.
『精神』
監督・撮影・録音・編集・製作=想田和弘
カメラがじっと目を凝らす。固く閉ざされていた精神科の扉が開く――。『選挙』の想田監督が再びタブーに挑んだ観察映画第二弾!
2009年6月13日、シアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー!
(c) 2008 Laboratory X, Inc.
想田和弘監督の“観察映画”第二弾『精神』がいよいよ公開される。
想田監督は前作の『選挙』にてベオグラード・ドキュメンタリー映画祭グランプリを受賞。また60分短縮版が約200カ国でテレビ放送され、2009年には米国放送界の名誉であるピーボディ賞も受賞。ドキュメンタリー映画監督として確固たる力を示した。そんな彼が選挙に続いて選んだ題材は人間の精神だった。
現在日本で精神病の患者数は300万人を超えていると見られる。また国内自殺者数3万人中、うつ病等が原因とされるものは18パーセントを占めており、この国が抱える社会的な問題に真正面から向き合った題材といえる。
前作の『選挙』はいわゆる落下傘候補に密着し、選挙活動、そして選挙結果までを追ったドキュメンタリーだった。その過程に盛り込まれる人間味溢れる描写はユーモアとペーソスに満ちており、そしてまた日本の風俗の奇妙な一面を鮮やかに映し出して、ドキュメンタリーとはいえ娯楽性の高い作品だった。
しかしこの『精神』には前作のようなユーモアはない。もちろん明るい場面はある。だがそれはカメラの前の人物が笑っているだけで、監督が恣意的な編集の結果として示すユーモア表現とは異なるものだ。
『精神』の舞台となる外来の精神診療所。古い民家を利用しており待合室は畳敷きだ。皆が談笑している風景はアットホームな雰囲気さえ感じさせる。だがここは精神診療所である。そのことに驚いた自分は、すでに差別的な視線を持ち得ていることを知る。
監督は作中、カメラを向けた人物から逆に尋ねられる。この作品の制作を志した動機についてである。彼は答える。健常者と精神障害者の間にある見えないカーテンを取り払って、向こう側を見たいと。
この映画は精神障害者たちの姿を、リスクを負うことのないスクリーン上にて眺める映画だ。ドキュメンタリーであるが故に批判が起こりうることも否めない。実際に撮影を拒否される方も多かったという。
だが監督は、出演者に誰一人としてモザイクや声の加工などの修正作業を施さなかった。その条件に同意してくれる人だけにカメラを向けた。修正を施すことでひと目でわかる“精神病患者”のレッテル貼りを避けたのだ。
カメラの前では、患者と医者、そして診療所のスタッフや、時折差し込まれる町の風景や野良猫、そして撮影しながら自ら声を発する監督自身でさえも等価な存在として映し出される。そして私たちも彼らと同じ存在だと気付いたときに、見えないカーテンは取り払われるのかもしれない。2時間以上に及ぶ上映中、ふとそんな感慨に至った。
しかし監督は私たちに罠を仕掛ける。ラスト・シークエンスで私たちは試されることになる。健常者と精神障害者の間に渡された見えないカーテンについて、監督は再び問いかける。我々の間に横たわるカーテンは、一体誰が据えつけたのだろうか。
“観察映画”である本作は、前作同様にナレーションもテロップによる説明、そして音楽さえも一切使われていない。観客はスクリーンに示された映像を観察し、それぞれに異なった感慨を持つことができる。こうした手法が前作以上に適合した本作『精神』。この優れた映像作品を一人でも多くの方に体験していただきたく思う。
(c) 2008 Laboratory X, Inc.
文=編集部
『精神』
2009年6月13日、シアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー!
(c) 2008 Laboratory X, Inc.
監督=想田和弘製作補佐=柏木規与子
出演
「こらーる岡山」のみなさん、他
配給・宣伝=アステア
2008年|アメリカ・日本|カラー|135分|デジタル上映(16:9/ステレオ)|ドキュメンタリー
関連リンク
映画『精神』公式サイト
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