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シマフィルムと柴田剛(『おそいひと』)が贈る超怪作が遂に公開決定!!
身体障害者が殺人を犯す衝撃作『おそいひと』を製作したシマフィルムと柴田剛監督が再びタッグを結成、霊的な神話の名残がある“京都”を舞台に、地球侵略を目論む妖怪と人間の戦いをハイテンションに描き出す。「オカルト」「SF」「陰陽道」「格差社会」「少年犯罪」「報道被害(メディアスクラム)」「レベル・ミュージック」etc……様々なモチーフが混在する驚愕の映像世界、その内容とは!?ポレポレ東中野にて、絶賛公開中
2011年3月より京都シネマ、シネマート心斎橋で公開決定
主演は(昔、高円寺までライブを観に行ったらステージでゲロを吐いていた)オシリペンペンズの石井モタコ。監督は、前作『おそいひと』で全国のヒマな映画ファンを唸らせた柴田剛。そして音楽にneco眠る、ELEKTRO HUMANGEL、ABRAHAM CROSSなど、昼から街をうろついていれば1度はすれ違っていそうな奴らが大集合。もはや観ただけで職を失う危険性すら漂う、究極の無職映画が誕生したのだ!
石井モタコの役どころはDV気味の彼女を持つヒモ。登場シーンで早速「やったね! 下着姿の女性登場!」と思っていると、振り返ったのはブリーフをはいた石井モタコだったという、ルーズな生活感をかましてくれる。
相棒は『バチアタリ暴力人間』(監督:白石晃士、笠井暁大)の山本剛史演じる、口が達者なホームレス。2人はスジ者にしか見えないスキンヘッド陰陽師・安倍晴明の子分にされ、京都の街を守るため悪霊と戦う。
悪霊は黒柳徹子が屋久杉になったような凄いビジュアルなのだが、その実体は今の日本を覆う「空気」と言っていいだろう。コンプライアンスを重視し、健康増進に努め、マナーからルールへ変わり、整列乗車に協力して、誰も彼もが不機嫌そうなツラで、マスクをしてぎゅう詰めの満員電車に乗り込む……、そうあの雰囲気が悪霊なのだ!
市役所の職員が公園や駅前からホームレスを排除する代わりに、この映画では分かり易く金属バットを持った中学生が日々ホームレス狩りに励んでいる(悪霊の仕業)。仕事やめたいけどやめられない、と言って泣き出す彼女もいれば(悪霊の仕業)、仕事のミスに怒り狂う顧客もいる(もちろん悪霊の仕業)。
悪霊はTV局を使って勢力を拡大し、そこには芸能活動の傍らホームレス狩りにいそしむカリスマ中学生も出てくる。芸能リポーターは「憤激リポート」を繰り返し、叩ける奴は心ゆくまで叩かれる。
最近の世間のルール重視と裏腹に誕生した「叩き」を裏テーマに据えているのも、この映画のおもしろいところだ。ちょっと前なら朝青龍や、エリカ様だろうか、少しでもはみ出た人間は徹底的に叩かれ、バッシング報道にさらされる。私人であっても関係なく、ブログに「問題」があれば、徹底的に糾弾され炎上する。いつの間にか始まったこの世間による私刑の裏には、悪霊の手先となった「名無しさん」達がいたのだ!
そこで、安倍晴明が昼からぶらぶらしているヒーマニストを使って世界にバランスを取り戻すのだが、そこに第3の刺客、危ない赤軍派みたいな青年が出てくる。彼は元少年犯罪者なのだが、彼が自分の「罪と罰」にどうケリをつけていくのかが、この映画のもう1つの柱といえば柱になっている。とにかく彼が貧乏臭くて、昭和な感じなのがいい。彼の保護司として、前作『おそいひと』の主人公スミダさんが出て来るのもうれしかった。
それにしても、とにかくこの映画は観ていて筋がよく分からない。というか、今チラシを見ていたら、悪霊だと思って観ていた加藤the catwalkドーマンセーマンは「長年地球征服を目論んでいた宇宙の妖怪」で、安倍晴明も「密かに地球に降り立ったギャラクシー・フォースのリーダー」だったらしい。ってそんなの観てても全然分かんねーよ! いや! 分からなくていいのです。
モタコの相棒のホームレスが公園で演説をしている時に集まってくる若者たちの顔。あの反社会性がジャージャー流れ出すツラ構えを眺めているだけで、「ああ、日本もまだ捨てたもんじゃないな」という気持ちになってくる。今の日本に必要なのはヒーマニティー、やっとそういう映画が日本にも出現した。文句なしの無職文部省推薦映画。全てのヒーマニストは上下ジャージで映画館に駆けつけて欲しい。
文=ターHELL穴トミヤ
『堀川中立売(ほりかわなかたちうり)』
ポレポレ東中野にて、絶賛公開中
2011年3月より京都シネマ、シネマート心斎橋で公開決定
関連リンク
映画『堀川中立売』公式サイト
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