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(C) 442Film Partners

WEB SNIPER Cinema Review!!
すずきじゅんいち監督が明らかにする「知られざる日系史」
第二次大戦時、日系人だけで構成された442連隊は、父母の祖国、日本と戦う苦悩だけでなく、アメリカの中で人種差別と戦い、しかしその規模と期間ではアメリカ軍史上最も多くの勲章を受けた部隊として歴史に燦然と輝いている――。多くの人に知られているとは言い難い日系人部隊、442連隊について、多くの貴重な証言を元にその歴史的事実を生々しく蘇らせたドキュメンタリー。

新宿K'scinema、横浜ニューテアトルにて公開中(全国順次公開予定)
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第2次世界大戦中、「アメリカに住む日系人が強制収容所に入れられた」というのは知っていたけど、「アメリカ軍として戦った日系人がいた」というのは知らなかった。しかもその活躍は米軍史上に残る、偉大なものだったという。この映画はとにかく彼らへの絶賛、賞賛で埋まっている。彼らがいかにすごいか、半端じゃないヒーローか……。多くの人が興奮気味にまたは感情を込めて語り、それを重厚なナレーションと悲しいBGMが盛り上げる。ドキュメンタリーでそこまでされると「プロパガンダ映画なんじゃねえの!」と警戒したくなるのだが、今年彼らへ贈られた勲章を見てみれば、その評価は本物なのだと分かるはずだ。

今年8月、米国議会はアメリカ最高の勲章である「議会金賞」を第2次世界対戦当時の日系人部隊に対し贈ることを決め、オバマ大統領もそれを承認した。歴代受賞者を見てみれば「ジョージ・ワシントン」「マザー・テレサ」「マーティン・ルーサー・キング・ジュニア」「ロナルド・レーガン」……と、どれも半端じゃない名前ばかり。そんな勲章を贈られた彼らは、確かにアメリカン・ヒーローに違いない。
「敵性国民」だった彼らの評価は、いかにしてそこまで変わったのか。映画は彼ら自身の証言と、記録フィルム、さらには彼らが解放したイタリア・フランスの村を訪れる映像を交えて明らかにしていく。監督は、2001年にアメリカに移り住んだ日本人。カルフォルニアの青い空をバックに、今ではおじいちゃんとなった日系2世達によって、壮絶な話が語られる。


(C) 442Film Partners


日本軍の真珠湾攻撃と共に、日系アメリカ人は「敵性国民」として財産を没収され、強制収容所に入れられた。一方ハワイでは、軍から日系人だけが抜き出され、新たに日系人部隊が再編される。そこに本土の収容所から志願した部隊も加わり誕生したのが「442日系人部隊」だ。彼らは主にヨーロッパ戦線へと送られ、ナチスドイツ軍と戦った。

ハマコーみたいな顔のダニエル・イノウエ氏が語る「私たちは消耗品として使い捨てにされる運命でした」という言葉が生々しい。日系2世は生まれも育ちもアメリカの、いわば完全なアメリカ人だが、「親が元・日本人」ということで収容所に入れられた。映画には、収容所内で「ハンスト」をして刑務所に入れられた人たちの話も出てくる。志願した者も複雑な心境だったはずだが、彼らはそれを自分たちの価値を示すチャンスと捉え、差別も含めて全てを受け入れる道を選んだ。
彼らはやがて「当たって砕けろ」を合い言葉に、次々と目覚ましい戦果を挙げていく。その内容たるやまるでマンガのような凄いエピソードの連続で、彼らについて語る歴史家はみな「信じられないほど…」という前置きを使う。
彼らはなぜ逆境を跳ね返し、抜きん出た活躍をすることができたのか。やがて映画は、彼らがアメリカ人でありながら、なんとも「日本的」な面も持ち合わせていたことを明らかにする。戦場に行く時に一世である親から贈られた言葉は、いわく「ドリョク」「シンボー」「ハジ」「ガマン」……。そんな言葉のもと犠牲を恐れず、時にはバンザイアタックまで繰り出す彼らは実は「日本軍」そのものだった!というのがこの映画の一つの肝なのだが、それがそのまま「チャンスをつかみ成果を出せば、人種に関係なく認められる」という古き良きアメリカン・ウェイに直結しているのが面白い。
当初ははぐれものと「収容所出身者」の寄せ集めだった彼らは、ついには全米で最も多くの勲章を受け、終戦時、唯一トルーマン大統領から直接出迎えられる部隊となる。敵性国民からヒーローへ、彼らは日本の教えを糧にアメリカン・ドリームを実現させたのだ。


(C) 442Film Partners


劇映画ならそこで終わるが、これはドキュメンタリー。「442部隊」の活躍は、同時に信じられないほど高い死傷率と裏腹だったと明かされる。その輝ける戦績の中身は、生の肉体を傷つけ、傷つけられる陰惨な経験の連続だ。
田舎のじいさんが「郵便局は、この先のタバコ屋を曲がって」と話すのと同じトーンで、「14歳のナチス兵を殺した」話や「焼けた砲弾の破片が身体をグルッとえぐった」話が続く。最も忘れられないのは「どうして今まで話してくれなかったの」と涙ぐむ娘に向かって答えた、「戦争の経験は、その場で人を殺した人間以外には誰も分からないんだ」という台詞だ。笑顔さえ浮かべて語る老人たちの奥には、今まで家族とさえ共有できなかった記憶がある。
自分が死にかけた経験や、人を殺した感触。ある人は戦争が終わってから20年間悪夢を見続けたと語る。彼らを讃える勲章や、後生の歴史家の賞賛に比べ、本人たちの苦しみは孤独で、淡々としたものだ。

個人的には、努力、辛抱、恥、我慢という言葉は聞いているだけで吐きそうになる。これからの日本人は無気力、ぶらぶら、目立ちまくりの、やりまくりで行くべきだし、武士道より断然プッシー道だ。しかし日本からアメリカに渡った人たちの子孫が、アメリカから見捨てられ、それでもそれを受け入れて犠牲をいとわずアメリカのために戦った、という歴史には胸をえぐられる。
今の日本人が忘れてしまった美徳があるとして、彼らが見せてくれたものは何だろう? それを武士道とか大和魂とか、生活と関係のない、スローガンみたいな言葉で呼びたくはない。でも彼らは健気だった。それは昔の日本人にはあって、今は忘れられているものかもしれない。それは、映画を観た人がそれぞれ判断してみてほしい。そしてその奥には戦争のもたらす孤独と、今の世界は過去の犠牲の上にあるという、普遍的な悲しみがあった。

文=ターHELL穴トミヤ

『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』
新宿K'scinema、横浜ニューテアトルにて公開中(全国順次公開予定)
(C) 442Film Partners
原題=442-LIVE WITH HONOR, DIE WITH DIGNITY-
監督= すずきじゅんいち
出演= ダニエル・イノウエ、スティーブ・シミズ、ネルソン・アカギ、ジョージ・サカト、ジョージ・カナタニ、テッド・ツキヤマ、ローソン・サカイ

配給=フィルムヴォイス

2010年|1時間37分 |日本/アメリカ|カラー|モノクロ|ステレオ

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映画『442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊 ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。 http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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