WEB SNIPER Cinema Review!!
『東京思春期』シリーズ最新作
甘詰留太原作の人気コミックを待望の実写化!!
『ヤングアニマル』誌の連載開始時から“高校生のSMレッスン”というセンセーショナルな内容が話題に。コミックで描かれた過激なシーンも盛り込みながら、ナナとカオルのピュアな純愛模様を描きだす。ボンデージ姿、首輪での散歩、禁断の緊縛、さらに……。ステップアップしていく2人の秘密の遊戯。青春の甘酸っぱさが詰まった、青春純愛SM映画がいよいよ公開!!3月12日(土)より、渋谷ユーロスペースにて2週間限定レイトショー
美人でグラマーで生徒会副会長の優等生・ナナ(永瀬麻帆)と、落ちこぼれの童貞で趣味はSM(もちろん妄想オンリー)というカオル(栩原楽人)。まったく共通点はないけれど、お互いにもっとも近い異性。そんな二人が、ふとしたアクシデントから「息抜き」という名のSMプレイを始めたら――。
ムッチリボディのちょいM優等生、10代のピチピチボンテージ姿、プレイのときだけ立場が逆転する下剋上シチュエーション、そして極めつけは“微妙な距離感の幼なじみ”。どうですか、さあ萌えてくれと言わんばかりのこのラブコメチックな設定!
それもそのはず、原作は“高校生のSM”というセンセーショナルな内容で人気を呼んでいるヤングアニマルに連載中の同名マンガなのだ。
なるほど、言われてみればストーリーの端々に出てくる「そりゃちょっとムリあるんじゃないの?」という設定や、カオルのややオーバー気味な演技はそれっぽい。
まず、2人がSMプレイをするようになるきっかけというのがいかにもマンガだ。
SMに夢中で勉強しないカオルを心配した母親は、彼のボンテージコレクションを偶然会ったナナに預ける。するとそれを受け取ったナナは、どういうわけか“勉強の息抜き”にそのエッチなコスチュームを着てみるのである。すると都合よくボンテージの鍵がかかってしまい、途方に暮れたナナは助けを求めボンテージ姿のままカオルの部屋を訪れる。
子供の頃からナナに惹かれているカオルにしてみればこのチャンスを逃す手はない。鍵を渡すかわりにボンテージ姿を見せるようにと恐る恐る命令する。ナナは仕方なくそれを受け入れたものの、翌朝、久々にストレス発散してぐっすり眠れた自分に気づく。
カオルの前でなら、弱くてスケベな自分を見せられるナナ。
「ナナはもうすぐ自分には手の届かない遠くへ行ってしまう。俺にはもう時間がないんだ」とご主人様になる決心をするカオル。そして2人は誰にも言えない秘密の時間を共有することになる。
さて、こんなエロティックな設定にもかかわらず、本作の中でナナとカオルは最後までプラトニックのままだ。
高校生のSM恋愛映画というと、塩田明彦監督の『月光の囁き』を思い出すところだが、『ナナとカオル』はあそこまでドロドロしていないし、ガチじゃない。
カオルは「自分で首輪をはめるんだ」「ナナは変態だね」なんてS男っぽいことを言ってこっちをドキドキさせたりもするけれど、基本的にはヘタレでスケベで優しいごく普通の高校生。ナナとの駆け引きの最中に愛読のSM小説に出てくるハウツーを思い浮かべたり、プレイのために一生懸命準備をしたりするところは、むしろ『パンツの穴』的で清々しい。
とにかく直接的なエロといえば、ボンテージシーンでナナのお尻が半分見えるくらい。
ボンテージ着用、首輪をつけての散歩、公衆トイレでの言葉責め、そして深夜の運動場で行なわれる誰にも言えない秘密のプレイ。少しずつエスカレートしてはいくものの、セックスはおろかキスすらしないまま2人の“息抜き”は続いていく。
エロを期待して見始めたので正直ちょっと物足りない気もしたのだが、本作が「東京から世界中の愛すべき無器用な男子たち」に向けて発信される『東京思春期』というシリーズの一作だと聞いて、なるほどと思った。
花火大会、神社、深夜の運動場。2人のSMプレイにはそんなノスタルジーを誘うシチュエーションが次々登場する。ナナがカオルの母親から預かったボンテージを着てしまうという無理矢理な設定も、実は勉強の能率がなかなか上がらず担任教師から「思い切った気分転換」を勧められたからだ。生徒会活動と勉強に明け暮れる優等生。でもときにはバカなこともしてみたい。こんな気持ちはわからなくもない。
ナナが街中で緊縛される妄想をしながら涙を流すシーンは、思春期の少女が抱えるモヤモヤが一気に溢れだす瞬間だ。日々のストレスや不安を、羞恥プレイという刺激で浄化しているように見える。
観終わったあとは、「SMしてえなあ」じゃなく「高校生の頃に戻りたいなあ」という気持ちになった。
初々しくて繊細でもどかしい。やっぱりこれはSM映画というより青春映画だと思う。
文=遠藤遊佐
グラドル永瀬麻帆が初主演映画「ナナとカオル」で緊縛姿を披露!?
FLV形式 6.06MB 1分37秒
『ナナとカオル』
3月12日(土)より、渋谷ユーロスペースにて2週間限定レイトショー
関連リンク
映画『ナナとカオル』公式サイト
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