WEB SNIPER Cinema Review!!
へヴィ・メタル界の生きる伝説、満を持して、ついにスクリーンに舞い降りる!!
ロックンロールの殿堂入りを果たしている輝かしいキャリア。ヘヴィメタル界の帝王とも呼ばれるオジー・オズボーンの半生を追ったドキュメンタリー。ブラック・サバスとしての初期の逸話や名声、アルコール依存症に苦しみ、生活が破綻していったことなど若き日の体験が順を追って語られる。偉大なアーティストが宿した光と闇が、本人や子供たちの証言、またライブパフォーマンスの模様や数々の著名人たちへのインタビューなどを通して明らかにされる貴重な記録だ。シアターN渋谷ほかにて公開中!!
本作はそんな彼のぶっ飛びドキュメンタリー。彼の音楽を別にしてもこれがおもしろかったのは、とにかくそのぶっ飛び方がすごいから! 泥酔してフィンランドのTVに出ている彼の一時停止具合などは、今思い出しても笑える「人体の神秘」映像だ。本作で明かされるぶっ飛びエピソードたるや「最終的にはアリの列を鼻から吸いこんでいた」とか、モトリー・クルーと「キモいこと競争」を始めたらプールサイドでしょんべんをして、さらにそれを舐めはじめ云々……とか、まさに「伝説」の名に相応しいマンガ級のものばかり。
後年はそのあまりの悪行がたたったよれよれ具合がキャラ化し、「中毒患者のオジーおじさん」を楽しむMTVのリアリティ番組まで登場したのだが、彼はある意味そのぶっ飛び具合によって音楽性を越えた人気者になったともいえる。
しかし本作のプロデューサーは、彼の実の息子のジャック・オズボーン。そんな笑えるエキセントリック伝説も、その裏に潜む離婚や、父親の死、そして実の子供たちによる「学校から帰って来たら、お父さんがソファーでラリってて悲しかった」などのエピソードと一緒に語られることになる。
しかしオジー、全くもってハードな人生だ。やっとスターになったところで、行き過ぎた中毒でバンドからクビを宣告された彼は、さらに離婚、もうお終いかというところで、ソロアルバムを企画する。宣伝会議で鳩の生首を食いちぎったりしながらもギタリストを募集したところ、そこでやって来たのが、イスに座っていた彼が「俺は幻覚を見てるのか?」と思った程の超テクギタリスト、ランディー・ローズだった。彼と組んで出した復活ソロ・アルバムはいきなりの大ヒット。誰もが「終わった」と思っていたオジーは、ここで見事な復活を果たすことになる。
ところがその復活からわずか数年、相棒ランディー・ローズの乗ったセスナ機が墜落してしまう。ランディー25歳、落下した飛行機は消防車も救急車も来ないまま、オジーの目の前で炎に包まれ燃え続けていた。
彼は雑音だらけのラジオのように、年中酔っぱらってまともにコミュニケーションが取れないのだが、時々一瞬だけチューニングが合う瞬間がある。
劇中、真顔のオジー・オズボーンが「あんたは俺の異常行動の中でどれが一番常軌を逸した体験だったかばかり聞いてくるけど、俺にとってはランディーの死こそ、この世で最も常軌を逸した異常な体験だよ」とインタビュアーに怒っているシーンがあってハッとする。やっと最高の相棒を見つけたと思ったら突然その相手が消え去ってしまう。オジーが言いたいのは「異常なのはそんな事が起こる、この世界の方だ」ということで、しかしそれは古今東西ずっと繰り返されて来た悲劇、人生の不条理でもある。生まれてみたらクソ貧乏な家の失読症の子供だったり、バンドを組んで成功してみたら放り出されたり、言ってみれば彼の人生も不条理だらけだが、オジーはただのよれよれ中毒患者じゃない。人の何倍もその不条理に直面し、その全てに打ち勝って来たよれよれ中毒患者でもあったのだ。
後半には、なんと長年の中毒人生をついに克服した現在の彼が登場する。本作がハッピー・エンドなのはオジーがまだ生きているからで、彼が中毒を克服できたのには、彼の息子のエピソードがきっかけになっていた。
なにもない子供が、ロックスターになって、アル中になって、ヤク中になって、そしてついに普通の父親へと上り詰める。メチャクチャやってるとんでもないアホを眺めているうち、家族っていいなあと思ってしまう、本作はそんな不思議なぶっ飛びドキュメンタリーになっていた。
文=ターHELL穴トミヤ
オジーの息子ジャック・オズボーンが製作・企画を務め、
彼の目を通した父オジーの人生がつまびらかにされるドキュメンタリー!!
FLV形式 3.95MB 1分32秒
『オジー降臨』
シアターN渋谷ほかにて公開中!!
関連リンク
映画『オジー降臨』公式サイト
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