WEB SNIPER Cinema Review!!
『オペラ座の怪人』で知られる巨匠ジョエル・シューマカー監督の密室劇
宝石商のカイル(ニコラス・ケイジ)は美人の妻サラ(ニコール・キッドマン)、15歳の娘エイヴリー(リアナ・リベラト)と大豪邸で暮らしていた。が、ある日突然、武装した覆面の4人組が家に押し入ってきて......。金庫の中に秘められた謎、人間関係の複雑な絡み合いが緊迫感を増幅させるサスペンス・アクション!!6月23日(土)より、新宿バルト9他にて全国ロードショー!
この映画めちゃ面白いというわけじゃない! でも、家がすごいんだな。主人公、ニコラス・ケイジは宝石商を営み、超リッチな家に住んでいる。マイカーはポルシェで、帰った先には美しい妻(ニコール・キッドマン)にかわいい娘(リアナ・リベラト)。幸せを絵に描いたような人生を送っているんですが、その極めつけがこの家。
森の中の巨大な一軒家で、裏にはあざやかな芝生が広がり、それがそのまま大きな湖に繋がっていて、こういうラグジュアリーな生活は見ているだけで楽しい! こんな家に住んでみたいょ......。うらやましいょ......。それか、こんな家どうせ住めないからもう武装強盗に押し入られて、メチャクチャヒドい目にあっちゃえばいいょ......。などとルサンチマンが高まっていくんですが、そんな勝手な思いにバッチリ応えてくれるのが本作。何がいいってこの家が最後、全焼するんですね。
ニコラス・ケイジは典型的な「仕事男」で、どうやらめったに家に帰ってこない。たまの帰宅にニコール・キッドマンが手料理を用意しても、また急な商談が入って、夫は妻の心づもりに気づきもしない。あきらかにすれ違いがあるんですが、このニコラス・ケイジのファッションがなぜか、かなりの80's。特に眉間のところがつながったサングラスはレベルが高かったですね。あれが似合うのは、ニコラス・ケイジか、野田首相しかいない。いや野田首相がかけたら北朝鮮の指導者っぽくなっちゃう。やっぱり、安倍晋三ですね。それかニコラス・ケイジ。ちなみに彼、サングラスを外したと思ったら、今度はまたもや眉間のところで繋がった、金属フレームのメガネをかけてましたね。
そして、そこに武装強盗が突入してきます。するとこのニコラス・ケイジがやたら弁が立つ! もう口だけで、どこまで銃に対抗できるかという究極の戦いがここから始まる。銃を突きつけられながらも、そこでダイヤモンド・トリビアを披露しまくって、相手の動揺を誘っていく。「すべてのダイヤモンドは、個別に登録されてるんだ!」とか言って、本当かどうか知りませんけど「盗品なんか、絶対に売れないぞ! 二束三文にしかならない!」って、相手を自分のほうに引き込んでいく。さらには「一緒に組もう!」とか逆に強盗に提案して、中々のタフネゴシエーターなわけです。
武装強盗も撃っちゃったらそこで終わりなので、話を聞いてるとついつい時間が経っていってしまう。そのうち、突入してきたときは不気味な「覆面の一団」でしかなかった強盗集団も、それぞれの事情を持った1人1人にほぐれてくる。このつくりはうまかった。
本作で浮かび上がってくるのは、やっぱり強盗は武器だけじゃだめだということですよ。武器はあくまで抑止力。スマートに仕事をするためには、相手に言うことを聞かせるための話術が重要になってくる。そして本作はそれが「身の上話」なんですね。もうそれしかないのかってくらい「身の上話」推しでいってましたけど、もうおとなしく発言小町とかに投稿してたほうがよかったんじゃないか。しかも相手がニコラス・ケイジですからね。突然キレるし、当然話が通じるところで通じない! ここでもキレながら、チョッキにネクタイ、眉間のところで繋がった金属フレームのメガネなんで、おもしろかったですね。だんだん、強盗に同情すらしてくるんですが、ここで思い出すのは『イングロリアス・バスターズ』に出てきたナチの将校。家に上がり込んで牛乳を勝手に飲んでるだけで相手が泣き出していた、あの話術は見習いたい。プロを目指すなら、脅しも同時に勉強しないといけない! 彼らもニコラス・ケイジの家に押し入る前にナチの研究をしておけばよかった。
しかし、一方のニコラス・ケイジもなぜそこまで、頑に金庫を開けたがらないのか? その疑問が本作のもう一つのサスペンスになってくる。
ところで、このニコラス・ケイジの弁舌の巧みさと比較して本作、銃の弾着シーンがやたらとしょぼい。それから金庫のデザインが古い。なんか小道具系だけが急にコメディ感、違うテンションが漂っているんですが、そこだけ『モンティ・パイソン』のスタッフが担当したんでしょうか。特に、金庫の既視感はすごいですね。なんか1970年くらいから変わってないみたいなデザインでしたけど「あれ、もしかして昔の『007』シリーズのセットを使い回してませんか?」みたいな。あれは映画会社のセット倉庫の奥から持ってきたのか、それとも長老っぽい人が「ワシが作る!」とか言って誰も止められなかったのか......。
ウディ・アレンと躁鬱で表裏一体の、アメリカ型ヒステリー男。突然キレるニコラス・ケイジを観たい人におすすめの一本ですね。
文=ターHELL穴トミヤ
2大スター、ニコラス・ケイジとニコール・キッドマンが初共演!
密室で繰り広げられるスリリングなドラマとは......
FLV形式 4.28MB 1分43秒
『ブレイクアウト』
6月23日(土)より、新宿バルト9他にて全国ロードショー!
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