WEB SNIPER Cinema Review!!
誰もが一度は経験する、30代のスタートライン!!
30歳になっても恋人が出来ずに焦っている青年が銭湯を舞台にタイムスリップを繰り返し、その都度挑む合コン→大失敗!を経て自分を見詰めなおしていくラブコメディ。主演は映画「タナトス」、ドラマ「花ざかりの君たちへ イケメン☆パラダイス2011」の徳山秀典。監督は『戦国BASARA-MOONLIGHT PARTY remix-』の松田圭太。12月21日(金)までシネ・リーブル池袋にて公開中
12月22日(土)より大阪シネ・ヌーヴォXにて公開
主人公は、ついに30歳の誕生日を迎えようとしている、元・有名ゲームデザイナーの男(徳山秀典)。地元でつるんでいるボンクラ3人組とともに、彼は冒頭、銭湯につかっている。今日は友達の協力のもと合コンを成功させ、「30代最初の日を、あげぽよに始めよう!」という魂胆なのだ。ところが、そんな彼が時間の狭間に落ちてしまう!(エー!?) 誕生日の朝から、コンパ終了までを何度も繰り返すループから逃れられなくなってしまうのだー!(ナントー!)
主人公が元ゲームクリエイターというだけあり、本作はあたかもアドベンチャーゲームのように進んでいく。1日のなかで取ることができる行動を何度も選び直し、正解にたどり着かなければこのループから逃れることはできない。彼は果たして、無事30代を始めることができるのか!
ということで観客は何度も合コンを体験することになるのだが、いいじゃないですか合コン。合コンをしたい。この映画、前売り券を男性用と女性用に分けて売るというのはどうだろうか。特設サイトにチケット記載のパスワードを入力すると、同じ日にこの映画を観に行くシングル異性と出会えるという、マッチングサイト的な要素をからめるのだ。または当日券に「ロビー3番の席」とか男女別に書いておいて、終映後にマッチングするのでもいい(これなら特段の準備も要らない)。いやぜひそうすべきだし、今からでも遅くはない。いやもうこの映画でなくてもいい、誰かこのアイデアでラブコメの前売りを売るべきだし、いわば街コンならぬシネコン。これはイケるのではないか、金になるのではないか。いいなと思った宣伝さん、いつでも連絡してください!(お金の相談をしましょう)
本作で銭湯から合コンへ、銭湯から合コンへ、とひたすら繰り返される時間は、思春期ともいえるし、モラトリアムといってもいい、人生のある時期のメタファーになっている。銭湯は小学生的世界、性に目覚める以前の「男子」の世界であり、一方、合コンはといえば、仕事、人生観、持って生まれた見た目など、すべてを他者によって価値付けされる幼年期の終わりだ。その間を正解にたどり着くまで何度も繰り返す本作は、中高大、そして就職活動と、選択肢において間違いを許されないままに1度きりの時間を生きる、現代の若者たちの欲望を的確に見抜いているといえる。
主人公は、その人格の統合性において非常に「地に足がついていない」ものを持っていて、それは彼が「元・日陰の存在」だったというところに端を発しているようだ。ゲームクリエイターというクラスチェンジで見事生まれ変わったかのように見えた主人公だったが、本質的には自分が「間違えているのではないか」という不安にいつもおびえている。だから彼は何かをする時、本能ではなく、反射でもなく、理性で考えて一番正解らしきものを選びとる。友達関係であっても、街で偶然出会った人との関係であっても、そのすべては打算の結果なのだ。
一方で、彼の3人のボンクラ友達はどうだろう。「筋肉は裏切らない」といつも身体にオイルを塗りこんでいる男(高野八誠)。合コンの司会進行が得意な、無精ヒゲの男(須賀貴匡)。お金持ちのボンボンで、変な育毛剤にハマっている男(佐藤永典)。この映画の中では、彼らを観るとホッとする。
主人公の、最適と判断したキャラクターに切り替える生き方は、アドベンチャーゲームとなってしまった1日をトライアンドエラーで進んでいくには適している。しかし、観ていて苦しく、寂しくなってくるものだ。となれば、主人公にとっての救い、つまり時間のループからの脱出と、観客が感じる寂しさからの救い、この2つはねじりあわされ、ひとつの糸となってエンディングに向かっていくのが必然となるだろう。それは主人公による自身の人生への信頼の回復になるだろうし、そこで本作が提示する正解こそが「愛」ということになっている。ではそれは具体的にはなんなのか。
しかしそれは置いておいてふたたび合コンの話に戻ると、怖い話をしたあとに女性陣が「キャー!」「こーわーいーんですけどー!」とこわいリアクションに励んでいるのに合わせ、怖がらせた本人がフラットな声で「ねー、怖いねー」と合わせているシーン。あのリアルさには舌を巻いた。あの瞬間こそもっとも合コン的、かつ現代的瞬間ではないだろうか。予定調和の空々しさを、流さない、かといってあげつらいもしない、まるで仕事ででもあるかのようなコミニュケーション。しかしそれこそ現代の合コン的社会と良心との間にひとすじの清水のように流れる、ぎりぎりの妥協線なのだ。ああ、この映画を作った人たちはたくさん合コンしてるに違いない、合コンを日々エンジョイしいているに違いない。そんな思いに打たれたシーンだった。
ちなみにこの映画の舞台は、吉祥寺。主人公の実家の銭湯は「風呂ロック」などの音楽イベントで有名な弁天湯で、移動シーンではハモニカ横町なども出てくる。吉祥寺で合コンしたい。
文=ターHELL穴トミヤ
「もし人生をリセットすることができたら......」
なかなか大人になり切れない彼が遭遇した、終わりのないループ現象。
『パーティは銭湯からはじまる 』
12月21日(金)までシネ・リーブル池袋にて公開中
12月22日(土)より大阪シネ・ヌーヴォXにて公開
関連リンク
映画『パーティは銭湯からはじまる 』公式サイト
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