WEB SNIPER Cinema Review!!
アカデミー賞監督が挑む、リアル感染パニックホラー上陸!!
昔ながらの海辺の町クラリッジ。ある日、2人の学者が湾の水に高濃度の毒性があることに気づくが、パニックを恐れた市長はその警告を握り潰す。そして独立記念日、湾に疫病が発生し、お祭りムードに沸き返る町は一変した。人々は突然変異した寄生虫の餌食にとなり、地獄への道を突き進む。5月31日(土)より、新宿シネマカリテほかにて感染開始!
全国順次拡散!
アメリカの片田舎でなぞの奇病が発生する。まず肌に疱瘡が発生し、やがて......血まみれになって死亡する! プロデューサーは「こいつの映画、いつもなんか家の中で何かが発生してばっかじゃねーか! うわー出た!」というジェイソン・ブラム(『パラノーマル・アクティビティ』シリーズなど)。対する監督(兼共同プロデューサー、兼脚本)は「この人の映画って、大体『洋画 ヒューマン』のとこにあるよね」というバリー・レヴィンソン(『レインマン』『グッドモーニング, ベトナム』など)。その結果、こんどは身体の中で目に見えない何かが発生する映画が完成したーっ!?(一体なんでーっ!? それは誰にも分からないー!? 強いて言うなら夏だからーっ!?)
本作は「その町をなんとか生き延びたレポーターが、自分の体験を証言する」という体裁で進んでいく、疑似ドキュメンタリー形式のパニックもの。ただし「大勢の人間が叫びながら逃げまどう」タイプのパニックじゃなくて、これはなんか人気のないビーチでレポートしていたら、どこかで人が絶叫してない? なんかそんな声が聞こえない? みたいな、じわじわくるパニック......。
魚のエラに寄生した虫が激きもちわるいし、生物学者の水死体のリアルさがキツい本作にあっても、一番のみどころはこの、パニック感のゆっくり機能してくる感じだーっ!? そもそもパニック映画というのはなにがおもしろいのか。それは日常が変容していくサマが見られるからで、そのためには日常の表現、言い換えれば「多くの人が無意識のうちに当然だと思っているもの」をいかに見つけるかが大事になるーっ!?
『パラノーマル・アクティビティ』なんかは、それを「ハンディカムカメラ」に見いだした。みんなが見慣れた家族ビデオの映像を逆手に取って、手ぶれしてたりとか、カット割りがない感じとか、よくある壁紙とか、そんな見慣れた質感のなかに、勝手に開閉するドアが映り込んでくる。その異物の侵入が「ホラー」になっていた。
いっぽうの本作はおなじみ、ハンディカメラを始め、監視カメラ(タイムコードが入っている!)、パトカーの車載カメラ(映像のなかに車体番号が入っている、この既視感!)さらにイマいところでiPhone、スカイプ、なんかも使って日常を変容させ、パニックをあおってくる。「私のお腹になんかがいるの!」と言いながらティーンが同級生に送る携帯動画には、再生がおわったあと再生停止ボタンが出てくる。このデザインの既視感がクる! さらには、湾に入ってくると大量のゴミが浮いてたりという、見知った状況への違和感の挿入。それらが重なって、じわじわとパニックをあおる!
悲劇の舞台となる町の市長は、パニック最大の戦犯。「市民に混乱をもたらしたくない」として町の携帯基地局を封鎖し、州兵に出口を封鎖させ、いっぽうで非常事態宣言。そんな市長が「部下と連絡が取れないんだ......」とぼやく保安官のパトカーで視察に出る......。そこでなにを目撃したら一番ショックがデカいかーっ!? その一部始終をパトカーの車載カメラは目撃していたーっ!? 警察官が警察として行動しない、これもまた「無意識のうちに当然だと思っていることが変容する恐怖」の典型的いち演出なのだーっ!?
はたまた街の医師がCDC(アメリカ疾病予防管理センター)に緊急事態の指示を仰ぐ。最初は待合室に30人、やがて60人、原因不明の感染患者がどんどん増えていく。さらには舌の半分ない人間がいる、患者の足を切断した、その状況も時を追って異常になる。そのやりとりを、あくまでプロとして冷静にやりとりする、これもまた日常と異常の華麗なるミックスなのだーっ!? そこでCDC職員の顔がひきつる、その一瞬の演出が、パニック映画的にはたまらないーっ!?
ストーリーが進むにつれ明らかになってくるのは、どうやらこの恐ろしい事態は、「水」を媒体として広まっているらしいということ。そこで周りを見わたせば、そこらじゅうに水があふれている。庭への散水、プール、公園の噴水。こうなると、「じゃあここ風景押さえときましょう」みたいなちょっとしたカットも全部、思わせぶりな不吉なものに見えてくる。その瞬間から、日常風景が全部フリになるーっ!?
しかしこのパニック映画をタンクトップの女の子と観に行った場合、たとえば『ピラニア3D』だったら「うわー!」と叫んで、さっと胸に手をのばして揉むことができる。でも、この映画のじわじわした恐怖でどうセクシャル・タッチングをすればいいのか。ここは直球、観終わった後に「僕も君に寄生したいな」と伝えるのが一番という結論になりそうだ、というところで今回は筆をおきたいとおもうのである。
文=ターHELL穴トミヤーッ!?
それは知らぬ間に拡散し、あなたの体内に潜んでいる――
『ザ・ベイ』
5月31日(土)より、新宿シネマカリテほかにて感染開始!
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