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(C)2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits reserves.

WEB SNIPER Cinema Review!!
フランス映画祭2014上映作品
フランスの北東、ノルマンディ地方で畜産業を夫婦で営むグザヴィエ(ジャン=ピエール・ダルッサン)とブリジット(イザベル・ユペール)。学生時代の恋が叶って一緒になったふたりだが、いまは倦怠期にある。そんなある日、プリジットは隣家で開かれたパーティで25歳の魅力的なパリジャン、スタン(ピオ・マルマイ)と出会い、密かに胸のときめきを覚える。気持ちを抑えられなくなった彼女はとうとう夫に嘘をつき、単身パリへ向かうのだったが......。

2015年4月4日(土)より、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA(オープニング作品)他全国ロードショー 
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(C)2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits reserves.

「パリでアヴァンチュール」する映画は、パリと一夫一妻制が地球上に存在する限り、これからも作り続けられる。でもその細部は時代にあわせて日々、新しくなっていくはずだ! 例えば本作、イザベル・ユペール演じる奥様の歳下アヴァンチュール相手はアメアパの店員。なんとも、現代パリあるあるな感じではないか! 
そして背景に登場する日本人観光客の描写。長らく「背広にメガネで写真を撮るヤツら」だったそのキャラ設定は、最近「飯の写真を撮るヤツら」(この描写がどの映画で出てきたのか、その肝心なところがどうしても思い出せない! 見かけた方ご一報ください。確かに俺は見たんだ!)へとアップデートされ、さらに本作では「いつもマスクをしているヤツら」になっている。これぞ2015年、最新形の日本人あるあるではないか!! アメアパはもちろん、マッサージはべトナム系だし、果物売りはインド人だし、パリのグローバル化も映しつつ、しかし本作、なにより新しいのは、かつてフランスが誇る不倫奥様「ボヴァリー夫人」(クロード・シャブロル監督『ボヴァリー夫人』)を演じたイザベル・ユペールが、アヴァンチュール下手ってとこなんですね。

(C)2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits reserves.

夫を演じるのは、『ル・アーヴルの靴みがき』(アキ・カウリスマキ監督)で渋い刑事を演じていたジャン=ピエール・ダルッサン。本作でも寡黙な牧畜家を演じているのだが、そこはさすがフランス。車は特別モデルのビンテージミニクーパーだし、いつもハットをかぶっているしで、そつなくオシャレなことおびただしい。彼らの牛(かわいい)は今年もコンテストで優勝し、息子はパリに下宿中。何不自由ない生活を送っているはずだけど、「豆腐チリハンバーグしめじ入り」を出してみたら口もつけないとか、息子の進路を「ピエロの学校なんて」と認めないとか、そういう日々の細かい齟齬に妻ユペールは不満を蓄積させていく。そんななか、隣の家にパーティにやってきた年下男と仲良くなった彼女は、ウソをついて3日間のパリ旅行に出かけることにする。

(C)2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits reserves.

そして始まるアヴァンチュールが、なんともたどたどしいわけです! 偶然を装おうとした出会いはバレバレだし、約束をとりつけてもあては外れるし、デートは夫の取引先の人にみられて気まずいし......。この人、フランス人のくせに全然恋の達人じゃない。日本人が、着物を着て、お茶をたてて「日本人・コスプレ」を楽しむように、本作のユペールは「パリでアヴァンチュール」という「フランス人・コスプレ」を不器用にこなそうとしているようにみえてくる。

一方夫はといえば、こちらも遅まきながら妻の異変に気づいて、彼女を追ってパリに出る。浮気映画を観るならやはり、スマートな男が人妻を甘く誘惑するシーンより、浮気される男がみじめに、所在なく、しょぼくれているところがみたい。無口なジャン=ピエール・ダルッサンが、どこかの男と地下鉄に乗っている妻を眺める。やがていたたまれなくなって、一人あてどもなくパリをぶらつく。そしてオルセー美術館のベンチに腰かけて、携帯をチェックしてすぐ戻す、その動作がたまらない! お土産コーナーで絵ハガキラックをくるくる回しているダルッサンの禿げた頭頂部をみれば、友よ!お前をみじめな男クラブの会員と認めよう!と、魂のスタンディングオベーションをささげたくなるというものではないではないか。
そんな彼がふと思い立って、息子の元をたずねるシーンがすばらしい。映画はとつぜん逆再生をはじめたような奇妙な動きになる。落ちては上昇し、倒れては元に戻る。それは息子によるサーカスの芸だった。妻の後をつけて、小突き回されるようにパリ中をウロウロしているダルッサンの悲しみが、目の前の動きで戯画化され昇華されていく。そこで彼は初めてサーカスの偉大さに、息子の偉大さに気づくんですね。

(C)2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits reserves.

はたして「アヴァンチュール」はうまくいくのか、夫婦の行方はどうなるのか。本作のユペールに、それでもフランス人のアヴァンチュールDNAが宿っているとすれば、その才能は気軽さでした。断固とした意思を持ってというより、その場の雰囲気に流されるようにアヴァンチュールを進めていく。その芯があるようなないような、しかし深刻ぶらない明るさが、映画全体を息苦しさから救っている。高峰秀子は自著で「台所で大根を切りながらしゃべるような、何気無い演技が一番難しい」と言っていましたが、本作のユペールが浮気相手に、決して熱くならずに言う「なぜそう思い詰めるの?」というセリフ、あのにこやかな普通さも渋かった。
浮気は愛の臨死体験。もし帰ってこられるなら、見えなくなっていた愛の価値に、今度こそ気づくことができる!かもしれない。という本作なのでした。

(C)2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits reserves.

文=ターHELL穴トミヤ

おひとりさまで行く、故意の都パリ。
迷える主婦ブリジットが出会ったものとは――。


『間奏曲はパリで』
2015年4月4日(土)より、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA(オープニング作品)他全国ロードショー 

(C)2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits reserves.
原題=『La Ritournelle』
監督・脚本=マルク・フィトゥシ
脚本=ダグラス・アーニオコスキー、デイビット・ラアリー
出演=イザベル・ユペール、ジャン=ピエール・ダルッサン、ミカエル・ニクヴィスト、ピオ・マルマイ、アナイス・ドゥムースティエ、他
後援=在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力=ユニフランス・フィルムズ
配給=KADOKAWA

2014年│フランス│99分│カラー│ビスタ│5.1ch │字幕翻訳:高部義之

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映画『間奏曲はパリで』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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