『かもめ食堂』荻上直子監督 話題の新作が公開! (C)めがね商会 |
『めがね』 監督・脚本=荻上直子 2006年、各地で熱い支持を受けロングラン上映された『かもめ食堂』。そのキャストとスタッフが再び集まって生まれた話題作が公開です! |
とある海辺の小さな町に2人の女性が訪れるところから物語は幕を開ける。
ひとりは小さなバッグひとつを手に、もう一人は大きなトランクを引きずって。
小さなバッグを手にしたサクラ(もたいまさこ)とトランク持参の旅行者タエコ(小林聡美)。そこに飾り気のない宿の主人(光石研)や高校教師らしからぬハルナ(市川実日子)、そしてタエコを「先生」と呼ぶ青年ヨモギ(加瀬亮)も加わって、海辺のゆるやかな時間が流れていく……。
世代や性別を超えて様々な人たちから熱い支持を受けた『かもめ食堂』の荻上直子監督の新作『めがね』。彼女が今作のモチーフに選んだものは“旅”。前作で描かれていた“異国での生活”と比べれば、より現実味を帯びたモチーフになったとはいえ、そこで描かれる世界観は前作のファンを裏切るものでは決してない。
作品の序盤、主人公タエコのセリフは極力抑えられ、私たちはタエコの目線で劇中の世界に入り込んでいく。宿泊客の食事を用意しない宿の主人、苦手なかき氷をすすめてくるサクラ、はばかることなく気持ちを口にするハルナ。そんな登場人物たちの生活にタエコが馴染みはじめるとき、観客である私たちもまたこの映画が描く緩やかな時間の世界を過ごすことができるようになる。
前作でも評判だった静かに流れる心地よい映像感覚は今作でももちろん健在で、フィンランドの情景から海辺の小さな町に舞台が変わっても、ずっと眺めていたいと思わせてくれる美しさ。また物語の中心が食堂だった前作では、観ているだけでお腹が空くほどおいしそうな料理が魅力のひとつでもあったが、この『めがね』でも思わず手を伸ばしたくなる料理があれこれ登場。また食事の場面は、前作の食堂で供される料理とは違い、宿の料理とはいえど日常の食事に近い感覚で描かれており、筆者には前作以上に魅力的と感じられた。
人生はしばしば旅にたとえて語られる。旅先で出会った景色や人々、そして日常では得がたい貴重な体験。この『めがね』は私たちをそんな素敵な旅へと連れていく。それは私たちが無意識のうちに希求している生の充足、そこへと向かうアプローチであるように思える。
毎日を忙しなく過ごしている方にこそおすすめしたい、この『めがね』。
2時間弱の小旅行、是非ご覧になっていただきたい。
文=編集部
関連リンク映画『めがね』公式サイト
『めがね』
9月22日(土)よりテアトルタイムズスクエアほか
全国ロードショー
監督・脚本=荻上直子
キャスト
小林聡美
市川美日子
加瀬亮
光石研
もたいまさこ
主題歌=大貫妙子
配給・宣伝=日活
2007年|日本映画|106分|カラー|DTSステレオ|アメリカンビスタ|(C)めがね商会