井筒和幸監修、滝本憲吾監督が送る、 話題の音楽ドキュメンタリー映画が公開! (C)SMB KIDS / ジェネオン エンタテインメント / cineQuanon |
『sadistic mica band』 監督=滝本憲吾 監修=井筒和幸 全てが驚きだった!伝説のロックバンド“サディスティック・ミカ・バンド”、その軌跡と現在を追った音楽ドキュメンタリー、ついに登場! |
なぜプロモーションビデオでもなければ、テレビの特集でもなく、映画でなければならなかったのか。
木村カエラをゲストヴォーカルとして迎え入れて再結成を果たした「サディスティック・ミカ・バンド(以下SMB)」の、たった一夜限りのライブコンサート「Live IN TOKYO」が2007年3月8日、東京・原宿のNHKホールで行なわれた。
『sadistic mica band』は、この約18年ぶりに行なわれたライブ映像を縦軸として、「SMB」メンバーらのインタビュー、また新曲制作の模様を織り込んだドキュメンタリータッチの映画である。
「SMB」はこれまでに幾度となく解散、集合を繰り返してきた。メンバーもだいぶ入れ替わっている。何かアクションがあるたびにワッと集い、アルバムという形を残して、すっぱり潔く散ってまたそれぞれの音楽生活に戻っていく。「SMB」とはどうやらそういったバンドであるらしい。
前回の「再集合」は1989年だった。それから18年もブランクが空いている。それでも彼らは集まった。
「SMB」が結成されたのが1972年。当時のメンバーはみんな20代だった。しかしいまや加藤和彦(G&Vo)、今年60歳。高橋幸宏(Dr&Vo)、今年55歳。小原礼(B&Vo)、今年56歳。高中正義(G)、今年54歳。いい歳をしたおじさんたちである。だがそれでもどこかに若々しい面影を残しているのは、結成当時の記憶が今もなお色濃く残っているからなのだろうか。
今回の「再集合」を果たした起爆剤がゲストヴォーカルの木村カエラという存在である。今年23歳。イギリス系ハーフのおてんば娘で、今やテレビでも引っ張りだこの人気者。
その木村カエラをゲストヴォーカルとして迎え入れ、CMソングとして「SMB」往年の名曲「タイムマシンにおねがい」をセルフカバーするとこれが大ヒット。あれよあれよという間に活動が本格化して、アルバム制作、そしてついにライブ開催にまでこぎつけることになった。
しかし、この映画の監督、滝本憲吾はそういった過去の歴史やサクセスストーリーにはあまり焦点をあわせていない。どちらかというと目の前にある「SMB」の姿を淡々と捉えることにフィルムを費やしている。
ライブシーンやレコーディング風景の合間に挟まれる「SMB」メンバーや関係者のインタビューによって、確かに「SMB」というバンドの輪郭は浮かび上がってくる。彼ら一人ひとりが何を目指してきたのか。どのような経緯を歩んできたのか。そして何を目指したのか。
しかし、彼ら自身が自らを語るということは、ときに美しい思い出や、またさまざまな思惑によって真実が塗り固められてしまうこともあるだろう。
監督の目線はあくまでも冷静である。
何が「SMB」の真実なのか。それは「SMB」の行動であり、彼ら自身の姿であり、彼らが残した結果に現れているのだということなのだろう。
故に、この映画の大部分を占めるのはライブの模様である。35mmフィルムで撮影された映像は、劇場をライブ会場に変えてしまうかのような迫力と高揚感を与えることに成功している。これまで培ってきた音楽、新しく目指した音楽、バンドの信頼感。そしてこの「SMB」の奏でるライブの場に見事な華を咲かせ、バンドメンバーの期待に応えた木村カエラの溌剌とした表情、歌声。
木村カエラという歌姫の存在が今回の再結成の大きな推進力になった。30歳以上の年齢差があるおじさんたちのパワーと貫禄に負けない元気のよさと力強い歌唱力。会場だけでなく、「SMB」のおじさんたちもまた、この一晩限りのセッションを通して聴き惚れていたに違いない。
なぜ、PVでもなければTVでもなく、映画でなければならなかったのか。それはこの一夜の夢のような映像がすべてを物語っている。
文=編集部YU2
関連リンク映画『sadistic mica band』公式サイト
『sadistic mica band』
10月13日(土)よりシネカノン有楽町2丁目にて公開
監督=滝本憲吾
監修=井筒和幸
キャスト
加藤和彦
高橋幸宏
小原礼
高中正義
木村カエラ
配給=シネカノン
2007|日本|35mm|72分|ヴィスタサイズ|DTSステレオ|
(C)SMB KIDS / ジェネオン エンタテインメント / cineQuanon