毎週日曜日更新!
短期集中連載
永山薫×安田理央
対談『アダルトメディアの現在・過去・未来』【2】
構成=編集部
アダルト写真雑誌、AV、エロマンガ……内部に様々な文化的要素を包括しつつ、その商業形態を劇的に変化させているアダルトメディア。出版不況とインターネット産業の相克の中で、今、見据えるべきポイントはどこにあるのか。漫画評論家・永山薫氏とアダルトメディア研究家・安田理央氏が、素肌と脳で感じているアダルトメディアの状況を縦横無尽に語り尽くす! 大ボリュームの短期集中連載、毎週日曜更新です。
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永山薫
1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。
安田理央
1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。
商売としては消しとかモザイクはしっかり入って、
っていう状況のほうが美味しいですよ。
そこでの工夫ってことになりますから。
それが見せる工夫ってなっちゃうとちょっとね、勝負見えてますから。(永山)
永山(以降「永」) ホントに男って馬鹿だなと思うのが、オマンコさえ見えてればっていうね。
っていう状況のほうが美味しいですよ。
そこでの工夫ってことになりますから。
それが見せる工夫ってなっちゃうとちょっとね、勝負見えてますから。(永山)
安田(以降「安」) 可愛い女の子のオマンコが見たいだけなんですよね。凄くこう、身も蓋もない結論になっちゃう。
永 男の本能に直結してるだけってことになる。
安 もちろんそれは否定しないですけど、僕だってそうだし。ただそれだけでいいのかってやっぱり思っちゃうんですけどね。
永 うーん、だから商売としてはそこが難しいですよね。商売としては消しとかモザイクはしっかり入って、っていう状況のほうが美味しいですよ。そこでの工夫ってことになりますから。それが見せる工夫ってなっちゃうとちょっとね、勝負見えてますから。
安 先がないですからね、結局。
永 昔エロ漫画でも、解剖図的な描写とか、断面図とか、それから透明のコップを突っ込んだみたいな描写とか、ヒダヒダまで見えるっていう。現実にはありえない、内視鏡でも使わないと見られないような光景を見せたりとかも一時流行ったし。
安 あれは漫画ならではだなと思いましたよね。
永 漫画ならでは、ではあるんですけど、そういう変な方向に進化したりとか。ただ漫画のほうが、ある程度そういう描写面でも、組み合わせでも、やり尽くされてる感じはあるかなっていう気はするんですよ。新機軸っていうのはもう出ないんじゃないかな。
安 AVでもそんな感じはしますよね。
永 あとはシチュエーションでどんどん隙間を埋めていく。たとえばネトラレとか、そういうのを入れていく。三和さんで一時、にったじゅんさんが……童貞モノ(※13)ですよね、ああいうのだとか。でもあれはホントに隙間で、ホントに狭いものでしかないんで。
安 童貞モノとか、あれってM男ものじゃないですか。AVも痴女とか、男性が受け身のものが多いんですけど、漫画のほうでもあるんですか。
永 それはありますね。
安 でも主流ではない?
永 主流ではないですね。それは昔っから割とあるし、露出マニアのとか、ああいう欲望も商品化されてます。されてないもののほうを考えるのが難しいですね。おっさん同士っていうのすらゲイのほうではあるし、デブ専もある。
安 実写だといろいろ制限があるから難しいですけど、漫画だと、とりあえず描いちゃえば描けますからね。
永 どんなシチュエーションでも、どんな組み合わせでも描けますし。
安 そういう意味ではもう、やりつくされた感じがあるのかなぁ。
永 だから一番過激な部分だと、身体改造とかさ、心臓止まっちゃったとかヤッてる間にさ、それを蘇生させてまたとかさ、ひでぇなとか思うんだけど、そういう過激なやつも行き着くとこまで行っちゃってるし。
安 でも過激なやつはメインにはならないですよね。
永 メインにはならないですね。そこはマニアの世界ですよね。怖いもの見たさで素人さんが見たりはするけれど、死体写真なんかと一緒で、一回見たら気が済んじゃう。
安 あんまり追っかけはしないですよね。
永 それはマニアですよね。
お金を払ってくれる人数は少しでも、
単価が高ければトータルでは利益になる。
高くってしょぼいものでもその人にとって価値があれば、買うんですよね。
だから買ってくれる人だけを相手に生きてくしかないなという気が凄くしているんです。
もうマスでエロはできないんじゃないかなと。 (安田)
安 今単行本の平均的な部数、個々の部数はどうなんですか。
単価が高ければトータルでは利益になる。
高くってしょぼいものでもその人にとって価値があれば、買うんですよね。
だから買ってくれる人だけを相手に生きてくしかないなという気が凄くしているんです。
もうマスでエロはできないんじゃないかなと。 (安田)
永 最近は掴んでないけども、昔はね、売れてる時代は平均一万、売れてるやつは十万とか二十万とかいくわけですけども、今は平均一万いかないって言ってました。八千とか六千っていうのが正直なとこじゃないですか。
安 今、商売になるんですか、その数字で。
永 なってるんでしょうね。だんだん残存者利益っぽくなってくのかなっていう。潰れるとこはもう潰れちゃったんで。
安 何千って、一冊出して、たとえば原稿料でも何十万レベルじゃないですか。百万はいかない。ってことは年間何冊出せるかを考えると、あんまり単行本でも作者は稼げない。ちょっと厳しいですよね。
永 厳しいですよ。原稿料と単行本っていう計算になりますから。そうなってくるとですね、数十万と数十万ですから、単行本を一冊だと両方併せても百何十万くらいにしかならないんですよ、平均的な作家であれば。春夏秋冬と一冊ずつ出して、そしたらなんとか。
安 でも今は年に一冊とか、何年に一冊とかだったりしてるみたいで。大変ですよね。
永 大変ですよ。結局ダウンロード販売してると、売れる人と売れない人の差ってもの凄くでかいし、ダウンロード販売だと、たとえば半年とか一年で決済するんだけども、ホントに雀の涙しか入ってこない人がほとんどっていうか、多い。チャリンチャリンっていう感じ。
編 そういう状況が、コミックマーケットにプロが移行していくことを助長してたりするんですか。
永 そこまではね、まだはっきり数字は出てないですけども、計算したらそっちのほうがお得なんですよね。
安 そうですね、同人誌ってめちゃくちゃ儲かりますよ。
永 売れればですけどね。
安 売れれば。
永 あんな薄っぺらいもので千円だとするじゃないですか。千冊売ったらそこで百万ですよ。で、印刷経費が二十万かかったとしても、そこで八十万。
安 64ページとかじゃないですか、あれ。
永 64ページもあったらかなり頁数あるほうですよ。
安 ですよね。だけど普通単行本って百何十ページじゃないですか。
永 百八十から二百くらいありますよね。
安 でも千円とらないじゃないですか。
永 今は、ほぼ千円になりましたね。
安 なんでそんなの買うんだろうって思っちゃうんですけど、買っちゃうんですよね、同人誌って。そこになんか僕、光明がある気はするんですよ。
永 以前から考えてることですけど、漫画の同人誌ってのはもう同人誌と言えないインディーズだと思ってるんです。作者直販のインディーズ。いろんな作者が加わってる同人誌になると、インディーズの編プロが作ってるって考えたほうが。実際そこで原稿料払ったりしてますから。
安 っていうかその、千円で分厚くても払わなかったりするのに、64ページでも千円を払う。そこに僕は商売として考えた時にまだ道があるのかなと。要するに付加価値だと思うんですよね、同人誌って。手に入りにくいとか、あと転売ってことみんな考えてると思うんですけど、そういう付加価値ってものをつけてあげれば、みんな買うのかなと。だからAVでもここんとこ値下げ合戦になっちゃってますけど、もう高くするしかないんじゃないか。本って高くできないじゃないですか、ある程度以上までしか値上げはできない。でもDVDって高くできるんですよね、六千円とか一万円の値段もつけられる。だから僕は少部数で高いAVを作ってくしかないんじゃないかなって。同人誌なんかを見ていて思ったんです。お金を払ってくれる人数は少しでも、単価が高ければトータルでは利益になる。高くってしょぼいものでもその人にとって価値があれば、買うんですよね。だから買ってくれる人だけを相手に生きてくしかないなという気が凄くしているんです。もうマスでエロはできないんじゃないかなと。
永 それはもう、凄い規制が来るとかですね、全世界的にですね、オマンコのあれはやめましょうみたいな(笑)。だからP2P(※14)も全部弾圧みたいな、そういう時代がこないと(笑)。
安 そういう時代ならマスはあると思うんですけど。
永 マスはある。エロのマスが復活しますよね。
安 そうじゃないともう、マスは無理だなっていう気がします。
永 無理です。
安 でもまあエロ漫画でも『快楽天』が数字出てるとかあるじゃないですか。あれは何でなんでしょう。
永 そこまではね、まだ分析してないですけどね。まあ『快楽天』辺りになると、一つはブランドの信頼度もあるし、実際『快楽天』に書いてる人たちは一定の数字以上の人が多いですよね。だからはずれがない。
安 その場合のはずれなしっていうのは漫画としてのクオリティが高いっていうことですよね。
永 高い。
安 エロ要素は他のに比べると弱いじゃないですか、コンビニ誌っていうのもありますし。
永 はい。
安 何を求めてるのかなと、読者は。
永 やっぱり漫画読む人って漫画が好きなんですってとこに結局尽きるかなと。漫画っていう形式が好き。だから漫画雑誌っていうメディアが好き。そこで踏みとどまってるのかな。
安 じゃあエロじゃなくてもいいんじゃないかっていう。
永 でもやっぱりそこにエロが入ってきたら美味しい。一般誌では踏み込めないとこに踏み込んでるわけですから。その辺の程のよさ。
安 僕が羨ましいなと思うのが、そこがあるじゃないですか、中間点。AVとかないですよ、中間点って。昔だったらロマンポルノとか、そういったものがそこだったと思うんですけど、今は作品として面白いのとエロの中間点っていうのはないんですよ、市場として。それが漫画とか、エロゲーも変なゲームありますよね。で、なおかつ売れるっていうのがあるじゃないですか、面白がって。そういうのが二次元系は羨ましいなと思うんですよね。
永 うん。
安 AVはやっぱそういうのないですよね。
永 だからアニメの『ぴこ(※15)』のシリーズが売れたわけじゃないですか、海賊版もすっげー出たけど(笑)。なんかちょっとマンガとかアニメは、実写じゃできないことやんなきゃいけないっていうのがあるし。それと割と漫画とかアニメっていうフォーマットに対する欲望っていうか、漫画で見たいんだ、アニメで見たいんだって、それがまだ生き残っているので死に絶えはしないと思うんですよ。ただもっと下の世代の人になってくると、もうすでに漫画が読めない。
安 言いますね、漫画が読めないって。
永 漫画が読めない。漫画の文法が頭入ってないから。
安 コマが読めない。
永 ってことになってきちゃうと、今から二十年後から三十年後、やっぱ先細りかなぁって。
安 うちの子供とか見てると漫画好きだったりするし、周りも読んでるような気がするんで、どれくらい読めない人たちが増えてるのかちょっとわかんないですけど、でも漫画自体はあんまり話題になんないみたいです。やっぱりゲームとかキャラクターもの、ゲームのキャラクターの漫画とかテレビだったりするけど、漫画自体の人気は子供の間では下がってる気はします。
永 うーん、それはあると思いますね。結局子供向けの文化から始まってるものは、やっぱり子供の頃から洗脳しないとダメなので。昔はもっと子供の娯楽の中での比率ってデカかったと思うんですよ。
安 『コロコロ』なんかまだ、少年漫画って感じがするんですけど、『ジャンプ』とかね、だいぶ、女子向けっぽいですよね。うちの娘が中一なんですけど、もう『ジャンプ』。すでに腐女子なんですけどね、たぶん(笑)。『ジャンプ』買ってるから僕もパラパラ見るんですけど、『バクマン。』しか読まないし(笑)。他は結構つらいですね。
永 『銀魂』とかもね、ちょっとね。
安 『銀魂』ももうギャグ漫画じゃなくなってますからね。バトル漫画になっちゃってますから。
永 でもやっぱ面白いですけどね。売れてるものっていうのは、確かに。『NARUTO』とか、あの人は凄い技術もあるし、お話もちゃんと作れて面白い。
安 ただ少年が入り込みづらい感じは少しするんですよね。
永 でももともとコミケットの初期も来場者っていうか、参加者の八割から九割が女性だったんですよ、実は。今でも六割くらい女性でしょ。下手したら七割くらいかな。
安 去年、『ジャンプフェスタ』に行ったんですよ。子供が行きたいって言うから。もう地獄のような光景だった。場内に入るまで二時間待ち。販売ブースがまた別にあるんですが、販売ブースに入るまでに、また二時間待ち。販売ブースってジャンプショップで売ってるよってものばっかなんですけど、アウシュビッツのように行進させられて、買わされるっていう凄い地獄のようなとこだった。
永 旧ソ連かここはみたいな(笑)。
安 パッと見はコミケっぽいんですけど、大きく違うのが小学生の男の子と大人の女の人しかいないんですよ。男が全然いないの(笑)。男がいないコミケ。あれは不思議でしたね、なんか。大人の女性はいっぱいいるんですよ。男の子は大体『遊戯王』とか目当てで。それ以外は大人の女性で、初期のコミケもこんな感じだったのかなと。
永 だから女の人の市場というのが今まであんまり見えてなかったんだけど、ここ五年とか十年で凄い見えてきましたよね、女性ジャンルの市場って。そこはなんかひとつありかなと、業界的には。
安 エロ出版社でも、携帯コミックで食いつないでるところが結構出てきてるんですけど、やっぱOLがかなり。
永 っていう説が、多いですよね。
安 だから(携帯コミックの見せ方が)今までのエロ漫画をそのまま載せたようなのじゃないんですよね。それが人気あるんだとか。あれがなんか、新しいかなと思いました。エロも女性シフトに行くのかなと。
永 実は昔から女のほうが消費量多かったのかなって、そう考えると。コミケの第一回は75年ですよね。
安 まあ女性のほうがお金を使いやすいのかも知れないですね。
永 経済的な背景もあるだろうし、やっぱりなんやかんや言ってもまだまだ男性社会なので、男とはまた違う抑圧のかかり方をしてるし。その辺はホントに腐女子研究やってる人たちに是非とも調べて欲しいんですよね。
安 あと、今みんなネットでタダで手に入れちゃうってのがあるじゃないですか。ネットスキルは男性のほうが強いから、女性はタダで手に入れるまではできないのかなぁと。なんか金払うのは馬鹿みたいな風潮があるんですよね。それこそ「2ちゃん」とかの特徴でもあるんだけど、エロものでも「それどこに落ちてんの?」って話になる。女性のほうはそこまでいかないのかなとちょっと思ったんです。
永 だからね、濃い薄いっていうのがあって、やっぱりダウンロードしてそれで気が済んじゃうっていう薄い人が多いんだよね。お金までは出せないっていう。濃い人たちはやっぱりリアルなものとして置いておきたい。データではなく。
安 音楽のほうだとパッケージがだんだん落ちてますよね。『着うた』とかのほうがメインになってきてて。レコード屋がヤバイっていう。今日どっかの新聞のニュースサイトで見たんですけど、どっかの市にはレコード屋が一軒もなくなっちゃった(※16)んですって。どこで買えばいいんだみたいな。でもたぶんみんな不自由はしないんですよね。レコード会社の人に聞いたんですけど、大手レコードショップとか、たぶん軒並みなくなっちゃうだろうと。少しだけ残った店も新譜しか置かないようになる。旧譜は置いてもしょうがない。規模を収縮してやっていくことになるんじゃないかって。
永 結局もう、通販とダウンロードに移行しちゃうでしょうね。漫画のほうのダウンロード販売もそうなんですけど、ダウンロード販売とかオンデマンドとかも、強みっていうのは僕らが子供の時代に読んでた漫画を読みたいと思っても、絶版で読めないじゃないですか。それが今、オンデマンドで多少割高だったりするけど買えたり、データ落とせたりするじゃないですか。在庫の必要がないんで、そこは強いですよね。作者にいくらお金が入るかっていうと微々たるものなんだけど、消費する側としては非常にありがたい。音楽も結局iTunesで、いい曲落とすみたいになってるじゃないですか。こないだ驚いたのが、NHKでやってる昭和を振り返るような番組があって、そこでバンドブームの頃のことやってて。そしたらアシスタントの女の子が、いやCDって買ったことないからって言ってて、カンニングの竹山とかが愕然としてて。じゃあアルバムとか買わないんだ、シングルで気に入ったのがあるからアルバム買って、それを聞き込んで八曲目もいいなとかって、そういう発見ないんだって愕然としてたけど、もうよくも悪くもそうなっちゃってますよ。
安 冷静に考えてみたら、今CDを外で聞くってなったら、ディスクマン(※17)をもう持ち歩かないですよね。でiPodとかああいうのって、パソコン持ってる人前提の作りじゃないですか。CDを買って、それをエンコードしてとかってやらなきゃいけないんで。でもパソコン持ってない若い人、結構多いじゃないですか。となると着うたで携帯に落とすしかないんですよ、もう。それを考えると、レコードとかCDっていうフォーマット自体が、初めから発想の中にない世代に入ってきてるだろうなと思いますね。
永 安田さんの本読んでて、ああそうなんだと思ったのはですね、結局文化というものはですね、余計なものを買わされることによって成り立ってるんだと。
安 エロ本のモノクロページ(笑)。
長 それもそうですし、CDも一曲だけ聴きたいんだけど、それを聞くためにシングルを買うか、アルバム買うかになるんだけど、アルバム買っちゃえってなって、自分にとっては余計な曲がたとえば10曲とか入ってるわけじゃないですか。それを無理矢理でも聞いちゃって、面白くなったりとか。それが文化なんだなと。余計なものを押しつけてるのが、文化産業なんだなと。そこで余計なものがそぎ落とされちゃうと、途端にもう産業として辛くなっていく。
安 そうですよね。
永 今、要するにその、消費者様の文化じゃないですか。消費者様は余計なものはいらないと仰ってるというのが、今の状況ですよね。だからいるものだけをさしあげましょうと。そうじゃないと買っていただけないですから。となるともう文化としては成熟しづらい。成熟しづらいというか、それはもう文化というのがどんどん枯れていく世界ですよね。漫画なんか見てても、「スタージョンの法則」(※18)ってあるじゃないですか。八割から九割はクズだっていう。でもそのクズがあって、初めて土壌になって、素晴らしいものが出てくるんだけども、ピンポイントでいいものだけをより出していくことになっちゃうと、文化総体として枯れていくと思うんですよね。
(続く)
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永山薫 1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。
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安田理央 1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。 |