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毎週日曜日更新!
短期集中連載
永山薫×安田理央
対談『アダルトメディアの現在・過去・未来』【6】


構成=編集部
アダルト写真雑誌、AV、エロマンガ……その内部に様々な文化的要素を包括しつつ、その商業形態を劇的に変化させているアダルトメディア。出版不況とインターネット産業の相克の中で、今、見据えるべきポイントはどこにあるのか。漫画評論家・永山薫氏とアダルトメディア研究家・安田理央氏が、素肌と脳で感じているアダルトメディアの状況を縦横無尽に語り尽くす! 大ボリュームの短期集中連載、毎週日曜更新です。

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永山薫
1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。

安田理央
1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。
ライターでもね、覇気があるのは女のライターだなって。
男の子は、自分が何をやりたいのかわかんない子が多いですね。
今、雑誌読んでてライターになりたいとか思わないだろうなぁとも思うんです。
僕はエロ本読んで、それこそ永山さんが活躍してた頃とか、
エロ本のライターなりてぇって思ってたんですけど――(安田)
編 職業ライターと、ブログ上で書くことの間の意識について、安田さんはブログでも、それどこかに載せたら原稿料貰えるじゃんみたいな記事を頻繁にのっけてらっしゃるんですけど、永山さんはブログとは立ち位置というか距離というものを測りつつ……。

永 っていうかね、結構ズボラなんでノリがいい時は続くけど、ノリが悪くなると一カ月二カ月放置とか平気でやるんで。

編 日記に近いですよね。

永 日記に近い。

編 その辺の意識ってどうなんでしょう。

永 単にずぼらなだけで、意識って別にないんだけど。

1980年代、白夜書房の雑誌で活躍していた頃の思い出を懐かしそうに語る永山薫氏。



安 プロのライターがやるのってどうよとか、言われたりはするんですよね。仕事じゃなくてただで書いちゃうっていうのは。でも何年か前までブログで何かテーマ付けて書くと、それを書いてって仕事の依頼が来ることが多かったんですよ。編集者が読んで、あのネタ面白いから特集組んでやろうよとか。今、ぱったりないんですよね、そういうのが。だから前は仕事としても役に立つ部分があったんですよ。

永 ショーケースみたいな。

安 そうです。でもここ数年でそういう依頼がまったくなくなっちゃって。だから今なんで書いてるんだろう。好きなことを書く場所がないからかな。

永 それもあるだろうし、やっぱ書くことが好きなんだと思いますよ。

安 そうですねぇ、たぶん。

永 昨日かな、竹熊さんのやつ(※31)見てたらホントに今が天国だみたいなこと書いてて。自分が自由に使えるメディアがあるっていうのは、素晴らしいって書いてましたよ。

安 「WEBスナイパー」もそうなんですけど、ネットの仕事に慣れてくると、雑誌のペースがかったるいんですよ。書いて一カ月後に出ても……。

永 もう感覚変わってるよって。

安 そう、感覚忘れちゃうじゃないですか。ブログなんてその日にアップできるでしょ。「WEBスナイパー」も書いてすぐ載っけてくれるんで、そういうのはやっぱりネットはいいなぁと思います。読むほうも雑誌のスピードって遅いなって思うの分かるんですよ。書いてるほうが遅いと感じてるくらいなんで、そんな一カ月前のことって。昔でも面白かったのは月刊誌で論争とかやってたじゃないですか。あれ凄いですよね、考えてみたら。出てからまた一カ月後に反論があってって、めちゃくちゃペース遅いですよね(笑)。

永 今はネット上でできちゃうね、そういうことも。ただね、やっぱりネットは限界あるなと思うのは、長文だとなかなか読むのも……。

安 疲れちゃう。

永 その辺はどうなのかなっていう気はしますけどね。

安 でもネットの仕事は文字数の制限がないですから、つい長く書いちゃうんですけどね。

永 いくら書いても値段は一緒。

安 自分の首を絞めるだけなんですけど(笑)。でもライターのスキルの一つとして、文字数内に中身を入れるっていうのがあったじゃないですか。あれたぶんこれからいらなくなるなと思って。あんま言われなくなっていくんでしょうね、ネットが基本になっていくと。とりあえず、全部書いちゃえみたいな。それはいいことか悪いことかちょっと分からないですけど。

永 両方ありますよ。冗長度だけが上がっちゃうとかえってまずい。長文はあまり読まれないっていう傾向はあるんで、やっぱり短い中で言い尽くすっていう訓練は必要だと思いますよ。これからのライター、ブロガー志望者も。まあブロガーって今日からでも始められるんですけど。

安 ブロガーっていつからブロガーになるんですかね。

永 まあブログ書き始めたらブロガーですから(笑)。

安 ブックマークされないとブロガーじゃないとかね。

永 俺も陰でこっそり、ブログ作ってましたけどね、別の名前で。ぜんぜん関係ない、趣味の話で。

安 何の趣味なんですか?

永 写真とか。エロとか漫画一切関係なし。ただ漫然と撮ってきた写真を貼り付けて、たまぁに更新して、こんなカメラ買ったとか(笑)。単なる趣味のカメラ親父です。

編 やっぱりそちらでも、何かを発信するとかじゃなく、日記のように……。

永 そう、たまに変なカメラ買ったら、誰か見に来て参考にするかも知れないなっていう程度ですよ。だからああいうものってネット上にほとんど情報がないものとか、よほど深入りしないと情報出てこないやつとかあるじゃないですか。これに使ってるバッテリーは何で替えられるとかさ(笑)、実際撮ってみたらこうだったとか。
永山氏の経歴を掘り返しながら自身の青春時代の記憶を探る安田理央氏。


安 検索すると大体出てきますからね。誰かがなんかやってる。

永 出てくる。それで誰かの役には立つかなっていう。

編 知識の共有みたいな意味合いが強いんですね。

永 うん。そういうの作っておけば、誰かにとって便利かも知れないし、それに対してこっちのサイトはこうだとか、もしくればこっちも参考になるし。

安 だから普通のライターの人もできるだけ情報を上げていったほうがいいと思うんですよ。今ネット見て調べてるじゃないですか、ライターだって書く時。自分たちがもらうだけじゃなくて、ちゃんとネットに返すべきだと思う。昔の原稿とか、問題のないものに関してはどんどんアップしておくべきじゃないかなって思う時もありますね。

永 今ちょっと注目してる証明写真用のカメラ。今でも売ってたりするんですよ、フジのやつが。セットで20万のやつ。それがヤフオクだと500円。

安 (笑)。

永 高くつけてる人は売れないんで、平均すると千円とかに2千円とか。

安 いらないわけですか。

永 いらないです。証明写真用のカメラも全部デジタルになってるんで。そっかこれ十何万もしたんだぁっていうのが千円とか。面白いんですよ。2眼の証明写真用のやつだとステレオ写真になるんです。

安 そのブログっていうのは、結構マメに更新してるんですか?

永 たまにですよ。ろくに見に来る人いないんで、かえって気楽。

安 そういうふうに今、みんな簡単に情報発信できるんで、プロのライターになりたい人って減りますよね、そりゃ。

永 うーん、プロのライターになりたい人って、いっぱいいることはいるんですけどね。僕の身の周りでもやっぱりいたりするんですけど。できる人はブロガーからネット連載の話がいきなりきて、すぐに単行本みたいな。

安 女の子のほうが多いですね。ヤル気があるのはみんな女の子だなぁって。

永 それは昔からですね。だってエロ漫画だって僕の知る範囲では女の漫画家のほうがプロ意識が強いっていうか。上昇志向が強いっていう感じはしましたね。あくまでも印象ですけど。

安 なんでなんですかね。

永 男の漫画家は好きなことをやって食えればいいや的な、あんまり高望みしない感じがあるけど、女の人はもっとメジャーなところにステップアップ、みたいなとこがありますね。

安 ライターでもね、覇気があるのは女のライターだなって。男の子は、自分が何をやりたいのかわかんない子が多いですね。最近もはや若い男のライターを見ること自体ないんですけどね。でも今、雑誌読んでてライターになりたいとか思わないだろうなぁとも思うんです。僕はエロ本読んで、それこそ永山さんが活躍してた頃とか、エロ本のライターなりてぇって思ってたんですけど。

永 人生を誤ったと思いますね、それは(笑)。

安 (笑)。東良美季さんの『ボディプレス』(※32)とかね。
『月刊ボディプレス』 1985年10月号 発行=白夜書房


永 東良君とね、1カ月くらい前に10数年ぶりに会いましたけどね。その前に山本土壺が亡くなって、あの時には白夜のOBとかがブワッと集まって。高杉弾とか。中村京子ちゃんとか。あと中沢社長とか。こないだ昔撮った写真の紙焼き見てたら、ラッシャーみよしのサイン入り写真が出てきた。

安 なんでですか?

永 なんか俺、冗談かなんかで撮ったんだと思うんだけど、ラッシャーみよしがブルマ穿いて、机に向かって仕事してる写真に、その場でダーマトでサインして貰ったっていう。

安 あの頃の白夜はホントにいいですよね。

永 いいですよ。『ビリー』が外注になった時に、僕仕事始めたんですよ。
『月刊ビリー』 1983年7月号 発行=白夜書房


安 エロ本自体は、『ビリー』から入ったんですか?

永 いやエロ本自体は、自販機。最初、工作舎(※33)でウロウロしてて。知り合いが女子高生ものの告白とか書ける?っていうから、書けるよって。それから池袋にあったアップル社、そこの自販機で書き始めて。ほぼ宝島と自販機と同時に書き始めた感じですかね。

安 書店売りのエロ本だと?

永 それは『ビリー』とか、あの辺ですかね。

安 でも死体とかやってたんですよね。

永 そう。『ビリー』で死体とボンデージと書評と、いろいろ。

安 ぜんぜんエロじゃないじゃないですか(笑)。

永 うん。でも五本くらい連載持ってました、『ビリー』だけで(笑)。『ビリー』がなくなった時中沢さんに、変態の皆さんと君のおかげだとか言われて、ほんと泣きそうになりましたよ。
『月刊ビリーボーイ』 1985年8月号 発行=白夜書房


安 『ビリー』って何年くらい続いたんですか?

永 三年くらい。

安 それから名前変わって……。

永 『ビリー』から『ビリーボーイ』になって、『クラッシュ』になって、ホントにクラッシュしちゃった(笑)。最後は情報誌みたいな形になっちゃいましたけど。だから『ビリー』はね、思い入れのある雑誌としては一番ですね。とにかくあってもなくてもいいところをやらしてもらったんで(笑)。

安 僕は高校くらいかな、『ビリー』とか『ヘイ!バディ』とかを、買うとか手に入れるっていうのは。割と当時のサブカル少年の必須アイテムみたいな感じはありましたね。『写真時代』と。

永 だから『ビリー』で書評欄やってたんで、『ホットミルク』で全冊紹介やらない?って言われて、やるやるって。それからエロ漫画のほうに。
『クラッシュ』 1991年5月号 発行=白夜書房


安 それ以前っていうのは、エロ漫画のほうはどうだったんですか。

永 書評ライターをやりたかったんで、『宝島』とかにも書いてたし、全体の書評の中の一分野として漫画もエロ漫画もあった。

安 それほどエロ漫画に傾倒してたわけではないんですか。

永 まあ好きは好きだし、実用もさせていただいてましたし。ダーティ松本先生で抜いたとか、そういうことはやってたけど、メインではなかった。やっぱり漫画評論とか書評とかやりたいってのはそもそもありましたけど。

安 そこで『ホットミルク』で一気にたくさんやることに。

永 そうです。でも始めた頃は月に十何冊ってくらい。

安 それでも多いですけどね。今ってどれくらい出てるんですか。
『漫画ホットミルク』 1995年2月号 発行=白夜書房


永 今ね、六十くらいかな。単行本で。

安 なんかもっとあるような気がしてました。

永 昔は百とか百二十出てたんですよ。

安、そういう時もあったんですね。それこそAVが今、月に何千本出ますからね。

永 それはタイトルとして? 何千タイトル?

安 二、三千出てますよ。

永 月ですか? うわぁ、それ全部できる人いませんよね。

安 いませんよ(笑)。

永 時間がないですよね。

安 しかも一本二時間ですから。全部把握してる人は誰もいないですね。

永 昔はせいぜい、どれくらいかな。『ワールド』でやってた頃は一番最初二人でやってて、後で僕と友成が入って、四人体勢になって、一人二十何本か見てて。だから二百何十本ですね。後で藤木君とか、あの辺が入ってきて、僕がいた時で一番多い時で六人とか。

安 今、『ワールド』は偏ったのしかやらないから。

永 そうなんですか。

安 『ワールド』はずっと、インディーズを扱わなかったんで、ビデ倫の作品ばっか紹介してたんです。それでちょっといびつな感じになっちゃったんですよね。いまだに旧ビデ倫系が中心。それだと明らかに今の時代とおかしいことになっちゃってるんですよ。さっきのかい離と同じなんですけど、『ワールド』の年間ベストほど凄いものないですからね。普通誰も見てないものばっかりですから。

永 うーん、素晴らしいなぁ……雑誌が続いてること自体凄いけど。

安 でも、誰が読んでるんだろうって感じにはなってて……。

永 雑誌として残ってるのは凄いですよ。

安 ギャラいいんですよね。だから不思議なんですよ。どう考えても売れてるわけないのに。

永 中沢さん(※34)が始めた雑誌だからかなぁ。それで残してるのかなぁ。

安 ちょっと普通に計算すると無理なんですよね。ライターのギャラが高いんですよ。だから、普通考えられない雑誌なんですよね。裏ビデオ屋さんが買うっていうのはあるんですけどね。

編 毎号買ってる雑誌が、読んでたのになくなったっていう経験ありますか? ないっていう話をばるぼらさんとさやわかさんが対談でしてて。逆に言うと、潰れる雑誌には潰れるだけの理由があるっていうことなんですけど。

永 仕事してる雑誌が潰れるっていうのは……。

安 それはいっぱいありますね(笑)。最近を考えてみると、雑誌を全然買ってない。

永 買ってないですよね。

安 毎月買ってる雑誌は漫画雑誌くらいですね。

編 永山さんは?

永 買ってないね、全然。だから雑誌がなくなったって気づくのは送られてくる雑誌がこなくなったとか。

安 『噂の真相』読んでたけどなぁ……でも毎月は買ってなかったか。

編 やっぱりなくなるっていうのは、誰も読んでないんだっていうことなのかもしれないと。

永 それだったら女性週刊誌が生き残ってるのは美容院のおかげとかさ。

安 それに近いんじゃないですか。『アサヒグラフ』は銀行のおかげみたいな。

永 だって一般家庭に行って見たことないですよ、『女性セブン』とか(笑)。

安 僕らも買ってないから。編集者も雑誌売れねぇなって言うけど、自分だって買ってないじゃんっていう。

永 小池先生(※35)とかね、時間の問題だと仰ってましたよ。毎年、山が一個なくなるような紙の消費が続くわけないからって。

安 新聞もかなりやばいですよね。

永 どんどん読者減るでしょう。

安 今、産経がもの凄くヤバイらしい。

永 新聞は、かなりやばいだろうなと思うんですよ。とってます?

安 とってないです。

永 うちももうやめようかっていう話になってて。読まないし。

安 今度リクルートかな、テレビ欄だけ、地域のチラシを入れて配達してくれる(※36)っていうサービス始めるんですよ。それいいですよね。チラシは結構欲しかったりするじゃないですか、地元の。チラシとテレビ欄だけでいいよなっていう。

永 確かにね。

安 それでただだったら。まだ一部地域でしか実験的に始めてないですけど、早く練馬来ないかなって思ってるんですよね。



(続く)


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nagayama-yasuda-boppatsu-plof.jpg 永山薫 1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。

永山薫ブログ=9月11日に生まれて

nagayama-yasuda-eronoteki-prof.jpg 安田理央 1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

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