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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : 破』に端を発する
鼎談:泉信行 x さやわか x 村上裕一 2010年代の批評に向けて 第一回

ゼロ年代も残すところあと3カ月あまり。世に溢れる多種多様なコンテンツの中でも、アニメに対する関心度が一際集まる10年間だったように思います。そんなゼロ年代の最後の年に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : 破』。この作品を通じて行なわれた批評家たちの熱い対話の軌跡を全3回の特別企画としてご紹介いたします。

編註:この鼎談が行なわれた経緯は、泉信行氏がブログ上でさやわか氏のエントリについて言及した際に、さやわか氏がコメント上で「一度ゆっくり意見を交わしたい」と言われたことに端を発し、泉氏が日程を調整中のところ、時期の重なる夏コミ3日目の評論島にて村上裕一氏に話しかけられ、泉氏が村上氏をさやわか氏との会合にお誘いしたことで2009年8月22日に秋葉原にて実現したものです。 その際に録音されていた音声データをWEBスナイパー編集部が再構成を行ない、出席者の方が加筆修正された原稿を鼎談記事として掲載しています。
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■『ヱヴァ破』マリにみるキャラクターの内面問題

『GUNSLINGER GIRL (1) 』 著者=相田裕 出版社=メディアワークス 発売=2002年 『魔人探偵 脳噛ネウロ 1 』DVD 発売=2007年12月21日 発売元=「魔人探偵脳噛ネウロ」製作委員会 販売元=バップ 定価=3,990円(税込)
泉:今日のために、村上さんが夏コミで参加されていたヱヴァ破のコピー誌を読んできたんですけど、佐藤心さんとの対談、面白かったですね。なんか佐藤さんは、キャラのシチュエーション妄想をする妙な才能があって(笑)。マリに関しても、一見トラウマなんかと無縁そうなキャラなわけですが、それは改造手術か何かで記憶を消去されてるんじゃないかと深読みした上で、「マリが死ぬ間際にKey作品 のオルゴール曲みたいなのが流れて、消去されたはずの記憶が甦ってきたらしっくりきそう」って妄想していて、それはなるほど、絵面は浮かぶよねと。佐藤さんはガンスリの義体に喩えてましたけど、ぼくは『ネウロ』の怪盗X(サイ)の方がイメージしやすかったですね。つまり、彼女が真のエヴァンゲリオンの力を手に入れて何がやりたいのかというと、自分の中身探しがわかりやすいかなと。内面が描かれないキャラで、こいつの中身の肉付けをどうするんだろうっていうのが『Q』を前にして妄想をかきたてるところだと思うんですけど。じゃあ「過去を失った女」だとしたほうがわかりやすいし、過去を取り戻すかそれを埋めようとしているやつだと。

村:そうですよね。内面とか覚醒してきたら愕然とする。

泉:物語の言説的に気に入らないのが、内面が見えてこないよねっていうキャラクターがあるとして、「内面がない」っていうのと「内面を描かない」っていうのをわけて考えずに、マリは内面のないキャラであって云々っていうのはちょっといただけない。そのへんの吟味を無視して、すぐゼロ年代とかに結びつけて語る人っていっぱいいるでしょ。マリってどっち?って話になってくる。

村:そりゃ描いてないだけでしょ。

さ:内面のある/なしというのは結局、昔からある「人間が描けているか」みたいな素朴な文学論に似ているわけで、あまり価値がない。かといって、じゃあ「いや、マリには豊かな内面があるんだ」と言ってしまうのも結局キャラクターに内面が描かれることを是としているだけなので、個人的にはどうかなという気がしますね。ただ『エヴァンゲリオン』については昔から「推理が楽しい」「謎解きが面白い」ってことになっているし、キャラクターが内面で何を考えているかみたいな推論も、その「面白さ」の一部として考えられている。もちろん、そういう楽しみ方をするように作られているドラマだからそれでいいとは思う。ただ、批評という枠組みで考えたときに、実はキャラクターには内面があってマリはこういう人間なんです、っていうことが批評なのかと。それは謎本で心理学を援用しながらキャラクターを解説するのと変わらないんじゃないか。旧作では分析するツールが心理学だったのが、今は社会学の方が人気がありますという程度の違いにしかならないのではないかと思うんです。内面を語ることはむろん避けられないけど、違うアプローチがあってもいいのではないか。

村:内面が何かって話ですよね。『ガンスリ』の義体にとって内面って過去の履歴とかですよね。もとはどういう人間だったのかっていう記録であって、その調子でいうとマリがどういう目的を持ってるのかというのが描かれるでしょう。でもそれは内面じゃないとおもうんですよ。

泉:だから『ガンスリ』にしても『ネウロ』にしても、両方とも実は同じ結論に至っていて、過去がどうこうじゃない、今がどうだっていう語り方になってるんですよね。

さ:それは言ってしまえば、作品がゼロ年代的なキャラクター造形としてオーソドックスなものを呈示しているだけとも言えるわけじゃないですか。僕がウェブとか見て違和感を感じたのは、じゃあマリは一体どういう人なのかとか、シンジ君はこういうキャラになっちゃった的なことをみんな言い続けてるので、それって『ヱヴァ破』がフィルムとしてやっていることに近づいてるのかなあという。どうも、キャラクターを人間として扱おうという意識があまりに強すぎるように感じる。

■90年代『旧エヴァ』批評に代表される諸問題

泉:それは、常々さやわかさんが主張してることですよね。90年代はどうしても精神分析ブームと謎解きブームが流行りすぎていて、文芸作品として『旧エヴァ』を評論する流れが一切なかったのが残念だったという。

さ:おお、そういえばそんなこと言いましたね。今思い出しました(笑)。そういえば僕のこの疑念は『旧エヴァ』に対しても同様だったんですね。僕が『旧エヴァ』ブームの時に何が嫌だったかというと、表現論として、メタフィクションを含んだ一つのフィクションとして『旧エヴァ』を分析する流れって95年当時はほとんど主流ではなかったんですよ。劇中に登場する「ヤマアラシのジレンマ」みたいな言葉に引っ張られてしまって、このキャラクターがこういう行動をするのは精神分析的にこういう裏付けがあるからなんですっていうのばっかり。作品のペダンティックな味付けにとらわれすぎていた。

泉:キャラクターの心理を理解することだったり、監督の心情を理解することだったり、作中にちりばめられた宗教的なガジェットであるとか、部分でしかないものを理解しようとしてたんですよね。そうじゃなくてテキストとしての『旧エヴァ』をちゃんと読めてたのかという。

さ:まあテクスト論を徹底して読み解くのが正しいっていうわけじゃないけど、作品として何をやっているのかという読み方があまりにもなさすぎたんですよね。結局それと同じ傾向を、今の新劇場版に対する評価にも感じている。それこそゼロ年代後期にはその傾向が強まった結果、登場人物をまずは現実の人物として捉えて虚構のキャラクターに対して倫理観を問うたりする姿勢が一般化してしまっている。『ドラクエ\x87\』のAmazonレビューが「作中に登場するガングロ妖精の態度が気に入らない」みたいなのばっかりというのはちょっとおかしいと思うんですよ。それって虚構を扱う態度として正しいのかと。「シンジがすこやかに育っちゃったね」って、それって物語を読む人の態度として、少なくとも批評と呼べるものなんでしょうか。

泉:それは反映論でしょうか? 例えば、大人のキャラクターが何かを行う作品があれば、「これは現代の大人の役割を描こうとしているのだ」ってなぜか現実に置き換えて読んでしまうような。広い意味でその大人が象徴しているのは何か、という物語論として見るのではなくて。また例えば、支配者や王様といったキャラが出てきた場合に、それを現実の政治や父権のメタファーとしてのみ解釈するのはもったいないですよね。

eureka0806.jpg 『ユリイカ』2008年6月号特集「マンガ批評の新展開」 出版社=青土社 定価=定価1,300 円 『トップをねらえ2! (1)』発売=2004年11月26日 販売=バンダイビジュアル
さ:『ユリイカ』の漫画批評の号での東浩紀さんと伊藤剛さんの対談で、社会反映論がいいのか表現論をやるべきなのかって話をしてたじゃないですか。もちろん両方必要で、作品から時代の意識が、今の人間の考えてることがイコール読み取れる、という社会反映論はあっても構わないんだけど、しかし作品が表現として、アニメであればたとえば映像のレベルで何をやってるかってことがあんまり頓着されてない気がする。今回の『ヱヴァ破』はとくにマリのキャラクター性がどうあるかはさかんに言われてるけど、マリの表情の動きとか着てるコスチュームは『トップ2』などの流れをきちんと踏まえたからこそ、あのように表現されているのだとか、そういうことってほとんど言及されないわけじゃないですか。いきなり『旧エヴァ』との対比で登場人物の内面ばかりが語られてしまう。それはおかしいなと。

■「GAINAX」の系譜

さ:つまり「GAINAX」のロボットアニメが、『旧エヴァ』以降にどういう進化をとげているか意識して『ヱヴァ破』を見れば、そういう読みが立ち上がってきてもいいはずなのに、みんな意外と14年前と同じく、内面があるとかないとか、このキャラクターは現代の若者像としてどうだとか、そんなことばかり言っているように見える。

泉:今あるものと比較しすぎですよね。系譜学的に見ていない。

村:やっぱつながってるわけですよね。2000年以降の「GAINAX」の動きで『ヱヴァ序』って『トップ2』と映像的には見るからに接続されている。

さ:完全に接続されてるわけじゃないですか。『ヱヴァ破』のようなフィルムはポッと出てきたわけじゃない。マリを坂本真綾が演じていることにもものすごく意味がある。

泉:僕はネットラジオを『ヱヴァ破』で2回やってるんですけど、2回ともずーっと『トップ2』の話しかほとんどしてなくて(笑)。それくらい重要な位置を占めていると、僕は思ってますよ。

さ:そういうところを論点として語る人がいるんだったらいいんだけど、あまりにもいないので気持ち悪い。

泉:そもそも、まともな『トップ2』論を見たことない。『トップ2』論がちゃんと共有されてないから、みんな『ヱヴァ破』を語ろうにもリファレンスにならないんだと。

村:『トップ2』、いいんですけどね。

泉:僕は『トップ2』の話になるとまず石川賢の話になるので。

村:これは面倒臭いですよ(笑)。そんなリファレンスないですよ。

泉:え、『虚無戦記』を読んだことがないんですかっ!?

村:ないですよ(笑)。

さ:読まないですよ(笑)。

泉:少なくとも『幼年期の終わり』と『ゲッターロボ』シリーズを読まないと、トップ2はわからない!

村:いい話になってきましたが、ちょっとそこは迂回したほうがいいですよね。

■新劇場版『ヱヴァ』と『RE-TAKE』が示す二次創作のあり方


『天元突破グレンラガン1 通常版』 発売=2007年7月25日 販売=アニプレックス
さ:「GAINAX」の系譜で『ヱヴァ破』に影響していそうなのは、例えば『グレンラガン』とかですか?

泉:僕は意外と『ヱヴァ破』に『グレンラガン』は影響してないと思ってるんです。受け手の側の参照項として『グレンラガン』を利用してる部分はあると思いますけど、ここで目がギラギラすれば力が出るんだっていうのは、『グレンラガン』を見てる人間からするとある程度わかる部分なので。かといってそこは本筋ではない。単に演出の説得力として利用してるだけで。

さ:それはそうですね。受け手の意識として、『グレンラガン』を踏まえていないとああいう演出がアリだっていうふうにはなってないはずなんですよね。逆にいえば、『旧エヴァ』にこだわりのある人がそれ以降の系譜を意識しないで『ヱヴァ破』を見ると違和感を感じることになると思います。

村:鶴巻って、メインで携わっていたのは『トップ2」であって、『グレンラガン』ではないですよね。

さ:『グレンラガン』にはかぶってないんだけど、彼はクレバーな人でその辺のラインを押さえてる。見終わったときに「これは鶴巻かなり頑張った」と思った。結論の部分はすべて『Q』に対して丸投げをする格好になっているんだけど、それでもテレビ放送されてから現在までに『エヴァ』が抱えた構造を完璧に押さえましたと。つまり『序』を作ったときにウェルメイドの再制作でしかないことに、鶴巻は多分気付いてたと思うんですよ。現状、『序』は二次創作でしかない、じゃあ二次創作でしかないということを突きつけるフィルムを作ろうってことで、ああいう『破』が出てくるのかなと。だから『エヴァ』は『ヱヴァ破』でようやく二次創作に踏み込んだというわけでもない。エヴァを語り直すということが必然的に二次創作にしかならないということを示唆したフィルムなんだと思います。

『RE-TAKE 3』 製作=STUDIO KIMIGABUCHI
村:僕らの界隈では、直前に同人誌でSTUDIO KIMIGABUCHIさんが出した『RE-TAKE』がとても傑作ということで話題になっていました。論理的に突き詰めたらああなるって話ですよね。

さ:人に言われてなるほどと思ったことなんですが、『RE-TAKE』がすごいのは食事会の話とか、『ヱヴァ破』にすごく近いところがあるにも関わらず、子供を生むんですよねアスカが。庵野は『旧エヴァ』で父の問題を扱っていたけど、母性とか自分達が親になるんだって問題を扱えなかった。『RE-TAKE』はそれを扱ったから、結構すごい作品だったと。

村:そうはいっても22話でアスカは生理に苦しむシーンがあるので、種はすべて蒔かれている。つまり『RE-TAKE』のいいトコってのは、全部がTV版に根拠があるってことですよ。それは『破』も同じだけど。『RE-TAKE』っぽいことは実は『序』でやってるんです。『RE-TAKE』がいいのはセリフや画面までトレースで作ってる。『序』を先取りしてるんです。でも『序』ではストーリーラインは変わらないけど、違ったとこから持ってきた場面のソースで作ってるってことで、文脈に気づいた人はザワザワするんですよ。でも『破』ではそういう素材レベルの変化ではなくて、具体的な配役の変化が起きている。例えばテレビ版では参号機に搭乗したトウジが重傷、マンガ版では死亡しました。ところがそれって、トウジが常に死ぬ運命にあったというよりは、参号機に乗ったらヤバい、っていう方が正確だと思うんですよ。そう考えると、互換試験とかもやっていたことだし他のチルドレンも最新鋭の参号機に乗る可能性はあった。そして実際に今回はアスカがそうなったわけですよね。そういう意味ではこういうことが言えます。つまり、配役という前景の変化を準備するものとして素材の文脈を変えるという『序』の仕事があった。でも素材と配役は次元が違うので、『序』と『破』が分断されているというような感想を覚える人もいるかもしれません。

泉:『RE-TAKE』は真摯に作品のテクストを読み込んだ結果、こうならざるを得ない、こういう風になる、っていう回答であって、それをオフィシャルでやったのが『ヱヴァ破』だと思う。最初の提案は同じものなわけだから、似たような答えが出てくること自体は、やっぱり正着なんですよね。

さ:『RE-TAKE』は参照法として『旧エヴァ』をものすごく意識してる。でも僕が『RE-TAKE』よりも『ヱヴァ破』の方が二次創作以上のものをやってるなと思ったのは、『ヱヴァ破』はそうじゃないことができてしまう。

泉:マリを出せてしまう。

さ:マリを出すことができるんですよ。僕が『破』を見て思ったのは、マリが空から落ちてきてシンジが驚くシーンがある。あれって『旧エヴァ』にあった同じ構図を参照してるわけじゃないですか。あるいはシンジが戦って、レイが特攻するトコ、あれもほぼ同じ構図を使ってて、でも全然別の意味を与えている。それができるのがすごいなと思ったんです。たぶん二次創作として考えるとここの画面の意味はこうでなきゃいけないというのがあるはずだと思ったんですよ。『RE-TAKE』はそうじゃないんですか。

村:そうじゃないですね。

さ:じゃあ先取りしてるのかな。

村:『エヴァンゲリオン』の偉いっていうかずるいところは「GAINAX」は自社が作ったフィルムとか絵コンテを持っていて、それをハサミとかで切りつないで例えば前に使ったフィルムを20話辺りで使いまわしたりする。それは技術といえば技術なんですが、当時としてはリミテッドアニメゆえの苦肉の策だったはずでした。でも今回は完全に意識的な技術になっています。それはつまり、オーソリティのみが使える権利を全力で用いているということです。

さ:単なる二次創作じゃなくて、リソースを自分が持っていることを最大限活用してまったく別のものを捏造してるわけですよね。

構成=編集部 / 文=泉信行・さやわか・村上裕一


【注釈】
『ヱヴァ』のコピー誌 : 『ASUKA IS (NOT) DEAD!!! 』発行=emptiness

Key作品 : アダルトゲームメーカー「ビジュアルアーツ」のゲームブランドによる作品群。 『Kanon』、『AIR』、『CLANNAD』など。(編)

ガンスリの義体 : 相田裕『GUNSLINGER GIRL 』に登場する、全身を改造されて記憶を消去され、政府の特殊任務に従事する少女兵士たちのこと。大抵の義体にとって、改造前の過去は「忘れていた方が幸せなくらいに凄惨な記憶」であることが多い。 (泉)

『ネウロ』の怪盗X(サイ) : 松井優征『魔人探偵脳噛ネウロ』に登場するライバルキャラクター。自在に肉体を変形させられる能力を持つがゆえに、「元の自分のプロフィール」を忘れてしまっているという、正体不明の犯罪者。自らの「中身探し」……つまりアイデンティティを取り戻すために人間観察(やってることは殺人と強盗)をくり返す。物語中盤、サイが思い出そうとしていた「元の自分のプロフィール」は、本人が望まない形で、いともあっさりと明かされるのだが……。 (泉)

真のエヴァンゲリオン :『破』のラストで、翼が生えた初号機がそう呼ばれる。初号機以外のエヴァを「真のエヴァンゲリオン」にする計画だったようなゼーレ側の発言、初号機を覚醒させたシンジに対するマリの「都合のいいやつね」発言など、新劇場版は「真のエヴァンゲリオン獲得レース」として読むことも可能で、「願いを叶えてくれる聖杯の奪い合い」という側面が旧エヴァよりも強化されていると言える。 (泉)

『ユリイカ』の漫画批評の号 :『ユリイカ』2008年6月号特集「マンガ批評の新展開」 出版社=青土社 定価=定価1,300 円 『マンガの/と批評はどうあるべきか? / 東浩紀×伊藤剛』(編)

『トップ2』 : GAINAXが設立20周年記念作品として制作したOVA作品。「東京国際アニメフェア2007」でオリジナルビデオ部門優秀作品賞を受賞。監督は鶴巻和哉(前作にあたる1988年の作品「トップをねらえ!」は庵野秀明が監督)。 (編)

「GAINAX」 : 株式会社ガイナックス。『新世紀エヴァンゲリオン』をはじめ、『ふしぎの海のナディア』、『トップをねらえ!』シリーズ、『天元突破グレンラガン』を製作している。(編)

石川賢 : この場合は、漫画版『ゲッターロボ』シリーズの作者としての石川賢を指している。庵野秀明監督による『トップをねらえ!』の時点でも『ゲッターロボ』からの台詞引用などが多く、主役ロボ・ガンバスターそのものもゲッターロボのパロディ。また、「人類の無限の進化」をテーマにしてきた『ゲッターロボ』を引用するということは、そこで石川賢がオマージュを捧げているSF小説『幼年期の終わり』のテーマも継承することに繋がり、『トップをねらえ2!』はまさに『幼年期の終わり』→『ゲッターロボ』→『トップをねらえ!』というSF作品の系譜に応えるようなテーマが構築されている(トップ2のラスボス、「変動重力源エグゼリオ」が『ゲッターロボアーク』のゲッターエンペラーそっくり、などが観客へのヒント)。 (泉)

『虚無戦記』 : ゲッターロボシリーズに並ぶ、石川賢の代表作。「人類の無限の進化」というテーマを扱っている点で共通する。こちらはむしろ『天元突破グレンラガン』のリファレンスとして重要か。(泉)

『グレンラガン』 : 『天元突破グレンラガン』(GAINAX)。ロボットアニメ作品。2007年4月1日から同年9月30日まで、テレビ東京系列にて全27話が放送された。GAINAXが単独でアニメーション制作をした初のTVアニメ作品。(編)

鶴巻 : 鶴巻和哉。GAINAX所属のアニメーション監督、アニメーター。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の監督。2000年に『フリクリ』(初監督)、2004年に『トップをねらえ2!』を監督した。(編)

『RE-TAKE』 : 同人サークルSTUDIO KIMIGABUCHI発行の同人誌。2004年夏から18禁版が発行され全6冊にて完結。大きな反響を呼び、後に全年齢版が全三冊で発行された。現在サークルは活動休止中。(村)

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泉信行 1980年生まれ。漫画研究家。『ユリイカ』、『Quick Japan』誌で研究発表やコミックレビューなどをして活動中。2008年から今年にかけて発行された、私家版の同人誌『漫画をめくる冒険』シリーズ(ピアノ・ファイア・パブリッシング)に今までの研究成果が結実している。
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さやわか ライター/編集。『ユリイカ』(青土社)等に寄稿。『Quick Japan』(太田出版)にて「'95」を連載中。また講談社BOXの企画「西島大介のひらめき☆マンガ 教室」にて講師を務めている。

「Hang Reviewers High」
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村上裕一  見習い批評家。「東浩紀のゼロアカ道場」最終通過。講談社BOXから2010年1月に単著を発表予定。製作した同人誌「最終批評神話」を収録した『東浩紀のゼロアカ道場、伝説の「文学フリマ」決戦』が講談社BOXより発売中。

村上私記
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