連休特別企画
WEB sniper holiday's special contents
ばるぼら × 四日市
対談『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : 破』
【後篇】
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ばるぼら × 四日市
対談『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : 破』
【後篇】
構成=
ばるぼら・四日市
2009年、夏。WEBスナイパーが贈る連休の特別企画は、現在公開中の映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』をめぐる緊急マニアック対談! ネットワーカー・ばるぼらさんと、自称「エヴァ豚」のエヴァ研究家・四日市さんが、エヴァ界隈の諸状況を網羅して痒いところを掻きまくり&重箱の隅をつつきまくります。アニメ偏差値が高すぎる2人のネタバレ上等な対談ですので、暴言・迷言・狂言はご容赦のほどを。昨夜に続いて、後編をお届けします!
CAUTION!!
この対談はエヴァに限らず様々な作品のネタバレが全開です!!
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」 パンフレットより
この対談はエヴァに限らず様々な作品のネタバレが全開です!!
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」 パンフレットより
■次回予告から想像する『Q』
ばるぼら リツコの説明的な最後の台詞もよくわからないよね。「この世界のことわりをこえた、新たな生命の誕生」「セカンドインパクトの続き、サード・インパクトがはじまる。世界が、終わるのよ」ってやつ。
四日市 どうしても「新たな生命の誕生」って台詞が『トップ2』の「生き残るために人類そのものが変動重力源に進化するとしてもか」っていう台詞と被るなー。
ばるぼら なんで変動重力源になるのかは未だよくわからないけど『トップ2』では進化ではなく人類でいることが選択されたよね。
四日市 その後の台詞ですが、使徒とリリスとの接触がサードインパクトを引き起こす、とミサトやネルフスタッフは認識しているのに、リツコさんは認識が違うんだな。別にリリスと接触したわけではないのにあれがサードインパクトだとわかってる。あとリツコさんは「人に戻れなくなる!」ってくどいくらい繰り返しますよね。ザ・ビーストの時もそう。
ばるぼら 予告の「胎動するエヴァ8号機とそのパイロット」はアスカが8号機に乗るということかな。
四日市 「胎動」が、棺桶で眠っているアスカってのは悪くない読み。さすがにもう新キャラ増えそうにないし、あの2号機は使えませんよね。6号機がカヲル、7号機がマリ、8号機がアスカですかね。
ばるぼら 「ドグマへと投下されるエヴァ6号機」だから、またカヲル君が6号機でセントラルドグマに向かうんだろうね。初号機の覚醒=新たな生命の誕生&サードインパクトが起きるのをロンギヌスの槍で止めておいて、自分で起こすのか?
四日市 「誰によって起こされるか」ってのが重要なんじゃないでしょうか。『序』の棺の数も気になりますよね。あれは罠か? ガチか? もし新劇場版がループなら、先に空いていた棺にレイ、アスカ、シンジが入っていて……って推測が気持ちいいんでしょうなあ。サキエルとシャムシエルとラミエルで使徒の数も3体。単純に月から来てるよ、でも構わないわけですが。
ばるぼら あと予告にちょっと映ってた登山中の冬月。あれは旧テレビ版と同じ「ネルフ、誕生」の話かな。
四日市 でしょうね、あれが出てくると、リツコの母さんとか出てきて、またドロドロとした具合に……。
ばるぼら そういう話、劇場版でやられても嬉しくないな。
四日市 今回「使徒、侵入」がなかったじゃないですか。コンピュータウイルス型使徒の。あれがないのに、ネルフ誕生やってもな。誕生秘話が根っこから変わっているのかな。今回のマギってただのスーパーコンピューターだし。マギにリツコの母の死が宿っているってのがエヴァにも影を落としていたわけですが、今回は別にいらないよ、ああいうの。
ばるぼら うん、そういうのはテレビ版だけで十分。ジェットアローンが地球を救えば十分(※19)。
『天元突破グレンラガン1
通常版』 発売=2007年7月25日 販売=アニプレックス
四日市 それもいらないから。今回のラストはきっとみんな15歳になるんですよ。グレンラガンでやってますから(※20)あり得なくない。
ばるぼら そんな展開になったら驚きだ……。心の成長を描くのかと思ってたら、普通に体格が成長したら嫌だな。
四日市 ゲンドウと同じ顔になってね。
ばるぼら やっぱ親子って似るもんだな、とか。
四日市 見たくない! そんなエヴァ見たくないよ!!!
■ウルトラマンと父親と
ばるぼら 『破』の次は『急』だと思ってたら『Q』で、しかも他に『?』というのも上映予定なんだよね。あれは一体なんなのかと。
四日市 『?』はAじゃないの、って言われてますよん。
ばるぼら A?
四日市 ウルトラマンA。ヱヴァがウルトラマンってのはエヴァ豚的には前提知識ですよ。
ばるぼら え、そうだったの? 最初のスタジオカラーのアイキャッチ映像に『帰ってきたウルトラマン』の変身音が使われてたのは気付いたけど。『Q』が「ウルトラQ」から連想されてるってこと?
四日市 セカンドインパクトの巨人もウルトラマンだし、エヴァのデザインもウルトラマンがモチーフっていうの聞いたことがある。おもしろい意見では「序+破=ジョワッ!」だそうです。まあ元々ウルトラマンの意匠が多いじゃないですか。だから「急」が「Q」だった時点で、次は「A」だと。アンサーって感じにもなる。でもアンサーって言い切っちゃうのもどうかと思うので、そう読ませておいて別の単語が。
ばるぼら 「?」=「Question」で、これも「Q」だと思ってたよ。そのウルトラマン説が本当だとすれば、前回におけるデビルマンのように、今回はまんまウルトラマンだったりするのかなー。
四日市 いやいやいや。今回も途中から実写化、ジャージにウルトラマンの音をサンプリングした庵野監督(※21)の登場ですよ。
ばるぼら そこまで原点回帰するのかよ。オリジナル『帰ってきたウルトラマン』の最後ってどんなだっけ?
四日市 「君も、嫌なもの、許せないものと戦える、勇気ある男になるといい」。
ばるぼら まさに成長だ! そういえば最近、野火ノビタのエヴァ批評同人誌を読んだんですよ。3冊目の『僕は天使ぢゃないよ』(1997年8月)。野火の『大人は判ってくれない』(1996年8月)は庵野が当時唯一褒めたエヴァ批評だったんだけど、この『僕は〜』で庵野が「ゲンドウはいらないキャラなんですよ」「父と息子のカクシツとかそんなものはガンダムやヤマトの影響で、自分の中にはなかったんです」と語っていて、野火は「ゲンドウって父親になれない父親としての庵野さんなんじゃ」と推測してる箇所があるのね。でも今回の『破』では、ゲンドウが「また逃げ出すのか。自分の願望はあらゆる犠牲を払い、自分の力で実現させるものだ。他人から与えられるものではない。シンジ、大人になれ」って、父親っぽいことを言うんだよね。12年のあいだに庵野秀明も成長したのかなと思った。
四日市 旧作ではいらないキャラだったはずのゲンドウとシンジのカクシツばっか取り上げられてうざかったので、典型的な父親として登場させて物語そのものから遠ざけようとしているのかも。
■『破』と初心者の関係
四日市 ところで、庵野の所信表明文に「中高生のアニメ離れが加速していく中、彼らに向けた作品が必要だと感じます」とありますよね。あと最後の「エヴァンゲリオンを知らない人たちが触れやすいよう、劇場用映画として面白さを凝縮し、世界観を再構築し、誰もが楽しめるエンターテイメント映像を目指します」という部分。でも新劇場版って、旧作を知らない人にはわかりにくい内容になってると思うんだけどどうか。
ばるぼら そうだね。実際に、新劇場版で初めてエヴァを観る人の感想を沢山知りたい。
四日市 特に、純粋にただのアニメオタクで、話題らしいので見に行った、みたいな人の感想が知りたい。
ばるぼら その人たちが満足してるなら成功でしょうな。
四日市 旧作を知る人間が心配しすぎ、庵野のマーケティングの方が優れていたという結果ならいいですね。
ばるぼら 昔テレビシリーズを観た時によくわからなかった記憶のせいでしょうね。
『ラブ&ポップ』 発売日=2003年7月24日 販売=キングレコード
四日市 久々に表明文読み返したけど、庵野さん、あくまでフィルムに定着させたのは「気分」であると言っちゃってますね。
ばるぼら 「自分の正直な気分というものをフィルムに定着させたいという願い」か。今の庵野監督にとって「自分の正直な気分」ってどういう意味かな、「『ラブ&ポップ』とか『彼氏彼女の事情』とか『式日』とか色々やったのに、お前ら結局エヴァなんだろ!」っていう気分なら楽しいな。
四日市 『キューティハニー』も忘れないで!
ばるぼら 頭から完全に抜けてた!
■ヱヴァにおける鶴巻
『フリクリ
DVD-BOX』発売=2005年7月6日 販売=キングレコード
ばるぼら あと、我々はここまで庵野秀明にとってのヱヴァを語ってきたわけだけど、『破』の監督である鶴巻和哉がヱヴァをどう描こうとしたのかを考えておきたい。この場合、『フリクリ』(2000年〜2001年)と『トップをねらえ2!』(2004年〜2006年)の流れがあるわけだよね。『フリクリ』はあんまり覚えてないんだけど、この2作に共通するものってあった? 『トップ2』の「第二のビッグバンが始まるわ」って台詞とリツコを重ねるのはナシね。
四日市 どちらも想像力を現実に干渉させる能力の持ち主が主人公ってところ?
ばるぼら そうすると『破』は、想像力とは違って、もっと行動で現実を変えていこうとするよね。旧エヴァは最後までディスコミュニケーションだったけど、『トップ2』は最終話でノノとラルクの二人がそれを超えようとする。「英雄とはいつも孤独」なのだけど、孤独から友達に成長していた。あれ、『トップ2』も成長?
『トップをねらえ2!
(1)』発売=2004年11月26日 販売=バンダイビジュアル
四日市 成長物語ですね。「人類が真の大人になるための通過儀礼」を乗り越えるお話。最初は大人が弱いんですよね、フラタニティに対して。でもそれは本当の敵が隠されていたからで、旧作の遺物とトップレスが遊んでいただけ。本当の敵が出てきた途端に世界がリアリティを持ち始める。プライドの高いチコが先に救われるというシナリオも今回のアスカを思わせますね。まあアスカは棺桶の中ですけど。牙を剥いた世界に対して、第五話でラルクは命を捨てて人類を守ろうとするけどノノに見捨てられてしまう。見捨てたんじゃなくてラルクに生きて欲しいと思ったんだと思いますけど、一旦は引いて、巨大化して戻ってくる。私がラルクを守らなければ、と思ったんですかね。でも強さは体の大きさじゃない、と。
ばるぼら 「強さは体の大きさじゃない、心の力だ! そうなんだろ! ノノ! それが努力と根性だ!」は名シーンだな。現実を凌駕しようと想像力で巨大化したノノでさえ一人では勝てないというのが。
四日市 五話で命を捨てて地球を守ろうとしたラルクを死なせたくないと思ったノノが、六話では自分が犠牲になろうとしているという逆転。どちらにも勝ち目はなかったんですよ。
ばるぼら そして協力して敵を倒すと。最後は「トップレスなんてないほうが幸せになれる」って発想を否定して、トップレスだったからこそめぐり合うことができたんだ、って肯定に変わる。実にハッピーエンドで、実に大団円で、実に王道。この展開は旧エヴァにはなかった。もし鶴巻が新ヱヴァ最終話の監督だったら、ヱヴァも似た展開になってたかもしれない。
四日市 エヴァのパイロットは不幸、でもエヴァのパイロットだったからこそめぐり合うことができたんだ、おめでとう! あがりを迎えてバスターマシンを動かせなくなったラルクの、ノノを助けたいという願いを叶えるためにディスヌフが再起動したように、綾波を助けたいという願いを叶えるために初号機が再起動したのも似ていますね。
ばるぼら 鶴巻監督が『トップ2』で描いたテーマはシンジが綾波を救う所までに表現されていて、でもそこにカヲル君が槍を投げてきてエヴァの物語に回収した。カヲルがエヴァ、庵野監督の世界観の強固さを表しているのかもしれないね。
四日市 『破』のパンフレットの鶴巻インタビューでも制作の状況がそのまま物語に反映されるようにしたい、と言っているし、今回の感想に「たいして壊されてないじゃん」って意見が多いけど、壊そうとしてもガチホモが槍を投げてくるんだよ!
ばるぼら 大団円ラストは庵野自ら監督する、ということかな。
四日市 みんなで力を合わせて大団円に持っていけばいいじゃないですか……。一人で地球を救おうとしたラルクとノノで宇宙怪獣には勝てなかったんですよ。鶴巻と庵野が力を合わせなければ旧作怪獣には勝てない……。
ばるぼら 諦めてさえしまわなければ願いはいつか叶います。時間はいくらでもありますから!(※22)
四日市 また公開延期ですか!!
■ヱヴァはどう終われば満足か?
ばるぼら でも実際、次回の『Q』はどうすれば大多数を納得させて終われるんだろう。ハッピーエンドも、旧作みたいなバッドエンドな感じになるのも、どちらの可能性も既にファンは待ち構えて受け止める用意ができてると思うけど。あらゆる可能性は既に試されてると思いませんか? ポカポカする、みたいなエピソードでさえ『育成計画』からすれば既知のものですよ。
四日市 繰り返しますが、王道、ですかね。この王道不在の状況下、何の文句もつけようのない王道を作ることができたなら新しいアニメファンのためにもなるのでは。……ならねーか。王道がないって状況を我々は用意してきたんだから。
ばるぼら 「用意してきた」とは?
四日市 勧善懲悪、成長物語、王道ってものが正しいとは限らないとみんな知っているわけではないですか。正しいことなどない、ってこと。だから人物のバックボーンを書き込んで、このキャラにとってはそれが正しい、と納得させなければ物語は作れない。
ばるぼら もともとエヴァは登場キャラの各々の正義で好き勝手動いてたじゃないですか。それを王道という形で、一つの正義を持たせることになるのかな。正義ってなんだ?
四日市 生きることを望む、ですよ。後藤隊長でも成し遂げられなかった「みんなで幸せになろうよ」(※23)をヱヴァでやろうとしている。逆算すると、欠損した魂を一つにしてもそれは生きるということではない、と。
ばるぼら なるほど、旧作の人類補完計画の否定につながるわけね。
四日市 痛いことや苦しいことをありがたがるなんて馬鹿みたいじゃないか。でも、それが人間ってことなんだ!!(※24) でもノノリリ(※25)には友達が必要だったわけで。
ばるぼら それだと『トップをねらえ2!』と同じテーマを持つことになるなあ。やっぱり一人じゃ寂しいんだ?
四日市 寂しいよねー。『Q』では5体が同時に登場する展開はありそうな気がする。ネルフ司令室の通信用ウィンドウが、5つ並んでるんですよね。サハクィエル戦では3人の窓が開いて、その横に2つ、映ってないのがあった。
ばるぼら じゃあシンジ+レイ+アスカに、マリ+カヲルが加わって何かなると。普通にあり得るね。旧テレビ版の最後で、シンジがみんなに拍手されるシーンがあるでしょう。あれが目指すべきハッピーエンドだとすると、「父に、ありがとう/母に、さようなら/そして、全ての子供達におめでとう」というテロップが意味するのは、シンジが父親を認めて、母親=エヴァに乗らなくてもよくなり、かつ子供達=エヴァ搭乗者の全員が欠けずにいられる状態というわけだ。それが10数年越しに叶えられると。
四日市 新世合体ゴッドゲリヲンかもしれないですけどね。
ばるぼら 何それ?
四日市 ↓。
レイ「ヤッコさん、お出ましのようね!」
マリ「渚のォ!この戦いが終わったら必ずケリィつけるからねェ!」
アスカ「あんたバカァ!フラグたててんじゃないわよ!」
シンジ「おおっと無駄話はここまでだ。さァてぇ、いっちょやぁってやるぜ!」
カヲル「行くよ、アダムの分身達!」
全員「新世合体!ゴォォォッドゲリヲォォォォン!!」
ばるぼら そんな展開だったら劇場で目からコーヒー流して泣くよ!!!
構成=ばるぼら・四日市
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
ニコミを制作中。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/ |
四日市 エヴァンゲリオン研究家。三度の飯よりエヴァが好き。クラブイベントにウエダハジメ、有馬啓太郎、鶴巻和哉らを呼んでトークショーを開いたり、雑誌に文章を載せてもらったり。プロフィール画像は昔描いた三十路魔法少女漫画。 |
09.07.20更新 |
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