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「台風と赤いハイヒール」
告白= 逸木登志夫(仮名)

昭和三十年年初頭、或る大学の寮で繰り広げられた密戯が長い時を経て今に蘇る……。浣腸の背徳に戦慄く人妻、エスカレートしていく「調教」、異端のプレイに堕ちていく二人の姿を当事者男性が綴った告白手記の中身とは。『S&Mスナイパー』1981年7月号より、再編集して掲載しています。
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愛の誓い

寮の建物は戦時中にできた洋裁学校の跡だとかで、モルタル木造のガタガタした小さい二階建てであった。

その前日、かなり風が強まってきたので、私は多美子に、「お母さんに電車が止まるといけないから早めに実家へ戻ってもらうように言いなさい」と命じた。

私の求めていることを悟った彼女は、来るべきアバンチュールを楽しむように、「明日は、早く来てね」と私の手をしっかり握るのであった。

翌朝、台風は四国を縦断し十一時頃兵庫県に上陸の予想、というラジオを私は聞いた。そしてタクシーを飛ばして寮に向かった。

多美子は私が来たのを知って急いで戸を開けた。

「あーよかった。うち、あんたが今日来いへんのか思うて、もし休まれたらどないしようか思うてたんや。大風やし、ガタガタして怖いし」

そう言って潤んだ瞳を向けてくる彼女を、私は強く抱きしめて唇を吸った。P号室でのエネマ以来、多美子の気持ちは竹本から離れて私のほうに大きく傾いていたのである。

私は初めて人妻と関係を持つというスリルに胸を躍らせていた。彼女も不倫の予感に興奮したのか、私の背中に廻した手に力がこもっていた。私たちはエネマプレイを重ねてはいても、まだ純粋な肉体関係は持ってはいなかったのである。

ごーっと風が吹きすぎるたびに建物がガタガタとゆれた。その中を、私は多実子と手をとり合いながら各部屋が無人であることを確認して回った。

それが終わると彼女は一階の自分の部屋に私をつれ込んだ。ちゃぶ台の上に朝食が容易されており、横には布団が敷かれていた。

私はこの又とないチャンスにどんなムードのエネマプレイをしようかと思いをめぐらせながら朝食を摂り、なんとはなしに多美子の肉体を洋服越しに観察していた。その間、多美子は頬を火照らせ、正座した膝をもじつかせていた。

その目が赤い。

「うち、昨夜寝られへんかったんや。ガタガタいうて怖うて」

言いながら私の膝に手をのせてくる。折りしも風雨が一番激しくなった頃で、刹那にごーっという唸りと共に建物がゆれた。多美子が「あ!」と声をあげて私にしがみついてきた。

私は「多美ちゃん」とささやいて力一杯抱きしめてから、乳房を強くもみしだいた。

彼女は大きく身もだえしながら、「今日こそ、あんたと遊べるんやね」と初めて私に抱かれる興奮に熱いあえぎ声を迸らせたのであった。

仰向けになった彼女の下腹に手をやった私が、「お腹が張ってるやないか、この頃ずーっとしなかったから浣腸しいへんか」というと、「嫌やわ。折角、気分出てるのに、あとでいいやんか」と多美子がかぶりをふった。

「なんや情夫のいうことが聞けへんのか。だったら別にかまへんで。何も多美ちゃんだけが女やないしな」

私がそう突き放した言い方をすると、多美子は途端に大人しくなる。気をよくした私は、考えついたままに彼女に化粧をさせてみた。さらに、その頃読んだ雑誌の中に外人娼婦がハイヒールを穿いたままでベッドに仰向けになったという記事があったので、彼女が持っている赤いハイヒールを穿かせてみた。

前にも述べたが、米女優のクローデット・コルベールに似た顔立ちの多美子は、それだけでなかなかのムードをかもしていた。

鏡を見てポーッとなった多美子が、ゆっくりと服を脱いで腰をくねらせ、全裸にハイヒールという姿で仰向けに布団の上にねころんだ。

私は畳の上に新聞紙をひろげ、用意してきたバッグの中から浣腸用具一式とヌードグラビア集などを出して手早く並べると、多美子の女用のベルトを借りてヒュッヒュッとふった。

驚いて起き直った彼女に、浣腸前の準備運動としてポーズを振り付けることを告げ、グラビアの中から二、三の気に入ったポーズと同じ姿勢を取るように命じた。

かなり恥ずかしい形もあったが、鞭の音にせきたてられて、やむなくポーズをとる多美子の姿からは女の恥じらいが強く感じられた。

四つん這いで尻を多く突き上げさせる、脚をMの字に広げさせる、さらには彼女を仰臥させて腰の下に握り拳をあてがわせ、大きく開股させたた上で腰を上下させた。

私がベルトを振りながら、「ひとーつ、ふたーつ」と声をかける度に、多美子の下半身が何とも妖しい影を作り、それは何とも言いようのない卑猥な光景だった。

「さあ、この辺でいよいよはじめるか」

私はポットからかなり熱い湯をカップにとり、グリセリンを混ぜて薬液を作った。浣腸器を出して吸い上げると、「今日は、それでするのん? そんな注射みたいなん怖いわ。耐え切れんのと違うか?」と、これから始まる苦痛と排泄感の切なさ、もどかしさの予感に不安の色を浮かべた。

薬液を少し出して嘴管の先端を濡らした私は、仰向けになり枕を尻の下に入れて高くし、そして充分開股した多美子のアナルに近づけた。

先端がそっと触れるとピクンとお尻がくねり、彼女は放心したような目をあけ、赤い口を大きく開いてハーッハーッと息を荒くしている。

しかし、そのままグーンと挿入するや「あ〜ッ」と声を上げて跳ね起きてしまった。

「熱う。熱いやんか。そんなんやったら、うち耐え切れへん」

泣き出しそうな表情になっている。薬液は決して熱いという程ではなかったが、彼女はそれまで温かい液を経験したことがなかったので、余程驚いたものと思われる。

そこで私は余りにも早く耐え切れなくなられては充分に責め気分が味わえないと思い、いったん場所を変えてみることにしたのである。

現在は水洗式でないほうが不思議なくらいだが、その当時は汲み取り式のトイレがほとんどで、寮の建物でも水洗トイレになっているのは舎監室のものだけであった

しかも、それは今のものと比べると旧式で、木製の水漕が高い所にあるものだ。そこから水道管が真っ直ぐ下りてきて、便器の前に達しているのである。

私は多美子をトイレに導くと、便器を跨がらせてから体を斜めにさせた。また足を浮かせて膝の下をくぐらせた右手を伸ばし、木管を左右から両手で挾ませて手首を縛ったのである。

私は彼女の背後に廻ってしゃがみ、顔をこちらに向かせると、すばやく準備を整えた。

異様な受浣姿勢をとらされて、彼女は再び不安の表情を浮かべ、「さっきみたいな熱いのは、いやえ」とすがる様な目で私をみつめた。

私はゆっくりと薬液を注入する。

注入時の悪感に「あーっ!」と声をあげて身をふるわせる彼女。

私がしばらくタイムを置いてもう300cc注入しようとすると、「う……うーん」と強いうめき声を出してお尻をくねらせて、多美子はあえぎ始めた。

手早くピストンを押し、嘴管を抜き取る。アナルはぴくぴくと可憐な痙攣を繰り返していた。そこをちり紙でしっかり押さえていると、

「もうあかんわ。洩らしそうや、五分と耐えきれへん……」

多美子が泣き声になった。

規定の五分ぎりぎりの頃になると、うめき声が一層強まった。脂汗を浮かべ、小きざみに体をふるわせるたびに赤いハイヒールがゆれていた。

排泄の際には「愛の誓い」を言うようにとあらかじめ打合わせておいた通り、切ない声で多美子は、「うちは心からあんたの女、あんたの愛の奴隷」とはっきり叫んだ。私が急いで手首の紐をどき、後ろからかかえあげてやると、ぶるっと身をふるわせてどーっと排便した。

多美子はそのまましばらく肩で息をしていたが、再び残りの便を排泄し、そののち小水を迸らせた。

私が部屋に先に戻っていると、やがて恥ずかしそうに、顔を隠すようにドアを開けて入ってきた多美子は、どっとと布団に身を投げるように倒れ伏した。

抱きよせて「辛かったか?」とささやくと、両腕を私の首に巻きつけてきて、「もう、くたくたやわ」と笑いながら目を閉じるのだった。

その表情には愛する男性に責められた女の喜びがはっきり浮かんでいるようで、私は多美子がとてもいとおしく思え、そのまま体を重ねていったものであった。

以来、私が退職するまでの一年半の間、彼女と私の間の秘められた関係は続いた。

私も人妻に手を出したことはそれが最初だったので、もっと楽しみたい気があったのだが、良い就職口が見つかったことが別れのきっかけとなった。

これは後で知ったのであるが、前の下宿先に何回も彼女から電話や手紙で私の消息を知りたいと連絡があったとのことである。

その後、彼女は寮生の一人と浮気して竹本氏と離婚したという話も聞いた。

もう二十年も前のことであるが、私にとって多美子は台風の日に私のエネマ責めに激しく燃えた赤いハイヒールの女性として、記憶の中に今も生きつづけているのである。

告白= 逸木登志夫(仮名)


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09.10.18更新 | WEBスナイパー  >  スナイパーアーカイヴス
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