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『S&Mスナイパー』1986年11月〜1987年1月号 読者投稿手記
「元女王様、マゾ転向を遂げる」
投稿者=木原玲子34歳(仮名)

M性に目覚めた女王様がとった行動、それはSM雑誌の編集部に電話かけて、自らマゾのプレイモデルに志願することだった――。戸惑いの中で縄を受け入れ、初めて責められる立場になった女性の心と身体に起きた変化とは。『S&Mスナイパー』1986年11月〜1987年1月号に3度に分けて掲載された体験告白を再編集の上でお届けしていきます。
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調教1日目 「私を責めて下さい」と編集部に電話をかけて……

今でも、どうしてあんな恥ずかしい電話を編集部にかけることが出来たのか、自分でも不思議でなりません。

SM歴こそ、長いほうだとは思いますが、それまでの私は、決して自分のこの性癖を他人に公表しようなどと思ったことはなかったのですから……。

私の名前は、仮に木原怜子としておきましょう。年齢は34歳。独身で、2LDKのマンションに犬と一緒に住んでおります。

職業は保険の外交。とりたてて目立つところのない、平凡な独身女性像といえるでしょう。でもそれは、あくまでも表面上でのお話です。

実をいうと、私は4年ほど前、六本木のSMクラブで女王様をしていたことがあるのです。

六本木という土地柄か、マスコミ関係の方や、一流企業の重役のお客が多く、私は普段、お偉いさんとして部下をアゴでこき使っているであろう人達を、思いきり身悶えさせていたのです。

趣味と実益をかねて、自分でも楽しみながらやっていましたが、ちょうど1年で辞めました。そのまま、それを職業として、どっぷりとその世界につかってしまうことを恐れたのです。

というのも、私の心には、SMという普通ではない性癖があることに、どこか後ろめたい気持ちが存在していたから。ごく普通の性生活を営んでいる人たちから見れば、自分は異常なんだ、という気持ちが強かったのです。

そんな私にとって、本誌1986年7月号に登場した、『謎の画少女……たま』は衝撃というより他ありませんでした。こんなにもあけっぴろげに、こんなにも明るく、SMに触れている娘がいるなんて。

その瞬間、私は目からウロコが落ちた気がしたのです。人知れずひっそりと咲く、陰花植物のごとくにSMを捉えていた私の中で、ある欲望が湧きあがってくるのに、そう時間はかかりませんでした。

陳腐な表現かも知れませんが、私も翔んでみたい、もっともっとSMを楽しみたい、そう思うようになったのです。

最初、思いきって編集部にお電話した時は、「編集部の人間がプレイすることは出来ませんので、マニアの方を紹介します」と言われ、どうしようかと迷いました。私には今、ステディな関係のプレイ相手がおり、いくら編集部のご紹介とはいえ、見ず知らずの男性とのプレイは少しまずいのではないか、と思ったのです。

私は彼と相談をし、プレイを見られるのは構わないが、マニアの方との肉体関係(つまり、キスやフェラチオも含めて)までは困る、と条件をつけることにしました。 本当は勝手なお願いだというのは判っていましたが、編集部の方は快よく私の条件を呑んで下さり、結局、私は事情を理解して下さった編集部の方とプレイすることになったのです。

プレイにあたっては、私は今までの女王様ではなく、Mの側でお願いしました。 以前から薄々感じていたことなのですが、私は、Sの面が色濃くある反面、Mっ気もあるようなのです。

私の彼は、私がクラブで女王様をしている時に知りあったお客さんで、当然M男性ですから、私がMを味わいたいと思っても、無理なのです。かといって、まだまだ閉鎖的な世界ですから、信頼ができて、安全にプレイできる相手を探すといっても、適当な方法が見つかりません。

私が編集部にお電話した根底には、たまさんに啓豪されたということもありますが、Mの欲望が抑え切れなくなったということもあったのだと思います。

初めてお会いした編集部のXさんは、とても大柄で、少し陰のある、笑うといかにも優しそうな方でした。私もこの方なら安心してお任せできると、ホッとしたものです。

いくら女王様をやっていたとはいえ、M女は初めての経験。大体、どんなことをするのかという見当はついていましたが、実際に縛られたら、自分がどんなふうに感じるのか、求めていた何かが得られるのか、不安でならなかったのです。

Mプレイは初めてということで、プレイはソフトタッチから始められました。

いつもなら、「さあ、何をして欲しいのか、お願いしなさい。何が欲しいの? 縄なの? はっきりしなさいつ!!」と私が命令するところ。

でも今日は逆に、縄を持ったXさんが私の前に立ちはだかります。

私は頭では、「今日はM女なのよ」と理解しているつもりではいましたが、やはり戸惑いは隠せませんでした。「どうした? 縛られるために来たんだろう? 何か忘れているんじゃないのか?」

そう言われて私は、「そうだ、今日は私はM女。縄をお願いしなくてはいけないんだわ」とやっと気付き、Xさんに「お願いです、ご主人様、どうか存分に縛って下さい」と頭を下げたのです。

Xさんは、まず私の両手首だけをしっかりと縛りました。それだけで驚くほど自由が利かなくなるのです。彼は縛った縄の先を持ち、力任せに引っ張って、私を床に転がします。

すかさずカメラマンが犬のように引かれて這いずる私めがけてフラッシュを焚きます。

私の口からは自然と、「あ、やめて、やめて下さい」という言葉がこぼれていました。 そう言ってしまうことでなおさら、相手も自分も高ぶってしまうということが判りきっているはずなのに。

Xさんは私の両脚を大きく拡げさせると、スカートをめくりあげ、そこをカメラに狙わせます。

あごを掴み、ぐいとねじ上げ、ポーズをとらせます。

「あ、いや、お願い……」

私は呪文のように同じ言葉を繰り返しながら、かつて味わったことのない、支配される快感を覚え始めていました。

縛られる、という受け身の行動は、いかに自分を無防備にしてしまうものなのでしょうか。縛る側か縛られる側か、ただそれだけの違いなのに、心の在り方の根底から変身してしまうのです。

私は後ろ手に、乳房を挾むように縛り上げられた時、自分が変わり始めていることにはっきりと気がつきました。 体のふしぶしに喰い込む縄が、きつければきついほど、「ああ、もっと……もっと」という欲望が湧きあがってくるのです。

もちろん、彼はそんな私の変化が手にとるように判るのでしょう。俯せになった私の顔を床にこすりつけ、お尻を高く掲げさせるという、かなり恥ずかしい格好を強要するのです。

そして、肩と両膝との四つん這いになった私のお尻をパシパシと叩きながら、「どうだ? 淫らな格好だぞ? 判るか? スケベなお尻が丸出しだぞ」と、私のMを煽るのです。

私は、顔から火の出るような恥ずかしさと、自分がどんな格好をしているのかという想像とで、体の芯が早くも火照りだしているのが判りました。

パンティをずり下ろされ、フラッシュが光る度、私は言葉にならない悲鳴を上げながら、Mの快感にどんどん引きずり込まれていくのです。女ですから、そんな淫らな自分を晒けだすのはとても堪え難いことです。

私は知らず知らずのうちに、フラッシュから身を隠すように体をよじっていました。

それなのに彼は、「随分、感じてきているんだろう、あの匂いが早く解き放ってくれと催促しているぞ」と言って、私のパンティを完全にはぎとり、脚が閉じられないように縄で固定してしまったのです。

「あ、だめ、そ、そんな……」

すでに腕も脚も、身動き出米ないくらいに縛られているのです。抵抗するなど出来ません。

ひんやりとした冷房が熱く滴る私のあそこに触れて、「ああ、とうとうこんなところまで晒け出してしまった」という羞恥が一気に私を襲いました。

「もう、こんなにビッショリじゃないか」

見られている、私の濡れそぼったあそこが見られている……。

目を閉じていても、彼の視線は痛いほど感じられ、私のあそこは初めての刺激に震えながらどんどん昇りつめていきます。

はしたない、私はなんてはしたないMだったの……。

女王様のままでは絶対知ることの出米なかったもう一人の自分。こんなにもM女になってしまう自分に震えおののきながらも、私はのめり込むようにプレイに没頭していったのでした。

(続く)

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