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されど俺の日々  第五回

文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣


次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。
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逆上と衝動の法廷ドキュメント、第八回をお届けいたします。
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犯罪の匂い

正太は一週間ほど次郎のマンションに居候をし、故郷の町に戻った。
戻った理由は新たなる仕事を開始するための準備であった。
次郎は再び手形パクリの仕事を始めようとしていた。
そのためには当然、犠牲者となる手形所持人あるいは手形振出入の存在が必要となる。

次郎が正太に依頼したことは正太の町で資金繰りに困っている会社はないかどうか調べて欲しいということであった。
次郎は正太からの報告があり次第現地に乗り込み、得意の口舌を稼働させて手形をパクッてしまうという段取りになっていたのである。
次郎の命を受けた正太は一路故郷に向かう。
当面の軍資金として、正太は次郎から相当の金を受け取っていた。

次郎の女は、バーかクラブのホステスをしており、彼にどうやら生活費を貢いでいるようだったから、本来の金の出所は、そのホステスということになろうが、正太にとってはそんなものはどうでもよいことであった。
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一週間ほどの滞在中、女は殆んど毎日次郎の部屋を訪れた。
夜遅く帰ってくると、正太の存在など全く無視して、よがり声をたて始めるのである。
長い刑務所暮らしの禁欲生活の後の独身の正太にとってはたまったものではない。
最初は何と図々しい女だと思っていた正太も、女のあまりにも堂々とした喜悦の声を壁越しに聞いているうちに、どうやら二人は自分の存在を意識して、刺激を感じながら交わっているらしいと気付いた。
そうでなければあれほどあからさまに、

「いく」

とか、

「そこよ、もっと」

とか、

「舌でして」

とか言えるはずがない。
故郷への電車に揺られながら正太は夜毎の次郎と女の交わりを思い浮かべ、一人で興奮していた。
いい女だったな、小柄で腰の所がきゅっと締まって。
俺の好みだったな。
俺の顔を見てにっこりしてたな、しかし、どうして女というものは夜あんなことをしているくせに、朝になると、何にも無かったような顔が出来るのかな。

二時間ほどの車中、正太は女のことばかり考えていた。
そう言えはしばらく正太は女に接していなかった。
よし、今夜は女を見つけるか。
これで今夜の行動は決まった。

(続く)

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07.08.13更新 | WEBスナイパー  >  スナイパーアーカイヴス