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法廷ドキュメント 闇の中の魑魅魍魎
法廷ドキュメント

闇の中の魑魅魍魎  第八回

文=法野巌
イラスト=兼田明子


身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。
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久しぶりの登場、法廷ドキュメント第九回をお届けいたします。
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殺害教唆

父親の暴力がすべてを物語っていた。
何ということだ。
男の言ったことは本当だったのだ。
まさかとは思い、そんなことはない、信じたくないと思っていたことが本当のことだったのだ。

この日を境に誠子は一変した。

男は一週間に一度、誠子の家にやってくるようになった。
男がやってくると、父や母は二階に黙って立退いていった。
父も母も誠子も、男も全員が、金利のかわりに誠子の肉体を提供するという取引に参加したのだった。

誠子は、自ら男の首に腕をかけ接吻を求めて行った。
淫らになってやる。
最高に淫らな女になってやる。
淫らになることが大人に対する復讐だ。

誠子の女は急速に開発されて行った。
男が驚くほど、誠子は淫らになっていった。
男に教わることなく、男のそれを口に含み、舐めまわし、自分が上になって男を下半身に収め腰を使い、呻き声をあげた。
二カ月もすると誠子は、自ら積極的に性交をリードするようになっていた。

高校を卒業すると、誠子は男の紹介で、大阪で質屋を営業する男の愛人となった。
質屋からは相当多額の謝礼が男に手渡されたはずだった。
ことあるごとに質屋は、お前には金がかかっていると言っていた。
今度の男は六十五歳拉の年齢であった。
大利根とは大分年の差があり、それだけ、誠子との交渉においては、道具や器具を用いることが多かった。
二号になって半年も過ぎる頃、誠子は緊縛やアヌスの味を覚え込まされていた。

そんな生活か五年間続いた。
誠子は二十五歳になっていた。
肉欲だけの毎日を送っていた誠子は、もう通常人の感覚はなくなっていた。
大人に復讐するために没入したセックスの世界だったが、今や当初の目的は喪失して、誠子の肉体だけが独立して歩き出していた。

質屋は年老い、若い誠子の言うことなら大抵のことは聞き入れてくれた。
五年間のうちに、主客転倒していた。

そんな時、街を歩いていて偶然にあったのが大利根であった。

大利根とはこの五年間、全く音信不通だった。
誘われるまま誠子はラブホテルに入り、大利根に身を任せた。
質屋よりも三十歳も若い彼の体は、誠子を夢中にさせた。

そんな誠子を見て、大利根は自分の連絡場所を教え、再会の約束をしたのだった。
どうやら大利根は組に不義理を働いて追われているらしく、誠子に老人の殺害を教唆し、金品を奪い一緒に外国へでも行ってしまおうと言い出したのは、再会してから三度めの情交を持ったときだった。
その時の大利根の目は、八年前の、誠子を女にした時のあの蛇の目だった。

誠子が久しぶりの性交で、興奮している老人の首を絞めて殺害したのはそれから一週間ほど後のことだった。

(続く)


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07.11.08更新 | WEBスナイパー  >  スナイパーアーカイヴス