『S&M Sniper』Archive Galley 08.1981.
1981年8月号 P239〜246
bondage photo gallery 「真性M女依枝」
SM界の衝撃ベストセラー誌スナイパー。創刊号の発行は、いまからさかのぼること30年前、1979年です。その当時から“魂の暗部を狙撃する雑誌SNIPER”というキャッチコピーは変わりません。そんな『S&Mスナイパー』の歴史を少しずつ紹介していくアーカイブギャラリーです。
依枝と付き合っていたのは10年も前のことだ。いや、そう言っては語弊がある。俺と依枝の関係は、いわゆる不倫だったからだ。
依枝には旦那がいた。彼女より25歳も年上の、かつて依枝の教師だった男だ。
中学生の頃、依枝はバドミントン部に所属していて、その男はバドミントン部の顧問をしていた。名前だけの顧問で、実際にラケットを振ることはなかったらしい。
男は、自ら進んでバドミントン部の顧問を申し出たのだという。そして熱心に部員たちの活動を見ていたのだそうだ。見るといっても指導をするわけではなく、ただ単にジィッと見詰めていたという。
依枝とその男が「デキている」という噂が立ったのは、依枝が中学2年の時だった。
依枝は当時から女っぽい体つきをしていたが、性格は地味で暗い印象だったから、その噂はやたら衝撃的で、生々しかった。
部活のユニフォームを着た依枝が、男に連れられて深い森に入っていくところを見たという者がいた。またある者は家族と車に乗っている時、男の運転する車がすぐ横を追い越していき、助手席に依枝がラケットのネットに使う糸で縛られているのを見たと言った。
その噂を聞いた時、俺は依枝と同じ14歳だった。クラスでは依枝の真後ろの席に座っていた。
俺は毎日想像した。目の前の華奢な首筋に血管が浮かび、薄い肩や細い腕にネットの糸が絡まり、喰い込むところを。森の奥で、車の中で、依枝と男が繰り広げている壮絶な痴態を。
俺はいつしか真実と噂の区別も、現実と想像の区別もつかなくなっていった。そんな淫らな世界が現実にあるはずがないと思いながら、同時に男のことを憎むともなく憎んでいた。
やがて時が過ぎ、依枝と男が結婚したと聞いたのは、俺たちが中学を卒業してから10年近くが経ってからだ。つまり、当時の噂はおそらく本当だったということになる。あの頃に俺を苦しめた想像の世界は本当で、今も同じ時系列に連なる現実だということになる。俺は自分の中にある想像と現実の隙間をどうしても埋めなければならないと思った。
噂には根も葉もなかったことを聞いたのは、俺が依枝を探し出して関係を持ち、それまで頭の中でしてきたことをすべてやり尽くした後だった。14歳の時に止まってしまった時間が再び動き出すまで、俺は依枝をあらゆる場所で縛り、犯し、夫を裏切らせ、背徳の快楽に溺れさせた。依枝は俺が想像してきた通りに従順だった。
あの頃、依枝はバドミントン部の顧問に恋の相談をしていたのだという。噂が立ったのはコソコソ隠れて相談していたからに過ぎなかった。顧問とは高校を出た後で偶然再会したのをきっかけに控えめな交際が始まり、結婚は情と流れで決めたのだと、ある夜に退屈な話の中で聞かされた。
依枝が誰に恋をしていたのかは言うまでもないがどうでもいい。俺はその話を聞いた瞬間から現実の依枝に興味を失い、想像の世界から抜け出すことができなくなってしまった。
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09.07.29更新 |
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