web sniper's special AV review.
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スナイパーAVレビュー!
お嬢様育ちで一度は結婚したが別居して今は別荘で暮らすあかり。都内で一人暮らしをし、仕事に励むあずさ。学生時代から親友同士だった二人は遠く離れていてもお互いを心の支えにし合っていた――。再会したあかりとあずさが繰り広げる切ない恋愛模様、そしてリアリティ溢れる濃密なセックス。AVが持つ大きな可能性にすら触れる、ハイクオリティな本格ドラマレズ作品。あずさとあかりは高校の時の同級生。お嬢様で近寄り難い美形で、勉強でも何でも完璧にこなすあかりとなぜか気が合って親友になったあずさは、今はフリーライターとして都内で一人暮らしをしている。一方あかりのほうは、結婚したものの現在別居中で、詳細は語らないものの心に傷を負っている様子。そんなあかりが上京し、あずさのもとを訪ねてくる。あずさはあかりに深く事情を問うことなく、あかりが求めている無邪気で楽しい時間を作って、あかりを温かく包み込んでやる。
あずさはずっと、あかりに片想いをしている。叶うはずのないその気持ちに、あずさは絶望もせず、かといって過剰な期待もせず、ただあかりの側にいることでささやかな喜びを感じている。しかしあかりはそんなあずさの気持ちに気づき、自分の淋しさや不安定な気持ちを埋めるかのようにあずさとの恋愛に溺れていく。
次第にあかりは、一瞬でもあずさが自分の元を離れることを異常に恐れるようになる。プライドの高いあかりが初めて心から甘え、弱い自分をさらけ出せた相手だからこそ、あかりはあずさが自分の元から「いなくなる」ことを恐れ、その恐怖心からだんだん心の均衡を失っていく。
……と、ここまで読んだ人は「これってAVレビュー……なんだよね?」と心配になってきたかもしれない。なにせこの作品は最初のディープキスまで34分ドラマが続く。しかし、AVとしてそれがダメなことかというと、そうじゃない。セックスに到るまでの思いが丁寧に描かれているからこそ、初めてのセックスでの不安や緊張、相手に自分を受け入れてもらえた喜び、いやらしくて恥ずかしい自分を誰かに見せて、それを愛してもらえた喜びがこれでもかと伝わってくる。純粋に絡み合う女たちのエロい映像を求めている人にとっても、身体中真っ白でキメ細かなあかりの肌をあずさが愛おしげにペロペロ舐めていくセックスシーンは、物足りないものでは決してないと思う。
初めてのセックスの後で、愛情を確認するために、やってもやってもやり足りないとばかりにあずさに迫ってくるあかりの、貪るようなセックスシーンもいい。いいし、この感覚は気持ち的にも肉体的にも実によく「わかる」。
この作品のすごいところは、あずさとあかりという二人の女が、本当に「生きて」いて、演技ではなく本当にそこに二人の女がいるかのような存在感とリアリティを持っていることだ。あずさの衣装、部屋のインテリアひとつとっても、「あずさ」という人間がそこに生きて生活している細部までもが伝わってきそうなリアリティに満ちている。セリフひとつ、行動ひとつ、ご都合主義なものもなければ無駄なものもない。
結果として、ドキュメントよりも本物のように見えるドラマ作品に仕上がっていて、こうして登場人物のことやストーリーに触れなければこの作品の本当の魅力を伝えられないと思わせられるほど、登場人物の恋愛がセックスに深く深く関わっている。
AVはセックスを見せるもので、この作品もまた、きっちりセックスを見せている。ただ、そのセックスに含まれているのが「欲情」や「興奮」だけでなく、きめ細かな恋愛にまつわる感情で、普通のAVでありがちな「セックスするための理由としての恋愛」ではないと言い切れるほど、感情や関係の描き方が丁寧で、ちょっと目を背けたくなるほど切実で、幸せで、こわい。でも本来私たちの日常におけるセックスや恋愛って、そういうふうに「幸せ」で「こわい」ものなんじゃないだろうか。
AVには、この世にあるすべての、いろんな形のセックスを描き出す可能性があると私は思う。『片想いレズビアン』は、数あるセックスの形の中から、こういう形のものを描くことを選び、それに成功した、類い稀な作品である。なにかひっかかるものを感じたら、ぜひ観てほしい。
文=雨宮まみ
『片想いレズビアン あずさとあかり 〜離れていても、二人はいつも同じ空の下で…〜(Madonna)』
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10.03.19更新 |
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