毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第9回 「川中理紗子」 【4】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=川中理紗子
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」、第9回川中理紗子さん掲載中です!
私って素敵!って思ってるよりはいいじゃないですか
自信満々なのに、実際は悪く言われてたら、それこそ人生が終わっちゃう
喜んだり落ち込んだり
自信満々なのに、実際は悪く言われてたら、それこそ人生が終わっちゃう
実は川中理紗子は、前回取材した詩田笑子と一緒に暮らしている。踊り子という仕事上、お互いが地方に出ることが多く、家で接触することはあまりないそうだ。部屋をシェアするにはほどよい距離間。二人でいるとき、どんな会話をしているのか気になった。
「いや、なんかたぶん。笑子が違う人と喋ってて、すごい楽しそうな顔を何度も見てるんですよね。私と喋ってるときは、ああはならないよなあって(笑)。なんで私と一緒にいてくれるんだろうって感じなんですけど」
早くも自虐的な発言が飛び出した。そうはいっても、仲がよくなければ一緒には住みたくないものだ。
「ですよね。やったあ。うふふふ!! そうです。一緒にご飯食べに行こうよおとか。そんな感じなんです。たぶん仲はいいんだけど、趣味があまり。笑子はお芝居とか映画とかすごい好きじゃないですか。『私も観たーい』とか『興味あるー』とか、私がならないので……」
本当の映画好きは一人で見るのが好きだったりする。その距離感がちょうどいいのでは。
「本当ですか!? そう思ってくれてたら嬉しいんですけど」
川中理紗子は喜んだり落ち込んだりと忙しかった。こんなに心配性だと彼氏ができたら大変なんではないだろうか。
「昔付き合ってた彼とは、デートらしいデートをしたことがなくて……。なんか結局、会ってダラダラしてみたいな。なんか本当は私、一緒にディズニーランドとか行きたかったんですけど。でもいい歳してディズニーランドに行きたいなんて言えないし」
詩田笑子は上京してすぐに、友達とディズニーランドに出かけている。
「いいんですよお、笑子はあ。女同士だし。……笑子ともディズニーランド行きたいんですけど、行ってくれるかしら」
一体、その自信のなさはどこから来るのだろう? 川中理紗子の思考回路がまったく理解できなかった。
「ええーーー!! 自信がないっていうんですかねこれ」
もしくは自分が嫌い。
「…………」
黙り込んでしまった。
「えええーーーーー!! これインタビューなんですかあ? カウンセリングなんですかあ?」
川中理紗子は慌てている。彼女ははっきりいって美人だ。25歳は若い。踊り子としても売れっ子。彼女の姿を見て羨ましく思う人はたくさんいるだろう。
「あんなふうになりたくないって思ってる人ばっかりですよ、絶対!!」
しかし周りにハッキリ言われたことがあるわけではない。
「みんな言わないですよ、そんなこと」
あきらかに被害妄想だと思われるが。
「え!? そんなことないです(笑)。だって『私って素敵!』って思ってるよりはいいじゃないですか。自信満々なのに、実際は悪く言われてたら、それこそ人生が終わっちゃう」
必至に訴えている。
「でも、本当にそうなんです。笑子とあの映画がいいよねとか、あれがお勧めとか喋りたいんです。はい、それは笑子に限らず。でもあまり映画に熱心になれないし。私自身もとりたてて何もない人間であり、何の変哲もないステージをしているんです!」
もはや逆演説のようになっていた。ふとみると、川中理紗子の腕には水晶のブレスレットがついている。
「これは魔除けで、よいものを入れて逃さないっていうものらしいです。パワーストーンのお店で、オーダーメイドで作ってもらったんですけど、そのときはそういう気分だったんですよね。ステージで踊ってるときに、『どうせ私のことなんてつまらないと思ってるんでしょ、キー!』みたいな気持ちが高まっちゃって」
川中理紗子のなにが「つまらない」のかわからない。私は頭を悩ませながら、リップクリームを塗った。
「ああ、やっぱり唇が乾いたらリップクリームを塗る女の人って素敵。私も見習わなくちゃ。すみません、やっぱり私、カサカサしてますか?」
このマイナス思考は芸と呼べるかもしれない。
(続く)
川中理紗子
渋谷道頓堀劇場所属。2003年07月21日、札幌道頓堀劇場にてデビュー。小柄な身体で、可憐な舞姫を感じさせる演目はストリップの常連客ならずとも目を瞠る。先月に5周年を迎え、その際に披露された演目も大変好評である。
香盤情報
TSミュージック
9月1日-10日
A級小倉劇場
9月21日-30日
撮影=インベカヲリ★
モデル=川中理紗子
取材協力=渋谷道頓堀劇場、若松劇場
関連記事
咲きほころぶ踊り子たちの肖像「舞姫爛漫」
詩田笑子 【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】>>>【5】
インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.09.06更新 |
WEBスナイパー
>
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫