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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫  第9回 「川中理紗子」 【5】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★ モデル=川中理紗子

ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」、第9回川中理紗子さん最終回です!
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マイナス思考だからって、伝わらないことで嘆くことは私はない
メッセージ性というよりは、ただ観てもらえたら嬉しい。寝ててもいいんですよ
最後に見せる本音

実際の川中理紗子はとてもお客さん受けがいい。それは彼女の細やかなコミュニケーションや優しい性格に関係しているようだった。

「ポラでツーショット撮るときとか、楽しい時間をと思ってギュ〜ってしてあげるんですね。まあ、こんなブサイクにくっつかれて嬉しいかどうかわからないですけど、一応こんなブサイクでも観にきてポラを買ってくれるのは嬉しいので。そうするとお客さんが照れるんですよ。そういうシャイなお客さんが多くて。大阪にすごい無口なお客さんがいたんですけど、会うたびにだんだん口数が多くなってくれたりとか、そういうのは嬉しいですね。ステージって、凄いステージとか、お客さんに元気をあげるステージとか、癒してあげるステージとかあるじゃないですか。凄いっていうステージは技量的に無理だし、元気をあげるっていうのも素敵なことだけど、やっぱりみんな疲れた人ばかりだろうなと思うから。癒すっていうとおこがましいけど、『あ、俺ってこのままでもいいんだな』って思ってくれたらいいなって思います」

それはひょっとすると、自分がされたいことを人にしてあげてるのかもしれない。

「でも私は逆に『君はそのままでいいんだよ』っていわれたら、すごい居心地悪いです。だからまたちょっと違うかもしれない」

自分の性格で気に入らない部分があるのだろうか。

「うーん、性格もっとよければよかったですねー」


インタビューは堂々めぐりだった。何を聞いても自虐的な発言に行きついてしまう。一旦気分を変えるため、インタビュー場所をカラオケ店から、無理を言って彼女の自宅へと移動してもらった。もう少しリラックスして話をしてもらえるかもしれないと思ったのだ。

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引っ越したばかりで段ボールの積み重なった部屋には、カーテンの隙間から光が差し込んでいた。彼女は、買ってきた「ポテトチップス シチリア島の塩&ライム」をパリパリと食べている。

「カルビーのポテトチップスが一番好きです」

キラキラと光るネイルアートが、ポテトチップスをつまむたびに皿に当たる。カンカンと鳴る音が妙に心地よかった。明らかに様子は変化していた。リラックスしたふうで、もう作り笑いもしない。素の表情を見せながら、落ち着いて口を開き始める。

「私は頑張ってるんで見てください、というのは少し違うかな。自分なりには一生懸命やってるんですけど、でも『がんばったで賞』を貰ったところで嬉しくはないんですよ。お客さんにこう思われたいとかよりも、逆にステージで何でもできたらいいなって思う。私は綺麗なのしかやらないとか、こういうのしかやらない、とかじゃなくて、ブリブリもやれば怖いのもやったり。能力的に、バリバリ踊るのはできないですけど、でも一応それを除いたら色々と挑戦してきたと思うし」

川中理紗子のステージには、ストーリーがある。一見、悲恋ものでも、よく観るとそうではない、そんな難しいものもあるという。

「私は絵本を見るように観てもらいたいなと思うんです。このストーリーが伝わらなきゃ嫌というよりは、観る人が観たように。マイナス思考だからって、伝わらないことで嘆くことは私はない。漫画とか、言葉を使ってるときはまた別なんでしょうけど、ステージに言葉はないので、言葉のない世界は言葉のない世界で楽しんだらいんじゃないかと。あんまりメッセージ性というよりは、ただ観てもらえたら嬉しい。寝ててもいいんですよ。いつも眠そうな曲を選んでるんで。安らいでもらえたらいいです」





川中理紗子の本質が伺えるような言葉だった。もしも踊り子をしていなかったら、どうなっていたのだろう。あまりイメージできないから不思議だ。

「えー、もしかしたら死んでたかもしれないですね。ははは。けど別に重い話じゃなくて、それはなんか思います。踊り子じゃなかったら他になんかなってたかなあって」

辞める辞めないといいつつも、踊り子の仕事に全力投球している。迷いのない人生に見える川中理紗子はどこに向かっているのだろう。

「すっごいわかりやすい言葉でいえば、明日死ぬかもしれないじゃないですか。未来のことより、今を生きるので精一杯なんですよ。毎日がいっぱいいっぱいなんです」

川中理紗子は年に数回しか休みを取らない。精一杯生きるというのは、すごいことだ。

「他人に興味がないんですかね。そういう意味ではナルシシスト。映画とかに興味がないのも、なんかあまり他人の世界観に興味がないから。踊り子になった時点で、目立ちたくないなんて嘘だし。どうせ目立ちたがり屋ですよ、みたいな(笑)」

最後にやっと本音らしいことを言ってくれた。インタビューは約3時間。その間にどれだけの顔を見せてくれただろう。川中理紗子には、きっとまだまだ別の顔があるに違いない。そう思うとちょっとドキドキする。

文=インベカヲリ★

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Kawanaka Risako x Inbe Kawori★

川中理紗子
渋谷道頓堀劇場所属。2003年07月21日、札幌道頓堀劇場にてデビュー。小柄な身体で、可憐な舞姫を感じさせる演目はストリップの常連客ならずとも目を瞠る。先月に5周年を迎え、その際に披露された演目も大変好評である。

香盤情報
A級小倉劇場
9月21日-30日
広島第一劇場
10月1日-10日
渋谷道頓堀劇場
10月11日-20日
撮影=インベカヲリ★
モデル=川中理紗子
取材協力=渋谷道頓堀劇場若松劇場

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詩田笑子  【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】>>>【5】

インベカヲリ★ インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。

インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/

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08.09.13更新 | WEBスナイパー  >  咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫