毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第14回 「ひなぎく」 【2】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=ひなぎく
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第14回、ひなぎくさん掲載中です!
大学に入ったときに読んだ本で『ジェンダー』って言葉が出てきて、ピーンと来たんですよ
これ絶対私と関係のある言葉だ!って
大学時代のパラダイムシフト
これ絶対私と関係のある言葉だ!って
取材をしていていつも思うのだが、裸になる職業の女性にアウトローというのは意外と少ない。なんて言い方は偏見なのかもしれないが、少なくとも学力のない私からすれば、羨ましい経歴を持つ人も結構多いのだ。例えば別の仕事で接したことのある風俗嬢は英語がペラペラだったし、お嬢様学校出身という女性もいた。考えてみれば今の日本で、「他に選択肢がないから風俗嬢になりました」なんて人はほぼいないと考えていいのだろうけど、それでもやはり意外性というのは感じてしまう。
そしてそれがストリッパーともなると、もはや驚くことでもなく普通のこととして語られるのだ。社会で充分必要とされる能力を持ちながら、あえてその能力をストリッパーという仕事に注ぎ込む。それが彼女たちの面白さであるのかもしれない。そんなことを考えながら、ひなぎくの話を聞いていた。
「京都の美大で、絵画の勉強をしていたんですよ。そしたら京都が気に入っちゃって、やっぱり友達も多いし生活しやすいし。私は福岡出身なんですけど、今は京都が本拠地って感じ。京都って学校がすごく多いから、そこで面白いことやってる人たちがそのまま残るんですよね。大学に残ったり、近所にずっと住んだままっていう層があって、どんどん入れ替わる人たちと入れ替わらないで学生気分のままでいる人たちがいる。しかも私、自分の大学に仲の良い子はいなくて、よその大学のサークル……サークルというより誰が来てもいい活動グループとの繋がりが濃いんですよ。性の話を真面目に取り組むようなグループなんですけどね」
そう聞いてふと思い出した。以前、ひなぎくのブログで「『ハッピー アンチ ブライダル パレード』に参加した」という日記が載っていたのだ。一体どんなものかと調べたところ、反結婚を掲げたデモ行進のことだった。随分面白いものに参加してるなあ、と思ったが、どうやらセクシャリティの問題に関しては、学生時代から関心を寄せているらしい。
「反婚パレードはただ、友達がやるのに乗っかっただけ。私はそのとき疲れてて普通の格好で行ったんだけど、みんな新郎新婦の格好とかしながら『結婚反〜対!!』とか。はははは!!」
反婚というのも驚くが、気軽にデモへ参加する精神に強いバイタリティを感じる。
「なんかずっと悩んでいたんですよね。親は割りとウーマンリブの世代なので『平等だよ』みたいなこと言うんだけど、実際はそうではなくて、私の中では悩みがあったりして。それが大学に入ったときに読んだ本で『ジェンダー』って言葉が出てきて、ピーンと来たんですよ。これ絶対私と関係のある言葉だ!って」
思い立った彼女は、すぐに行動を始めた。
「京都は面白いところで、フェミニズムとかゲイとかインターセックスとか、そういう話の出来る人たちが割りといて、運動とかお祭りやってる人がいたり、性の話をすくい出そうみたいな人たちがいるんですよ。例えばゲイに嫌悪感を持つとはどういうことか、売春はOKなはず、今の状況をどう変えていくかとか。そういう活動しているグループが何個もあって、私は二つくらいに出入りしていて、しばらくのめりこんでいたんです」
性に対して問題意識を持つ人というのは、自分自身がセクシャルマイノリティである場合が多いように感じる。身に起こる社会との壁が具体的であれば、熱心にならざるを得ないからだ。しかしひなぎくの場合はそういうわけではないらしい。
「私はそういう意味ではすごくマジョリティだと思う。女であることに違和感を覚えたこともなく、レズなんじゃないかと悩んだこともなく、そういう意味ではまったく苦労してこなかった。すごくせせこましいんだけど、家の中で私と弟だったら、女の私だけ家事の手伝いをさせられるとか。学校で委員会があると、絶対に男子が委員長で女子が副委員長だったりとか。まあ、田舎だったというのもあるんですけど。細かいけどそういう積み重ねが、自分の中でわだかまってた時期があったんですよね」
あまりにも些細なエピソードだが、小さな違和感に気づくことこそ大切なのだろう。
(続く)
Hinagiku x Inbe Kawori★
ひなぎく
2002年09月11日、DX歌舞伎町にて劇場デビュー。DX歌舞伎町所属。抜群のスタイルと美しい黒髪、そしてエンターテインメントに徹したステージで観客を魅了する。 香盤情報
船橋ニュー大宝
4月1日ー4月10日
DX歌舞伎町
3月21日ー3月31日
芦原ミュージック劇場
4月21日ー4月30日
撮影=インベカヲリ★
モデル=ひなぎく
取材協力=池袋ミカド劇場
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
09.03.28更新 |
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