fetishistic meister フェティシストが愛する名匠を訪ねて 第1回 エピキュリアン代表 矢嶋アキラ インタビュー・文=安田理央 |
SFっぽい感じは意識します。
ただ一番に考えているのはプレイに使うということ。
ところで矢嶋氏がこうした拘束具に本格的に目覚めたのは、エピキュリアンを始めてからなのだという。
「子供の頃に読んだ江戸川乱歩の小説をきっかけに、SM雑誌を読んだりはしてたんですよ。エッチなこと自体は好きだったから(笑)、大学生くらいから遊びで緊縛とかしてましたけど。実際には作り始めてからハマッたんです。参考に色々調べていくうちに自分が道具フェチなんだなって気づいた」
こちらが材料となるラバーシート。元は内装用の素材だとか。 |
カッターで切断。傍目には無造作に見えるほど早いのです。 |
作業台の上にシートを載せて、まず端を落とします。 |
アルミ製のものさしをあてて、先程の切断面を直線に切断。 |
やはりこだわりはラバーにあるという。
「作り始めた時にコスト的な問題や、加工しやすいということで革じゃなくてラバーを選んだんだけど、次第にその質感に惹かれるようになりましたね。普通、SMと言うと縄の方に行くみたいだけど、僕はズボラで縛るのが面倒くさいっていうのがあって、向いてなかったんですよね。あと、和風なSMよりも欧米のボンデージの方に惹かれるんです。拘束具を使われている女体って、オブジェみたいで美しいなぁと思いますよ。単に自由を奪うだけじゃなくて、装飾的な部分も大事だと思いますね。だから、コストを下げるために貧乏くさい感じになるのは避けたいです。そういうのって興醒めじゃないですか。SMって贅沢な趣味ですから、道具だってカッコイイものを使いたいし、使って欲しい」
必要な幅のアルミ製ものさしをあてて再度切断すると……。 |
この通り。この作業を見ても手作りなのがよくわかります。 |
切断されてラバーベルトの基本パーツに。光沢が美しい。 |
その上に穴開けポイントの目印として傷をつけます。 |
エピキュリアンのグッズはすべて矢嶋氏がデザインしている。
「SFっぽい感じは意識しますね。ただ、一番に考えているのは実際にプレイに使うものだということ。デザインありきだと、体に合わないことにもなるんです。まず安全に使えることが必要ですよ。次はどんなグッズを作ろうかというアイディアは常に考えてますよ。東急ハンズのようなホームセンターで素材を見て、これは何かに使えるんじゃないかとか考えたりして。普通に買い物しているようで、実はそんな変態的なことを考えている(笑)。実際に制作している時間よりも、そうやって素材を集めたりしている時間の方が長いかもしれないですね」
左に見えるのが穴開けガイド。右が目印を付けた基本パーツ。 | 穴開け作業。この機械は東急ハンズとかでも売ってるとか。 | 楕円形の穴開けは、型抜きのようにハンマーを使います。 | 穴開け完了。真ん中の楕円形が「曲がっちゃった」と矢嶋氏。 |
メイン素材であるラバーは、業者からシートの形で大量に購入するのだが、これは実は内装用の素材なのだとか。
「だから業者は結構乱暴に扱うんですよ。普通は壁の中に入れたりして面に出てこない部分だから。僕が傷をつけるなって言う意味がわからない。だから、運ぶ時もしっかり見張ってたりしてね。今はこういう使い方をしているということをわかってもらってるんで、丁寧に運んでくれるようになったけど」
バックル型の金具が登場。棒状の部分を楕円形に入れる。 | バックルを挟んで二つ折り。穴の裏側にはさらに金具が。 | 表側にも金具を載せて、カシメ器でカシメると……。 | はい、基本的なバックル部分の出来上がり。後は応用だとか。 |
最後にこの仕事の魅力について尋ねてみた。
「一番は性に関する世界で仕事ができることかな。僕も人一倍エッチなんで、この業界の周辺で仕事できるのが嬉しいです。世間から見たら、わけわかんない道具作って、DVD作って、変な仕事してるなって見えるだろうけど、そう思われるのがいいですよね。それから、自分が作ったものが流通して、エッチな人たちに使われていると思うと楽しいですよ。前にAV女優の内山沙千佳さんに『矢嶋さんみたいに道具を作ってくれる人がいるから、私たちが活躍できるんです』って言われて、それはすごく救われましたね」
内山沙千佳の言葉通り、矢嶋氏のような職人のたゆまぬ努力がSM業界を支えているのである。
(おわり)
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07.06.11更新 |
WEBスナイパー
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