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撮影:インベカヲリ★
(C) copyright 2007 Inbe Kawori★
The long interview of
photographer Inbe Kawori★.

強烈な表現衝動の源泉
 
写真家・インベカヲリ★
ロングインタビュー 第3回


インタビュー・文=安田理央

協力=「飛茶瓶洞 Cafe FLYING TEAPOT」


インベカヲリ★写真展『倫理社会』開催直前、作家の素顔に迫るロングインタビュー全3回。いよいよ第3回の掲載です。本日はインタビュー当日の映像を公開しますのでお見逃しなく!

前回の記事を読む>>>

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前回からの続きです。前回の記事を読む>>>

既成のものにカテゴライズされたら、その時点で嘘ですよね
どこにも所属できないことがコンプレックスだったわけだから



インタビュー中の様子。笑いを交えながら和やかに進んだインタビューも写真の話になると一転、作家の表情を見せるインベさん。

――作品を撮る上で、何を表現したいと思って撮っているんですか?
「とにかく人間にしか興味がないんです。やってるうちに気づいたんですけど、モデルを募集して、集まってきた人というのが、すごく偏ってるんですね。私の作品には笑っている写真っていうのがほとんどないんです。だからそこに惹かれてくる人というのは、何かしらコンプレックスを抱えていたりして、自分と似たような部分を持っているんですよ。だからそこを引き出して撮りたいんです。最初に面接であった時、喫茶店とかで何時間も話をするんですよ。そうするとこの人は、こういう生い立ちで、こういう経験をして、こう思ったという話を聞いて、そこからイメージを膨らませて撮影を後日するというやり方なんです」
――ああ、なるほど。
「その人が経験してきた事って顔に出るじゃないですか。生きてきたことというのは目力に現れたり、表情に現れたり。それが撮れたら絶対に面白いに決まってますから、はじめからそこですね」
――ちょっと政治っぽい色があるじゃないですか。日の丸とかよく出てきたり。それは思想的な背景はあるんですか?
「イデオロギーはないです。日の丸とかに意味はない。もしかしてあるのかもしれないけど、自分で自覚するほどにはない。私はデザインが好きなだけです」
――70年代アングラカルチャーの影響は感じるんだけど、特にその辺を勉強しているわけではなさそうだよね。
「それなんですよ。好きは好きなんですけど、最初の頃はずいぶん指摘されてイヤになりました。やっぱりどこへ行っても言われるんですよ。アラーキーみたいだね、寺山修司っぽいね、椎名林檎だねとか。そういうことを言われると、これは違うんじゃないかと思い始めて」
――それはやっぱり、そういうのが好きだった?
「勝手なイメージですけど、その時代はやってることが過激でブッ飛んでるじゃないですか。そういう時代への憧れみたいなのはありますね。なんか学生運動してみたかったとか(笑)」
――政治的なことはわからないけど、デモやってみたいとか。
「ヘルメット被って、マスクしてみたいとか(笑)」
――やっぱりアングラっぽいって評価をされるのは抵抗がある?
「既成のものにカテゴライズされたら、その時点で嘘ですよね。どこにも所属できないことがコンプレックスだったわけですし。何の影響も受けていない素の自分から出てくるものを、もっと出したいんですが。まぁ、生きてるとどうしても影響は受けちゃうので」
――ちょっと見ちゃう(笑)。
「見てしまうと、影響をすぐ受けちゃうんですよ。だから、良いときは良いけど、悪い方向に出ると崩壊する(笑)。」
――基本的には人物ですよね。他のものを撮りたいと思うことは?
「そういうのは全然ないですね。撮りたいのは人の顔です」
――顔っていうのは?
「制服を着せて撮ることが多いんですけど、それは洋服を記号化するためなんです。モデルに来てくれる子っていうのは、やっぱり社会に適応出来ない子が多いんです。その中で適応するために、こういう自分に見られたいって考えて服を選ぶじゃないですか。でも、実際その人が、そういう人だとは限らないんです。この間までゴスロリだったのに、半年後には全く違う格好をしていたりするんです。でも記号化された服からは、その人の自我は見えてきませんから。そこから、どういう人間かを見せるのは、目とか表情ですよね。そういう意味の顔ですね。そこを撮りたい」
――社会に上手く適応できないというのはテーマとしてある?
「うーん、自分がそういう人間だったと思うので、自然に選んでるとは思います。人の人格形成が面白いんですよね。こういう経験をしたからこうなったっていう理由がかならずあるから。それが難解なほどそそられますね 」
――普通にハッピーな人は撮ってもしょうがない感じ?
「撮れないですね。自分の中にその面がないから。自分の中にあるものしか撮れないんだと思いますよ」
――共感できない?
「うまく引き出せないと思うんです。何もしなくてもハッピーっていう人の気持ちは理解できませんから」
――じゃあ、これからも、こういう人たちを撮っていきたい?
「そうですね、ずっと撮っていくと思います。後は展望を言えば、犯罪者を撮りたい。まあ難しいとは思うんですが」
――犯罪者?
「興味があるんです」
――裁判を見に行く文章を書いているよね。
「取り返しのつかないことをしちゃった人たちが、それとどう折り合いをつけて、この後の人生を生きていくのか。何を思ってどう決断していくのかに興味があるんですよ。でも、その人にとっては、例えば殺人でも、 それをやらなければ前に進めない何かがあっただろうと思うので、そこを撮ってみたいです。いつかチャンスがあれば」
――ところで今は、居場所が見つかった感じはしているの?
「そうですね。撮っている限り、私はちゃんと正常に生きていけるんですよ。あの、撮らないと本当におかしくなるんで。つい去年くらい車の教習所へ行ったんですけど、だめでした。机を並べてみんなで学科を受けるんですけど、自分が大勢の中の一人に入るとそれだけで気分が悪くなってくる(笑)。だから映画館もダメなんです」
――お客さんの一人になるのがダメなんだ。
「そうなんですよ。何かここで人と違うことをしないとおかしくなるぞって」
――それは、ものすごく自意識が強い。
「自意識過剰ですよね(笑)」
――そこに全てがあるよね。その違和感っていうのもそうだし。
「表現者はみんなそうだよってフォローされることもあるんですけどね(笑)。大勢でいると、普通の人と自分を比較しちゃうんです。普通の人はここでこういうリアクションをするけど、それは自分は出来ないなとか。例えばここで写真展をやってたときなんか、隣の客が『昨日、ハリー・ポッター観ちゃったよー』みたいな話をしてて、それを聞いただけで立ち直れないほどに落ち込んだりしてましたよ」
――なんで?
「普通の人とは直接コミュニケーションを取らなくても、一方的にその情報を聞くだけでもおかしくなるんですね。普通のことを普通に楽しめるメンタリティがまったくないので、自分は人間失格だと思っちゃって」
――それは大変ですね。
「生きててつらいんです(笑)」
――それは確かに気が休まらないな。表現することで生きていることのバランスを取っているんだ。
「それはちょっと格好良すぎるな」
――格好いいというか、切実。
「その切実さが最低だと思って、落ち込んだりしてるんです」


一観客でいるのが耐えられないから映画館には行かないという強烈な自意識。そして撮っていないと正常に生きていけないとまでいい切る強烈な表現衝動。「女の子」インベカヲリ★の皮膚の下に秘められたアーティストとしての欲望に圧倒された。
社会というシステムからはじき出された人たちへの徹底した彼女のこだわりは、うわべだけでも社会に迎合できる「普通」の社会人である我々の目には痛々しく映る時もある。しかし、それは自分の中の無理している部分を刺激するということではないのかとも思う。インベカヲリ★の表現に触れて、自分の心になんらかのしこりを感じるうちは、まだまだ社会のシステムに完全には取り込まれ切ってはいないということなのだろう。

(おわり)


インベカヲリ★ x 安田理央
インタビュー当日の映像を公開!

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文章だけでは伝わりにくい、当日の雰囲気を映像でお届け! 本文中ではカットされたエピソードも収録しています!

インベカヲリ★インタビュー映像はこちらから>>>

Windows Media Playerの入手
WMV形式 53MB 6分8秒


ニコンサロンjuna21
インベカヲリ★写真展『倫理社会』
■東京
2007年10月30日(火)〜11月5日(月)
10:00-19:00(最終日は16:00まで)
会場:新宿ニコンサロン
(東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階 ニコンプラザ新宿内)
※11月3日(土)13:00〜14:00 ギャラリートークあり

■大阪
2008年4月3日(木)〜4月8日(火)
10:00-18:00(毎週水曜日休館)
会場:大阪ニコンサロン
(大阪市北区梅田2-5-2新サンケイビル1階 ニコンプラザ大阪内)
※グループ展につき、東京での展示と同内容で、出展数を減らしての展示となります

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インベカヲリ★ インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。

インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/



yasuda_face.jpg 安田理央 エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。この夏、ついに四十代に突入ですよ。もう人生の折り返し地点かと思うと感慨深い。主な著作に「エロの敵」「日本縦断フーゾクの旅」「デジハメ娘。」など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

安田理央の恥ずかしいblog

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07.10.29更新 | WEBスナイパー  >  インタビュー