毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第2回「きらら☆」【4】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=きらら☆
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」、第2回きらら☆さんの最終回です!
テーマは「自由は自分の心に」ですね。
心のしがらみからパっと抜け出したとき、自由が待っているっていう。
心のしがらみからパっと抜け出したとき、自由が待っているっていう。
新たなチャレンジ
きらら☆の最大の特徴は、本格的かつオリジナリティ抜群の舞台演出だ。既存のストリップにこだわらない前衛的なステージ。ストリップという表現の中で最大限おもしろいことをしようと日々試行錯誤している。
「表現者になりたかったんです。踊り子さんとしてステージに立つのも好きだけど、もっとその枠を飛び越えたこともしてみたい。広い意味での舞台演出っていうものに興味がありますね」
2005年、きらら☆は友達4人と「バーニングマン」に参加した。ネバダ州の砂漠の真ん中で、7日間にわたって開催される巨大なアートフェスティバルだ。参加者は全員パフォーマンスすることが条件。3万人を越えるアーティストが全世界から集まるイベントである。きらら☆はこうした場でも海外のTV、雑誌に取材を受けたという。
「広い砂漠を延々走った先がやっと会場なんですね。滞在日数分の水、食料、衣装と全部持っていくから、現地で舞台を作るなんて大掛かりなことはできない。だから車の上で踊ったんです。着物で『座頭市』を踊ったり、いろんな国の人がいたからインプロしたり。普段は劇場の中でしか演出できないんだけど、砂漠のど真ん中という自然の中で表現できたことが、とても楽しかったですね。普段から日本中旅をしてる私ですが、あそこは行ってみないと感じられない、想像を絶するって言われてたけど、本当に絶する絶するですよ(笑)」
踊ることが好きだった。祭りごとも好きだった。それがミックスされると、想像力はどんどん膨らむ。
「私がデビューした頃と今のストリップでは比べてみると、いろんな面で変化があるように思います。自分が芸暦を重ねてきたからと言うのだけではなく、前だったらお客さんの入りとかどうしたら劇場にお客さんが集まってくれるとか、無頓着でした。自分は舞台のことだけに集中してそれ以外は劇場スタッフに任せておくことだと思ってました。香盤を決めるのもスタッフだし。けれど、いつしかそうではなく、踊り子である自分がどのような香盤でどのようにしていけばいいのかとか考えたり、スタッフにも案を求められるようになってました。そう、気がついたら。ストリップに来たことがない友人やその他知人は「劇場はなんだか入りにくい雰囲気が玄関にある」ってよく言われます。「怖そう……」とか。入りたいけど入りにくいその何かを変えることも提案したけれど、なかなか伝統?みたいなものなのか、そう言った部分では耳を傾けてくれるスタッフは現れませんでした。けれど、どうあれ、引退後もやっぱり自分がいた場所としては盛り上がって行くことを願います。引退後も協力できることはしたいなって思うし」
きらら☆は今年でデビュー13年目を迎えた。
そして、最初の面接で意気込んだ言葉「チャップリンみたいなこともできるんですか?」の夢を、なんと新宿DX歌舞伎町にて実現した。奇しくも、ストリッパーきらら☆としてデビューした場所でもある。
「偶然な出会いがあったんですよ。13周年の興行が始まる数週間前に、各界のダンサーの方達と共演するダンスイベントへ参加したんですね。そこで、マイム俳優として世界的に有名な、いいむろなおきさんと知り合ったんです」
かねてから無声映画やチャップリンのような世界に憧れていたきらら☆は、いいむろなおき氏のパフォーマンスにインスピレーションを受け、13周年記念の演目をパントマイムに決める。そして初対面であるにもかかわらず、空いているスケジュールで強引にお願いし、振り付けを頼んだのだ。
「人に振り付けを頼むことって滅多にないんですけどね。もうコレだ!と思って。すごくお忙しい方なのに、たまたま一日だけスケジュールが空いていたんですよ」
……本番のステージ。きらら☆は囚人服を着て、空気の鉄格子をガタガタと揺らしている。必死に外へ出ようとするが出られない。悲しみのドン底。絶望。タップシューズの音が、カツーーーン、カツーーーン、と空しく響く……。パントマイムとタップダンスを組み込んだ、きらら☆のストリップショーである。
「テーマは『自由は自分の心に』ですね。心のしがらみからパっと抜け出したとき、自由が待っているっていう。オリジナルのストーリーで、芝居チックにしてみました」
強引にスカウトされて入ったストリップ業界。偏見だらけだったはずの世界が、今は大切な自己表現の場になっている。きらら☆の夢は、これからもずっと輝き続けていくだろう。
※来週の連載はお休みさせていただきます。
次回の掲載は、1月12日(土)となります。
きらら☆
1994年5月11日デビュー。京都DX東寺所属。愛称は“きらこ☆”。13周年を迎えた今年、来年2月での引退を表明。2008年2月11日〜20日まで、DX東寺で引退興行を行なう。引退後はさらに自分の思い描く世界を表現し続けるために生きていくとのこと。 撮影=インベカヲリ★
モデル=きらら☆
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京都のお嬢様きららのお部屋
インベカヲリ★
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牧瀬茜 【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】>>>【5】
インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
07.12.29更新 |
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