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monologue in the night
女であること、恋、セックス、そして......。現代女性がふと目を留めた、静かな視線の先にあるものは何か。30代、働く女性が等身大で綴るモノローグ。する気まんまんで、真新しい下着などを身につけ、目をトロンとさせながら「したいよー」などとささやいても、相手が「眠い」とか「明日早いから」などと言って帰ってしまうことが度々あった。「メシ食いに行こう」と誘われた年上のひとと、ごはんを食べたりお酒を飲んだりしたあと、終電近くになって「どうする? 帰る? それともこのままホテルに行く?」などと軽い調子で言われてホテルに入り、お互いにシャワーを浴び、いざ、という段になって「ん? あれ? ちょっと......ごめん、いつもはこうじゃないんだけど......飲みすぎたかな......うーんなんか今日はダメかも」などと言い訳をされながらおあずけをくらってしまうこともあった。「オモチャ、好きなんでしょ?」と言って持ってきてくれたひとが手に持っているそれは、さまざまなボタンがついている最新式のやつで、いろいろとイジっているうちになんだか気持ちが醒めてしまったりした(実際あまり気持ちよくなかった。なにごともシンプルがいちばんである)。ホテルを出て、終電がとっくに出てしまった街を二人で歩きながら、じゃあ、俺、ここからタクシーに乗るわ!と、さわやかに言い放ってひとり帰って行ったひともいた。わたしの家、ここから1万円近くかかるんですけど......と思いながら反対側の道路からタクシーを拾う。「こんなにお金がかかるなら、あのひととホテルなんか行かなきゃよかった。終電で帰っていたら270円で済んだのに」などと、せせこましい思いを胸に抱えつつ、後部座席から徐々に明るくなっていく街を見たりした。
昔はこうではなかった。初めてのひととセックスをしたら、それだけでそのひとが好きになったりしたものだ。気になって仕方がなくなって、家に帰るのももどかしく、メールで次の約束を取りつけたりした。それはセックスそのものがとても気持ちいいものだったからに違いないし、わたしのセックス経験値もまだ低かったから、とても特別な行為として大事にしていたのだ。昔、初めてのひととするときに感じていた気持ちが、今は失われてしまっている。それはもう体の反応として如実に出てしまう。
男のひとから抱かれるだけで嬉しかったときがあった。自分の価値や存在やそんな哲学的なことを考えるまでもなく、からだが気持ちよくて、もっとしたいと思うときがあった。男のひとの指がわたしの肌の上を滑るのを、信じられないような気持ちで見ていたころがあった。わたしのようなみじめな人間を女として見てくれるひとは、それだけでありがたいと思うようなところもあった。
でも今は、わたしでもしてくれるひとがいるのを、知ってしまっている。
あと数年でわたしは40歳になる。40歳を過ぎてもヤリたいと思われる女なんて、ほんの一握りなのではないか。わたしはまだ30代で、決して若くはないけれど、おばさんというのでもないと(自分では)思っている。でも、あと数年したらきっともうだめだろう。元から美人だったりスタイルがよかったりするひととは違って、わたしは「そうは言っても若い女」であることにのみ価値を見出してきたようなところがある。わたしの価値はあと少しで、たぶんゼロになる。何かに才能があったりして、もっと若いひとから憧れの存在として見てもらえたりしたら幸せかもしれないけれど、きっとそういうこともないだろう。
あと数年。あと数年で終わってしまう。
焦りというのでもないけれど、深い関係を結ばないうちにからだを預けてしまうことに、うしろめたさやむなしさなど、それほど感じなくなってしまった。1回だけして、それから連絡を取らないようになったひともいる。誘われたら行くと思うけど、自分から連絡したいと思うほどではない。それよりは新しい出会いを見つけて、数をこなしていくほうが身になるような気がした。
もしわたしに子供がいたとしたら。
もしわたしがまだ独身だったとしたら。
同じ思いを抱えていたのだろうかと、ふと思う。子供がいたら、彼らの成長に一喜一憂したり、思い通りにならずにいらいらしたり、自分以外のことで沢山悩んでいただろう。自分が年をとるということは、子供が大きくなっていくことだから、今のわたしのような思いを抱えずに済んでいたのだろうか。独身ならば、真剣に恋人と向き合っていたり、結婚するかどうかを迷っていたり、好きなひとを思ってもんもんとしたり、好きなひとができないとか友達に愚痴を言ったりするのだろうか。
もし。
もし。
考えてもどうにもならないけれど、こうして確実に1日ずつ老いていく。もうすぐ誕生日がくる。またひとつ年をとって、わたしはそのうち終わっていく。
(続く)
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14.07.12更新 |
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