2011.10.2.Sun at club 「WAREHOUSE」
2011年10月2日 西麻布 クラブ「ウェアハウス」にて開催
長らく闇に封印されていた「見てはいけない物」のオンパレード。 ありとあらゆる魑魅魍魎が一夜の邂逅を求めて、世界中から結集し皆様を禁断の領域に誘います――。もはや恒例となった年に一度の異端の祭典「サディスティックサーカス」が今年も見参! あらゆる身体パフォーマンスが集うといわれる、都会の変態夢遊病者が御用達のスペシャルなパーティーの模様を、早川舞さんにレポートしてもらいます!!このサディスティック・サーカス(以下SC)は他のフェティッシュイベントとは少々毛色が異なっております。多くのフェティッシュイベントが音楽に合わせて踊ったり、同じ趣味を持つ人々と交流するのを目的にしたいわゆる「クラブ系」の楽しみ方が主であるのに対して、SCは舞台で行なわれるパフォーマーのショーを鑑賞するのがメイン。なんたってサーカスですからね。
そのショーも、「大人のトラウマ」の名に恥じない、予想の斜め上を行くものばかり。そこで今回はただのレポートというよりは、私が最初プログラムの煽り文句を見て勝手に予想した内容と実際がいかに違ったかをクローズアップして書いていきたいと思います!
司会は毎度おなじみ、活弁士の山田広野さん。今回は司会に専念されており、彼の活弁はありませんでした。ちょっと残念ですが、独特の語り口を聞けただけでも満足。
■くるくるシルク
炎! 跳! 廻! 驚異の男衆、本物のサーカス曲芸団!
予想:大がかりなセットを舞台上で組むことは難しそうなので、バトンやアクロバットを中心にした大道芸?「男衆」の字面にけしからん妄想が膨らむが、まさかそんなことはあるまい。
舞台に登場したのはモヒカン頭に水玉模様の衣装を纏った男性3人。まずは股間から光るボールを、光るボールをですね、取り出すと、そのボールを投げ合う曲芸を見せてくれました。時には股の下から投げたり、腿の裏から投げたり、舞台上には蛍光色のボールが乱れ飛びましたが、さすがです、落ちません。
次に出てきたのは蛍光バトン。おっと、ここで客席からどう見ても仕込み「ではない」男性が引っ張られてきました。彼を真ん中に立たせてバトンを投げ合ったり、サーカスらしい演技指導をしてみせたり。最後は風船を膨らませて即席でファンシーな拘束具を作り、その男性に付けて客席に戻していました。
最初は喋らない、というか意味不明な音のような発声しかしていなかったので、そういう芸の人たちなのかと思っていましたが、途中からは普通に喋っていて、コント的な面白さもありました。
その他にも、炎! 跳! 廻!の字のごとく、飛んだり跳ねたり廻ったり火が出てきたり、楽しい曲芸でした。けしからん妄想的なことはやはりありませんでした。
■フープラバーズ
魅惑のボンデージ娘達のフラフープダンスショー!
予想: ボンデージを着た女性たちによるフラフープ・パフォーマンス。
これは大体予想通りです。まぁこれで何かとんでもないことを予想しなさいといわれるほうが難しいと思いますが。ボンデージ姿の3人の女性が舞台上で大小さまざまの光るフラフープを使ってパフォーマンスを見せてくれました。
予想外だったことといえば、SM色を強く打ち出していたこと。もちろんSMそのものではないのですが、3人女性が登場するうち、1人がM女役で、残り2人の女王様役に調教される形でフープ・パフォーマンスをするという趣向。M女役が去ると2人は普通にパフォーマンスを始め、最後はSMとはまったく無縁の内容になるのですが、最初にM女役をやっていた女性が真ん中で主役級の芸を見せていたため、私の中ではM女の成長ドラマが出来上がってしまいました。
フラフープのパフォーマンスそのものも大変美しく、暗闇に色とりどりのフープが舞う様子はとても幻想的。さらにその光がボンデージ衣装に妖しく照り映えて、エロティックでもありました。ボンデージとフラフープって相性いいんだなぁ。
■浅草駒太夫
愛されて半世紀超え、昭和からの伝説ストリッパー!
予想:今や伝説級の熟年ストリッパーによるストリップ。
浅草駒太夫さんは去年も出演されていたので、予想するまでもありません。花魁ショーで日本のストリップ界を沸かせた彼女、当年とって69歳。花魁ショーは30歳の頃からやっていたそうなので、約40年の芸歴があるわけですね。
舞台には豪華な花魁姿で登場。金糸銀糸で彩られた重たげな帯を巻いています。舞台に上がった瞬間のもの凄いまでの存在感は、もちろん衣装のきらびやかさのためだけではないでしょう。もう、一般的な「美」の感覚を凌駕している。写真掲載NGなため、一端でもお伝えできないのが残念です。空気感を含めて、普通に生活していたら絶対見られないものですよ。
けだるげな歌声の洋楽に合わせて帯を解き、一枚一枚着物を脱ぎ捨てていきます。途中で舞台の袖から行燈を取り出し、襦袢だけの姿になると、行燈を男性に見立て腰を激しく振って……いやぁ、激しい。
最後は襦袢もハラリと脱いで、暗転。何だか別次元を覗き見ていたようなひとときでした。
■月蝕歌劇団
暗黒の宝塚、歌と踊りの前衛的アングラ見世物小屋!
予想:宝塚というからにはミュージカル? 劇はきっと近親相姦だとか禁断の恋をテーマにした救いのないストーリーに違いない。
名前だけは聞いていたものの、今回が初見となった月蝕歌劇団。着物、ドレス、ボンデージ風など様々な、でも黒一色に統一された衣装の女性たちが5人、ステージに登場。みんな何かしら精神病を患っていそうな表情をしています。
彼女たちがそれぞれ何か歌いながらパフォーマンスを見せてくれたのですが……音響の問題でしょうか、歌詞がよく聞こえなかったんです。赤いロープやボール、狐面、蝋燭と心の琴線をくすぐられる小道具が多く出てきたのでストーリーが気になりましたが、ちょっと追えませんでした。残念。最後はみんなで血糊を噴いて倒れて(死んだ?)しまいましたが、一体何が起こったんだろう……。
あと何となくですが、寺山修司を知っていたらもう少し楽しめたんじゃないかなという気がしました。
■花電車・乱
色町の伝統芸を引き継ぐ、高度な連続秘儀の花弁技!
予想:花電車といえば、ま○こでバナナを両断することしか想像できなかった私です。きっといろんなポーズだとかシチュエーションでバナナをぶった切るのだろうと思っていました。
バナナだけなんてとんでもない! いや、そもそもバナナは出てきませんでした。場所柄、大っぴらにご開帳というのが難しかったせいもあったのかもしれません。写真があればわかりやすかったかもしれませんが、ほぼチラリズムでしたね。
しかしバナナのかわりに、もっとすごいものを見せていただきました。まずは「中」から万国旗が次々出てきます。な、長い。終わらない。見ているうちに自分の股間も痛くなってきました。続いては空気を入れて膨らませるとピーっと音が出るおもちゃ(あれ、なんていうんだろう、駄菓子屋でよく売ってるんですけど)を鳴らし、さらにはストローを使って風車を回します。空気出てるってことですよね。空気が出ること自体は生理現象としては普通でしょうが、それをコントロールできるというのがすごい。
まだまだ名人芸は続きます。さらにはヒモのついたモノ(何だろう?)を「中」に入れ、そのヒモを缶のプルタブに付けて缶を開けたり、キセルに詰めたタバコを客席に向けて飛ばしたり、ラッパを鳴らしたり、クラッカーを鳴らしたり、もうやりたい放題です。わたくし、ま○こが秘めていたすごい可能性にくらくらしました。彼女の膣圧、一体どれぐらいあるんだろう。余計なお世話ですけど、セックスするとき男性は大丈夫なのかなぁ。最初から最後までド肝を抜かれっぱなしのショーだったので、彼女も写真掲載NGなことがこれまた残念です。
■ゴキブリコンビナート
歌劇仕立てのフリークスミュージカル劇団の真骨頂!
予想:彼らも前から名前だけは知っていたものの今回が初見。きつくて汚くて危険、の古き良き3Kを地で行くとだけは聞いていましたが、何をするのかはまったく予想がつきませんでした。ミュージカルというからには歌って踊るのだろうけど……。
ゴキブリコンビナートはメインの舞台の他、幕間をショートコントでつないでいたのですが、最初に現われたときはびっくりしましたね。いきなり白いかぶりもので客席を荒らしながらやってきて(津波を表現していたらしい)、不謹慎きわまりない放射能ネタをぶちかますんですもの。でもこういう「笑っていいのかどうかわからない」微妙さは、まさにSCの方向性にぴったりだったのではないかと個人的には思います。
メイン舞台のほうは、これはもう単純に物理的な意味ですごかった。細い鎖を鼻から口に通して、それで役者さん同士がつながったり、ぶっとくて長い針を頬に串刺しにして「だんご三兄弟」とか……どういう反応すればいいんですかこれ。客席からは悲鳴が上がっていました。
彼ら、退場のときも針を刺したままだったんですが、階段を降りる様子にハラハラしました。そこは見せ物パートでなかったんですが、いちばん手に汗握りました。
幕間ではその他、下品きわまりない「ミックスジュース」作りなどを披露。色をつけた水を何種類もカテーテルで尿道に注入して、膀胱でミックスさせて出すという……。最前列の人に飛沫が飛んでいましたが、いろんな意味で大丈夫だったでしょうか。
■早乙女宏美
地獄の切腹無残「浄瑠璃・葛の葉」ハラキリショー
予想: 毎回いろんな趣向で切腹ショーを見せてくれる早乙女宏美さん。「浄瑠璃・葛の葉」を題にとったということは、葛の葉が子供との別れ際に切腹するのでしょう。
「浄瑠璃・葛の葉」というのは、人形浄瑠璃の演目の一つ。歌舞伎にもなっていますし、これを題にとった文学、映像作品も多いです。話を簡単に説明すると、平安時代の陰陽師・安部晴明のお父さん(安部保名)が助けた狐(葛の葉)が恩返しに彼の嫁になり、子(晴明)を生むのですが、あるとき晴明に狐の正体を見られてしまいます。葛の葉は「知られたからにはもう一緒に暮らせないわ」と幼い晴明を置いて、元いた森に帰って行くのでした。
これは予想通りでした。白い着物に白い狐面で白狐を表現した早乙女さんは、まずはたおやかな動きで人間らしいしなを作ります。「化けた」ということなのでしょう。しかしその後正体がバレてしまうと、背後の障子に晴明への別れの短歌を書きつけ、着物を脱いで切腹を……。
早乙女さんの色の白さ、華奢さ、整った顔立ちなどが醸し出すいい意味で妖怪っぽい雰囲気と、題材にした「葛の葉」の妖しくも悲しいストーリーが絶妙にマッチしていて、極めて個人的な感想ですが私が今まで見た早乙女さんの切腹ショーの中でも屈指の舞台だったと思います。ちなみに元ネタの葛の葉は切腹はしません。死にません。
■真珠子
異次元へ誘うアニメ紙芝居活弁の巫女トランス的多幸感!
予想:巫女さんの恰好をした女の子が、アニメ声で巨大な紙芝居の朗読をする。
プログラムを見た時点ではまったく予想がつかなかった演目ナンバー1。文章にしてみて初めて「あれ、私の予想、意外と間違ってなかったじゃないの」と気づいたのですが、実際には「まったく違っていた」印象が強く残りました。なぜだろう。
内容はというと、赤ずきんの衣装を纏った真珠子さんが舞台に登場、不思議な音の出る機械を手元で操りながら、スクリーンに大写しにした絵を「紙芝居」としてアニメ声で朗読するというもの。
絵は見ておわかりの通り、思いっきり少女趣味なヘタウマ水彩画。リボンだとかお姫様だとかうさぎちゃんだとか、そういうものがわんさと出てきます。不思議な音は……私は電子音楽ってよくわからないのですが、おそらくそっち系で使うものじゃないでしょうかね。「キューン」とか、「ホワァァァン」とか宇宙っぽい音が出てました。ストーリーは……たぶん、ストーリーらしいストーリーはなかったんじゃないかな。もしあったとしたらごめんなさい。ストーリーがどうのこうのというよりも、グロテスクなものとカワイイものをひたすら組み合わせて不条理さを表現したかったのかなと思ったのですが……違ってるかなぁ。
■龍崎飛鳥 with Solo.
京都より伝説の女王降臨す! 禁断の緊縛!
予想:龍崎飛鳥さんといえば超高速縄さばき!&美麗緊縛!
予想した内容自体は合っていたんですが、演出が素晴らしかったです。不思議の国のアリスを題材にした演出やパフォーマンス、衣装など、とにかく凝りに凝っていました。龍崎さんがなかなか出てこない!と思ったら意外や意外!なところに隠れていたりとか、とにかく作り込みが素晴らしい。ダンサー・Solo.さんのスピード感溢れるダンスも龍崎さんのパフォーマンスと相性バッチリで、緊縛ショーにこういう見せ方があったのか!と、勉強させていただいたという領域を軽くすっとばし、あっという間に感動にまで至りました。これはもう、一つの世界が完成していましたね。単なる緊縛ショーではおさまらないところがSCらしくもありました。
緊縛自体も素早く美しく、そしてご本人もとっても楽しそう。こんなにノリノリで縛る方、初めて見ました(笑)。もちろん褒め言葉でございます。蝋燭に鞭に、それから鉄板を利用した火花散らしにと、SM的な責めもキッチリ押さえていました。
■森繁哉+生命舞踏研究館
霊山出羽三山の最高位の山伏達が行脚! 荒行で鍛えた声明をバックに舞う、死者への鎮魂と生命肯定の祈り!
予想:本格的な声明をバックに舞踏を躍る。山伏というからには全員男性。何人出演するかはわからないが、野太い声明と舞踏の男オトコした舞台。
考えていたよりずっと本格的でした。それぞれが持っていた幣帛、法螺貝、鈴、魔除けの鏡、錫杖、独鈷などはおそらく実際に使っているものでしょう。驚いたのはメンバーに女性がいたこと(それもうら若い、きれいな人!)。山に女性が宗教的な目的で入るのは禁忌とされていると聞いたことがあったのですが、私の知識が誤っていたのか、時代が変わったのか……。大事なところじゃないのでいいんですけど。
猿や翁? の面を掛けた男性が声明に合わせて舞踏を躍ったのですが、お経を連続してずっと聞いていると、何だか不思議な浮遊感、トランス感におそわれました。お経ってハウスなどの4つ打ちに通じる独特のリズムがありますよね。後の説明によると、この日の舞踏や声明の意味は、来場者と出演者の幸福を祈るものと、3月の東日本大震災で亡くなった方の魂を鎮めるものだったそうです。
それにしてもこの本格具合には、ラーメンを食べに行ったらカウンターで突然精進料理を出されたみたいな衝撃を受けました。想像してみて下さい、ラーメン屋のカウンターで精進料理。カオスでしょ? でも癖になりそうな、独特なカオスぶりでした。会場の雰囲気やほかの演目とも不思議に噛み合っていて、日本の神様の懐の広さに触れた思いです。
そんなわけで幕を閉じた2011年のSC。例年に比べて過激度が低かったという声もあったようですが、その分SCカラーはより濃く出ていたのではないかと思います。SCに限らず、舞台で表現できる「過激」にはどうしても限度があるし、そもそも「過激」って結構すぐに飽きるので、むやみやたらに過激度を上げようとするよりは、そのイベントのカラーに合った質の高いパフォーマンスを見たいと私は常々思っているのですが、今回はそれが叶えられた気がしました。そして来年はいよいよ10周年。今まで以上にスペシャルなゲスト&パフォーマンスが見られるのかもしれません。今から楽しみです!
文=早川舞
関連サイト
「SADISTIC CIRCUS」公式サイト
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