2011.01.29 Sat 01.30 Sun at club axxcis
世界の緊縛ファンに向けたビッグイベントを緊急レポート!!
一鬼のこ氏率いる一縄会が主催する緊縛愛好家たちのワールドワイドな特別イベント 。世界が注目する“Japanese KINBAKU”は今、何を語るのか。日本が誇る精鋭と海外縄師たちの豪華競演、そしてユニークな企画が目白押しとなった2日間に亘るイベントの模様を早川舞さんにレポートしていただきます!! 本日後編です。まず拝見したのは一縄会の女流縄師・よいさん。………………すばらしかった。取材者としてではなく、一個人として発言することを一行分お許しいただきたいのですが、今回の参加者の中ではぶっちぎりで好みでした。
一言で表現するなら「はんなり」。スピード感や力強さとは無縁の、たおやめの縄です。特に派手な動きがあるわけではなくても、どこかしらけだるげな動作からにじみ出てくる色気から目が離せません。緊縛へのこういうアプローチの仕方は見たことがなくて、本当に衝撃的でした。「女」と「縄師」が違和感なく融合するさまを見せつけられた思いです。
同時刻には「行列のできる縄師」ことエロ王子さんのショーが。こちらでは竹を使った吊りがなされ、大技感がありました。が、ダイナミックながらもしっとりしていて、よいさんが女性的なしっとりだとすれば、エロ王子さんは男性的なしっとりを醸し出していました。
そもそもエロ王子さんになぜ「行列ができる」かというと、やはりこのしっとり感にあると思います。相手を自分のペースに乗せるのがすごくうまい方だと思うんですが(まぁ縄師さんは多かれ少なかれそうじゃなきゃやっていけないと思いますが)、このしっとり具合で、乗せられていることがだんだん気持ちよくなってしまうのではないでしょうか。
ちなみにさっきから「しんみり」とか「しっとり」とか「女性らしい」とか抽象的なことを連発しておりますが、より深く理解していただくために反対の例をあげますと、私は自分の縄を、特に「しっとり」とは対極にあるものだと思っています。
私は相手に感情なんかないみたいに黙々と縛り上げるのが好きですし、吊るとなったら少しでも長持ちするように、美しさはとりあえず置いておく、無骨きわまりない丸太のような縛り方をします。
……何となく、おわかりいただけたでしょうか(笑)。
海外ゲスト、Shinさん、Midoriさん、Eshinemさん参加によるトークショーでは、お三方がそれぞれのお国、台湾、アメリカ、イギリスの緊縛事情について通訳付きで語ってくれました。Midoriさんは出身が京都、育ちが東京ということもあり、通訳不要なほど日本語がお上手でしたが……いや、お上手どころかネイティブレベル。
緊縛に目覚めたきっかけや、日本の緊縛との相違点、緊縛を中心にしたSM事情などが話題に挙がりましたが、いちばん興味深かったのはEsinemさんが語った「日本人の緊縛は過程を大事にするが、ヨーロッパ人の緊縛はいかに美しく完成させるかを大事にする」という日欧緊縛比較論。じつは昨日Charmさんの緊縛を見たとき、「これは典型的なヨーロッパの緊縛だな」と感じたのですが、どこがどう典型的なのかうまく言葉にできずにいたのです。それをピタリと言い当ててくれて、まわりが人だかりではなかったら自分の膝を思いっきり叩いていたところでした。
昨日に続いて2回目の出演となるオーガナイザー・一鬼のこさんのショーは、昨日とは打って変わった、照明と音響をフル活用したド派手な内容。昨日のショーもすばらしかったですが、今度はまったく違うカラーで再度の本領発揮です。
全身タイツを着たモデルさんは顔まですっぽり隠されています。一見、無機質なように見えますが、こうすることで観客は彼の縛りの美しさに注目することができるのです。手際よく縛り、吊るし上げ、足元のスイッチを押すと……縄が発光を始めました。照明が落とされ、モデルさんの体を包んだ縄目が暗やみの中に浮かび上がります。MCの神田つばきさんが、このショーのことを「光で縛るショー」と評していましたが、まさにその表現がぴったりです。何度も展開が繰り返され、モデルさんの体勢も次々変わっていきましたが、ひとつひとつ光の緊縛ができあがるたびに、会場からは大きな拍手が上がりました。
まだまだお楽しみは残っています。次は「世界AIR緊縛選手権」。以前、「眠れる森の美女」で行なわれていたイベント「桃色鬼まつり」内で開催されていたものですが、イベントの終了とともに伝説の彼方へ……。大好きなコーナーだったのですが、それが復活したのです! ワーイ!
で、何それ? って話ですが、エアギター、エアセックス、エアオナニーときたら次はエア緊縛ですよ(なぜ下ネタばっかり出てくるのかはあまりツッコまないで下さい)。つまり縄はないけど縄があるふりをして、縛ったふりをする。バカバカしく思われるでしょうが、本当にバカバカしいです。詳しくレポートしたいのは山々なのですが、こういった催しはリアルタイムで参加しないと良さがまったくわからないものなので、あえて割愛させていただきます。が、「あのとき舞台には、縛られ、吊り上げられるドラえもんが確かにいた」とだけ言っておきましょう。
ひとしきり笑ってフロアを移動してみると……一縄会・紫護縄びんごさんのショーが始まっていました。歌謡曲をBGMに、びんごさん「が」赤い長襦袢を着て女性を吊っています。顔には化粧もしておらず、女装とも呼べないスタイル。男性がとりあえず長襦袢を羽織ったといった風体です。ですがどこか狂気じみたエロさがあって、フロアに入って姿を見た瞬間、鳥肌が立ちました。
最後のほうでは長襦袢も脱ぎ、褌ひとつでモデルさんを吊り上げていましたが、彼のショーには日本の暗い部分、狂った部分が溶け出しているようで、妖しく、あやうく、最初から見なかったことを後悔しました。「八ツ墓村」に出演してほしいです。
続いて登場した蓬莱かすみさんは反対にきりりとした味を持つ女流縄師。緊縛師としてのお名前は伺っていましたが、拝見するのは今回が初めてでした。手まりを持った白い襦袢のモデルさんに続いて登場、ぱりっとした着物姿が舞台に現われると、何だか場が引き締まりました。縄には安定感があり、縄目もきっちりしています。女性ならではの凛々しさが溢れるショーでした。モデルさんも女性だったのですが、レズっぽいというよりは、年の離れた姉妹の折檻シーンのようでしたね。
「日本のそれのように、過程にフォーカスした緊縛をしたい」と語っていたEshinemさん。縄の掛け方やモデルさんのなぶり方ひとつひとつをとっても、プロセスにこだわり、モデルさんの変化を引き出そうとする心意気が窺えます。
Esinemさん、はモデルさんと数日前に初めて会ったらしいのですが、「それではいい緊縛ができない!」ということで、ショー当日までできるだけ一緒に彼女と時間を過ごし、お互いの理解に努めたそうです。縄師さんって本当にマメな人が多いよね……。
一縄会の初期メンバーであり、現在は関西を拠点に活動するという獅子若さん。上背があり、筋肉もしっかりしているのでハードな責め縄を繰り出す姿が映えます。縄さばきも力強く、「漢(と書いておとこと読む)の縄」の風格。とにかくカッコイイ! 後のインタビューでは「普通の人では耐えられないような責め縄を受けてくれたモデルさんに感謝したい」と語っていたところにお二人の信頼関係が窺えました。
それにしても一縄会の方は皆さんそれぞれ個性が確立しているので、拝見していてとても楽しいです。
続いてはアメリカの女流縄師・Midoriさん。今回のイベントでは唯一、男性モデルを使ったショーでした。彼女のショーはどこをとっても異色。まず縛り手が顔を見せない。最後まで全身タイツで顔と体を隠したままでした。その姿で、本人「が」逆さまの体勢で二人の男子を立て続けに緊縛。一人ははっぴに褌の筋骨隆々としたタイプで、もうひとりは長襦袢で女装させられた(でもやっぱり褌)線の細い美少年タイプ。まるで影のように寄り添ったMidoriさんが背後から二人を縛り終えると、最後は男同士のキスシーンで締め。会場には今までにない大きな拍手が沸きあがりました。まさにアイディアと技術力の勝利! ……みんなこういうの好きか。私はだいすきだ。
長田スティーブさんは外国人縄師とはいっても日本での活動期間が長く、長田英吉さんの弟子として名前も広く知れ渡っている方。日本のポップカルチャーやサブカルチャーにも詳しいようで、彼のモデルさんはメイドの格好をしていました。ある意味、和服です。メイド服はもう和服といってもいいと思う。
スティーブさんは合気道を習っているそうで、合気道の道着でショーに臨んでいましたが、長年続けると自然と出てきてしまうものなのか、それとも道着を着用すると心が合気道モードになるのか、ときどき仕草に合気道らしい動きがありました。まさか緊縛ショーで見るとは思わなかった動きでした。なんで私にそんなことわかるかって? 二段なの。
2日に渡った縄祭りを締めるにふさわしいショーを披露してくれたのは奈加あきらさん。「ショーとして見せるというよりも、『俺が好きでやっていることを覗きたかったら勝手に覗いて』という感覚でやっている」という奈加さんのショーは、そう言われてみて初めて納得したのですが、繊細に整っていながらも、根底には「人の秘めごとをこっそり覗き見ている」背徳感があります。
奈加さんの縛りからは特に強く感じますが、この背徳感は多かれ少なかれ緊縛すべてにつきまとっているものでしょう。緊縛はどんなにオープンになり世界規模になっても、背徳感を内包する……それが私が今回のイベントで自分なりに出した結論でした。動きを封じられるという原始的な恐怖と、そこから否応なくにじみ出てしまう生命の律動を、美しく人工的に彩って愛でたいという、耽美的な加虐嗜好ともヒネくれた愛情表現とも呼べる心境が生み出すこの背徳感こそが、海を越えて人々を魅了するのだと思います。
あっという間に過ぎた2日間ですが、出演者の皆さんが共通してコメントしていたことがありました。
「本当に縄が好きな人たちだけが集まった、最高に居心地のいいイベントだった」。
たしかにアーティストから一般来場者に至るまでの「緊縛が好き」という気持ちが、一演目が終わるたびに起こるなおざりではない拍手や、ショーを食い入るように見つめる目つきから、ひしひしと伝わってきました。「珍しいから社会科見学のノリで来ました」程度の人は皆無だったかもしれません。
海外ゲストも、
「ここまでの規模、クオリティのイベントは見たことがない。レベルの高い縄師に何人も会えてインスパイアされた」(Esinemさん)
「こんなにたくさんの愛好者と知り合えたのは奇跡的。未来につながった2日間だった」(Shinさん)
などと、大いに感動していました。
Japanese KINBAKUの名声は、彼らの満ち足りた笑顔とともにさらに伝えられていくのでしょう。鬼のこさん、縄屋さん、関係者の皆さん、本当にお疲れさまでした! 来年も楽しみにしていいですか?
文=早川舞
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