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2009.11.01.sun-2009.11.13.fri at Vacant
アートディレクター・大類信が収集したヴィンテージ・ピンナップ写真の数々!

『the far fog〜The Collection of 60's-70's Vintage French Pin-ups』展フライヤー

1930〜70年代にパリで発行されていたヌード・グラビア誌『PARIS-HOLLYWOOD』。そこに掲載されていたピンナップのオリジナルプリントを肉眼で拝むチャンスが到来。さあ急げ! ところでコレクションの所有者である大類信は1980年代日本におけるボンデージ・ブームの仕掛け人であったが、そういや当時の日本のボンデージ・ブームって、どんな構造を持っていたのだろうか? 展覧会を訪ねたネットワーカー・ばるぼら氏が、思索の網を広げて日本におけるボンデージの受け入れられ方を俯瞰します。前後編の前編です。
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11月1日から13日まで、原宿VACANTにて「the far fog」が開催されている。展示されているのは、1940〜70年代にパリで発行されていたヌード・グラビア誌『PARIS-HOLLYWOOD』のためのヴィンテージ・ピンナップが約150点ほど。初日に足を運んだところ、薄暗い会場の壁に貼られた写真とショーケースに並べられた古雑誌がかもし出す怪しげなムードは楽しかったが、それほど広くないスペースなので思っていたよりもあっけなく観終わってしまった。戦前戦後の男性を奮わせた、豊潤な肉体と曲線を強調するポージングは、もはやエロティークというよりもロマンティークで、古典的である。昨今、こうした古いピンナップ写真はファッション/アートの要素としてコレクターズ・アイテム化しており、現物を見る機会がなかなかないため、興味のある方は気軽に立ち寄ってみるといいだろう。

『Plusieurs Possibilites』 発行=1985年

ジョン・ウィリー撮影の写真

『THE BOUND BEAUTIES OF IRVING KLAW AND JOHN WILLIE vol2』 発行=1977年

『THE FIRST JOHN WILLIE BONDAGE PHOTO BOOK』 発行=1978年

アービング・クロウ撮影の写真

『SALE2』28号 出版社=フィクション・インク 発行=1986年

『SALE2』29号 出版社=フィクション・インク 発行=1986年

さて、この展示のコレクション提供者にある「大類信」の名前に見覚えのあるスナイパー読者も少なくないのではないだろうか。日本の80年代雑誌デザインのフォーマットを作り上げたデザイナーの一人であり、80年代中盤に日本にボンデージ・ブームを起こした張本人である。恋人同士のプレイの一要素として「ソフトSM」なる言葉まで生まれるほどの大衆性を得た現在のSM状況は、間違いなくあの時代に始まったものだ。あのブームは一体何だったのだろうか?

それまでも日本にボンデージ情報が輸入されることはあったが、『プレイボーイ』『ペントハウス』に駆逐された50年代のオールドスタイルな下着姿のセックス・ビジネスとして、もしくは日本の緊縛に対する海外の拘束具、つまりSMやセックスの関連物としてであった。それらは決して間違ってはいないものの、しかし1985年にフランスで発行された、ボンデージ・アートの創始者ジョン・ウィリーの写真集『Plusieurs Possibilites』は、70年代までのウィリーの写真集の背徳的なムードとは違う、あえてビザールな世界観を打ち出さないポップな装丁と魅せ方だった。この写真集が日本の洋書店で販売されたことで、行為としてのSMとは切り離された、フェティッシュな香りを残すファッション・アイテムの一つとして、ボンデージが再発見された。

前史として、それを日本で紹介したのは『GS 楽しい知識』2号(1984年11月発行)のポリセクシャル特集における伊藤俊治の論文「セックス・シアターのフリークス」が比較的早い。このテキストには、ジョン・ウィリーやアレン・ジョーンズの絵画からフェティシズムとは何かを考察し、ボンデージを思想面からバックアップした箇所がある。80年代前半の日本のアンダーグラウンド・シーンでは、映画『フリークス』や『ピンク・フラミンゴ』がカルト・ヒットしたことで、異形・身体改造への注目が集まっており、その下地があっての身体変形=ボンデージへの興味と思われる。この視点を下敷きにしたであろう大類信編集の雑誌『SALE2』28号(1986年)のフェティシズム特集には、ボンデージ・イラストが複数掲載されていた(この号は即完売し増刷されている)。

そして満を持して世に問われた『SALE2』29号(1986年11月20日発行)のボンデージ特集は、そうした流行を充分に反映しつつ、理論武装で固めた日本最初の本格的ボンデージ入門書であった。「BONDAGEとはあくまで束縛状態や緊縛状態に対するフェティシズムであり、相手を傷つけることによって快感を得るといったようなサディズムとは、まったく性質を異にするものなのである」「ボンデージ・アートはあくまでフェティシズムのコンテクストの中で生まれたビジュアルなのだ」といった幾分過激な発言による「ボンデージ宣言」から始まるこの号は、先のジョン・ウィリーをはじめ、ボンデージを商業ベースにのせた初のプロデューサーとして知られるアービング・クロウ、ウィリーに影響を与えた画家カルロ、有名ボンデージ・コミック作家のスタントンやエネグなど、重要人物はあらかた紹介している(ここにベティ・ペイジの名前がないのが現在からすると不思議だ)。

また大類は同年11月28日に世界初のボンデージ専門店「BONDAGE: TOKYO JAPAN」をオープンし、まだ日本では入手困難だった、ベリエール・プレス、センチュリアン、ドミニク・レオイといった出版社のボンデージ写真集やコミックスなどを販売。日本でのビジュアル面でのボンデージ普及に一役買った。1987年1月には早くも『BRUTUS』と『宝島』がボンデージ記事を掲載、若者のニュー・トレンドとして注目している。

この勢いは強まるばかりで、『SALE2』が出した特別号「ジョン・ウィリー・ボンデージ」(1987年9月25日発行)は三刷を数え、イベント「ボンデージ・ランデヴュー」(同年11月21日)は200人の観客のうち女性が六割という盛り上がりを見せた。1988年4月16日には深夜番組「11PM」でボンデージが大々的に取り上げられ、村上龍がSMクラブを舞台にした小説『トパーズ』(1988年10月初版)を出すなど、この頃までに流行は最初のピークを迎えたと見ていいだろう。1989年には山崎慎二・水谷友美によるイギリス直輸入のボンデージ専門ショップ「AZZLO(アズロ)」が開店し、コルセット、ラバー/エナメルウェアなどの本場モノを日本で手軽に入手できるようになり、情報と実物の両方が整った。

この若者中心のビジュアルをメインにしたボンデージ・ブームは老舗SM雑誌にも飛び火し、我らが『S&Mスナイパー』および『S&Mスピリッツ』でも、縄による緊縛が主であるにせよ、ボンデージ関係も徐々に掲載されはじめている。


(続く)


Vacant
「『the far fog〜The Collection of 60's-70's Vintage French Pin-ups』展」


開催日時=2009年11月1日(日)〜11月13日(金)
時間=13:00〜21:00
料金=500円

協力=大類信/ YO+the deep paris

会場・問い合わせ先=
東京・原宿『Vacant 』2F
東京都渋谷区神宮前3-20-13
電話=03-6459-2962

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ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミニコミを制作中。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/
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