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全ての国民は2年間、国に全てを捧げて奉仕する義務がある――。日本によく似た、しかし異なる某国で「奉仕者」の立場に転落した女たちが辿る、絶対服従の日々。飼育・調教が法律によって認められた世界で繰り広げられる、異色エロティックロマン!
「いやぁ、本当にびっくりしましたよ、北尾さん。まさか、あの可愛らしい少女が、男だなんて。しかし、あそこまで可愛ければ、もう性別も関係ありませんね」
イサクは少し照れながら、そんなことを言う。北尾が席を外した後、晶と一戦交えたのだ。晶が部屋を去り、シャワーを浴びた後にバスローブ姿でくつろいでいると、北尾が再びやってきた。
イサクは自国でのドールパーティで、様々なフェティシズムを持った人々を目撃した。その中には女装癖のある人も何人かいた。しかし、晶ほど可憐で美しい「少女」はいなかった。
晶との初めての体験は、イサクの新たな官能の扉を開いたような気がした。恥じらいに顔を染めながら泣き叫び、そしてイサクと同時に射精した晶の姿は、現実のものとは思えないエロスを感じさせたのだ。
「気に入って下さったようで何よりです。実はこの『島』でも、晶のようなドールは初めてなんですよ。まぁ、なかなかあれだけのルックスを持つ者はいないですしね」
「確かに……」
イサクは、プレイ中の晶の顔を思い出す。触ると壊れてしまいそうなほどに端正な顔立ち。あの美しさが、生物学的には男性なのだとは到底信じられない。いや、だからこそ、あの非現実的な美しさを感じさせるのかもしれない。
「あの……、あの子はレンタルはできないのでしょうか?」
イサクはおずおずと切り出す。すっかり晶の妖しい魅力の虜となっていたのだ。
「バックマンさんに、そこまで気に入っていただけたとは、嬉しい限りですね。しかし、残念ながら晶は、まだ実験的な存在ですので、レンタルは出来かねるのです」
「そうですか……」
イサクは肩を落とす。金で解決できることなら、いくら積んでもいいとまで思っていたのだ。
「基本的に、一人のご主人様にお貸出しできるのは一人のドールという決まりもありますので。申し訳ありません」
晶が欲しいと言っても、アイリを手放すことはイサクには出来ない。
この「島」に来てから、アイリは別行動をとっていた。健康診断やカウンセリングなどを行なうらしい。職員たちは「再チューニング」と言っていた。
それにアイリが傍らにいたら、イサクも晶とのプレイを楽しむことが出来なかっただろう。
「その代わりに、ここにいらっしゃる間は、晶を存分にお楽しみ下さい。もうすぐアイリの再チューニングも終わりますので、よろしければ三人でのプレイもいかがですか?」
「え、三人で?」
「晶は、男性女性のどちらにも対応できますからね。アイリに晶を責めさせたり、逆に晶にアイリを責めさせるようなことも面白いかもしれませんよ」
「なるほど」
イサクは、晶とアイリが絡みあう姿を想像した。二人の愛らしい少女がお互いを貪りあっているのだが、その一人の少女の股間には雄々しい一物があり、もう一人を貫いている。なんとも倒錯的で卑猥な光景だろう。
イサクはアイリに対して、主人と奴隷という立場を超えた感情を持っており、他人がアイリを責めることを好まないが、その相手があの晶だとしたら、興味がある。
「いいですね、それはぜひ……」
すると北尾は、わざとらしい笑顔を浮かべて、話題を変えた。
「ところで、バックマンさんのお国では、例の組織がずいぶん活発化しているということですが……」
「ああ、PTWのことですか」
PTWことPOWER TO WOMENは女性の権利を守ることを目的とした団体だ。ヨーロッパを中心に世界的な活動をしているが、その本拠地はイサクの国に置かれている。
かつてアメリカに渡り、ウーマンリブの洗礼を受けたカリスマ的な女性運動家である創始者ロッタ・キヴィマキがその国の出身だったためだ。
ロッタは、数年前に病死し、現在はその一人娘であるレイヤが最高指導者となっている。
レイヤの代になってからPTWの活動は、さらに先鋭化し、世界中で度々問題を起こしているが、それにつれて賛同者も増加し、国際的にも無視できない存在となっていた。
そのPTWが、世界中の有力者の間で楽しまれているドールの存在に目をつけている。
ドール愛好者たちは、厳重なセキリュティによってお互いに秘密を守っているが、どこからか噂は漏れてしまうものだ。
ただ現在は「上流階級の間では、今も奴隷制度が存続している」という都市伝説的なものとして扱われており、一般には本気で信じる者はあまりいない。
しかし、PTWは、それが真実であり、性的奉仕を目的とする女性奴隷が存在するのではないかと調査を進めているというのだ。
もし、ドールの存在が明らかにされてしまえば、有力者たちは一気に失脚を余儀なくされ、世界中が大混乱に陥るだろう。
「我が国でも、PTWに関しては手を焼いていますよ。もともと過激な行動が問題になってますから、ずいぶんメンバーは逮捕されてますね。ただ、最近は半ば地下に潜ったような状況で、今ひとつ全貌がつかめていないようです」
「バックマンさんにとっても、PTWは目障りな存在でしょう?」
「そりゃ……、もしドールのことが公にされたら、私だって困りますよ。それどころか大統領以下、みんなドール仲間ですからね。我が国は大変なことになってしまいます」
「そこで、バックマンさんにご協力いただけないかなと思いまして」
「私に?」
北尾が合図をすると、部屋の奥のドアが開き、一人の女性が入ってきた。
胸まで伸びたストレートのブロンドヘアが美しい全裸の白人女性だった。ほっそりと伸びた長い手脚と、形よく盛り上がった乳房。文句のつけようのない完璧なプロポーションだった。そしてその首には、赤い首輪がある。
「えっ……」
イサクはその女性を見て驚いた。ドールは全て東京国の女性のはずだった、明らかにヨーロッパ人に見えるこの女性もドールだというのか。
「紹介しますよ。エリカ・コルピ。あなたの国の女性です。そしてPTWのメンバーです」
「えっ?」
北尾は少し得意気な表情になる。
「帰国の際に、このエリカと晶を連れていって欲しいんです。この二人が、PTW壊滅のための私たちの武器なんですよ」
アイリにとって「島」は、厳しい調教の場であったが、懐かしい故郷でもあった。ごく普通の東京の15歳の少女であった鹿島愛理が国民奉仕法によって、三島という中年男に2年間調教される事となり、そして適性を認められて「島」に送られた。
鹿島愛理は、奴隷のアイリとなり、そして「島」でドールのアイリとして生まれ変わった。だからこの「島」はドールのアイリにとっての故郷になるのだ。
アイリがいた頃の同期の奴隷たちは、そのほとんどが世界中に「出荷」されていたため会うことはできなかったが、調教師たちとの再会は懐かしいものだった。調教の時は、厳しく恐ろしい彼らだったが、今となってはいい思い出でもある。
特に、スピアの顔を見た時は心がときめいた。まだ自分と変わらない年齢なのに、調教師として頭角を現わしていたその少年に対して、アイリは、調教する者とされる者以上の感情を密かに抱いていたのだ。無論、それは決して叶わぬ思いであり、アイリも口に出すことはなかったのだが。
徹底的な身体検査を終え、健康上の問題が何一つないことが判明すると、アイリには少しの自由時間が与えられた。調教されている時には入ることの出来なかった豪華な個室に案内された。今回の来島では、アイリは重要な招待客であるイサクの従者であり、客として扱われたのだ。
そして、かつて「島」にいた時との大きな違いは、アイリが服を着ていることだった。主人であるイサクの希望で、シンプルなデザインの清楚なブラウスとセミロングのスカートを身につけている。イサクが必要な時以外にアイリが全裸でいることを嫌っているからだ。
「うふふ、お客様なのね、私」
アイリは、部屋の中央の大きなベッドの上に飛び乗ると、ぴょんと跳ね、そして大の字になって寝転んだ。
「このお部屋で寝ることが出来るなんて、昔は想像もしてなかったなぁ」
アイリはニコニコしながらそうつぶやく。無邪気に今の境遇を楽しんでいる。そしてつい、ベッドの上でウトウトと微睡んでしまった。
アイリの優雅な昼寝は、チャイムによって破られた。アイリは飛び起きる。主人のどんな命令にもすぐ反応するドールとしての習性だ。ただ、さすがに目が覚めた一瞬は、自分がどこにいるのか、わからなかったが。
「はいっ」
ドアに駆け寄り、オートロックされていた鍵を外した。
ドアが開くと、そこに立っていたのは、スピアだった。
「あっ、スピア様」
さっき、遠くでちらりと顔を見かけただけで、ときめいてしまったスピアが目の前にいるのだ。アイリの心臓は高まった。
「久しぶりだな、アイリ」
「は、はい……」
「お前のご主人様がお呼びだよ。来るんだ」
「はいっ!」
スタスタと歩いて行くスピアの後、急いでアイリはついて行く。
「わざわざスピア様が呼びに来てくれたんですか?」
「ちょうど、おれも一緒に呼ばれたからな。ついでだよ」
「一緒って……」
「プレイでもしようってことだろう?」
「スピア様と……」
イサクの前でスピアに責めさせようということなのだろうか。久しぶりにスピアに責められることを考えると、身体が熱くなってしまう。優しさが先に立ってしまうイサクのプレイは、正直いって完全に調教されたアイリにとっては物足りないものだった。もし、スピアに責められれば、自分は激しく燃え上がってしまうだろう。しかし、そんな姿をイサクに見られるのは、抵抗があった。
色々なことを考え、気持ちを乱れさせながら、アイリはスピアの後をついて、イサクの部屋へとたどり着いた。当然のことながら、アイリのために用意された部屋よりも、はるかに大きく、豪華な部屋だった。
「連れてきましたよ、バックマンさん」
スピアとアイリが部屋に入って来ると、ソファに腰掛けていたイサクは目を細めた。
「やぁ、アイリ。健康診断は何事もなかったんだって?」
「はい。いくつかの検査の結果は明日以降になるそうですが、今のところは異常は見つかっていません」
「そうかそうか。それはよかった……」
イサクはアイリを呼び寄せて、自分の隣に座らせた。
「お前もこっちに来い、スピア」
イサクとテーブルを挟んだ向かいに座っている北尾もスピアを呼び寄せる。
「あ、そいつは……」
スピアは先に座っていた一人の少女の姿に気づいた。セーラー服に身を包んだ華奢な身体付の美少女。
いや、スピアは、それが女性でないことを知っていた。
「こいつも含めてプレイしようっていうのですか。そりゃあ、あんまりゾッとしないな」
スピアはボソリとつぶやいた。
「おい、お客様の前で余計なことを言うな、スピア」
北尾にたしなめられると、スピアは目を逸らせた。
「この子は……?」
アイリは、初めて見るそのセーラー服の少女に目を奪われた。
晶は、黙ってうつむいていた。
(続く)
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11.05.09更新 |
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