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新連載 異端のAV監督・ゴールドマンが放つ衝撃の告白小説 毎週日曜日更新!
Autobiographical novel by Goldman [SEX・MOVIE・BLUES]
数々の伝説に彩られた異端のAV監督・ゴールドマンが書き下ろした衝撃の自伝的小説。セックス、ハメ撮り、結婚、逃避、勃起不全……余りにも赤裸々に語られ尽くす、ゴールドマン史における事実、裏話、そして苦悩は、読む者を人生の迷宮に拉致監禁せずにはおかない文学的事件だ。
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セックスという名の快楽には、男も女も、多かれ少なかれ、なにか憧れにも似たような感情を、抱いているはずだ。
しかし、それを、職業として生きていくと、やがて、鉛のリュックを背負ったまま、ぬかるみの海に沈んでいくような、苦悩を味わうことになる。

1 ボッキン・ブルース

俺の仕事は、ハメ撮りだ。

ハメ撮りというのは、こうだ。
ハメる(女とセックスをすること)のと、それをビデオカメラで撮影するのを同時に行なうことだ。つまり、わかりやすく言えば、AVの男優とカメラマン(監督?)が合体したようなものだ。
現在、俺は46歳になる。もう、かれこれ20年以上もハメ撮りをつづけている。
はっきり言って、つらい仕事だ。

若い頃、20代、30代前半くらいまではまだよかった。体力も気力も充実していたし、なによりいろんな女と単純にヤリたかった。あり余るほど性欲がみなぎっていた。ふつうの仕事に比べるとはるかにスバラシイ職業だった。
しかし、今やクタクタのボロキレのようだ。
のびきったゴムホースみたいだ。
ハメ撮りが終了すると、心底くたびれてしまっている。うんざりした気分になってる。

女とセックスをする仕事。
男なら誰だってあこがれるだろう。
若い、そこそこキレイな女とセックスして、おまけに金までもらえるなんて……。
夢のようなスバラシイ職業だなんて。
ところが現実は、そんなに甘っちょろくない。少なくとも今の俺にとっては苦痛なのだ。てっぺんのない山をいつまでも登りつづけている感覚。そう、ずーっと坂道だ。

ヤリたい時にヤリたい女とヤル。
好きな女と好きな時にセックスする。
これは、当たり前の理想だ。
しかし、現実はまったくの逆だ。
ヤリたくない時に、ヤリたくない女とヤル。
好きでもない女と好きでもない時にセックスをしなければならない。
通常では考えられないシチュエーション。
最も望ましくないシチュエーション。
これが、俺の仕事なのだ。

絶対に他の男にはオススメしたくはない。
よっぽどの色情狂で寝ても覚めても女とヤリたいというイカれた野郎なら別だが、ヤリたくもない時にヤリたくもない女を相手にして、無理矢理ペニスをボッキさせて、ふりしぼるように射精しなければならないのは、まるで寿命がちぢんでいくかのようで……はっきり言って、つらすぎる。

AVに出てくる女たちは、エロい。
それは演出されて編集されているからだ。実際は、1回ハメたらいくらのお金の世界。
即金でギャラが欲しくて来る女たち。求人情報やら、スカウトやらいろいろ。
学生もOLも人妻も、ナースだっている。
でも結局のところ、短時間でカラダを売って稼ぐパートタイマー的売春婦の女たち。
なかには天然でエロエロな女もいるにはいるが、大半はどこか心が冷めている。お金で割り切ってセックスできる生き物だ。
どんな女でもいいからヤリたいというオスもいるだろう。悪いことではない。

でも、今の俺は全然ちがう。

もう20年以上も、何百人もの見ず知らずの好きでもない女と、ヤリたくもない時にセックスを強いられてきたからか、裸を見ることにすら軽い嫌悪感をおぼえてしまう。ましてやセックスを最後までヤリきるには相当の覚悟がいるものなのだ。

せめて、ほんのちょっとの感情は欲しい。
愛とまではいかなくてもね。
でも仕事ってやつはそうもいかない。
なんとなくエッチなムードが生まれれば、いろんな意味でうまくいくのだけれど、撮影現場というものは、なかなかそうはならない。
決めた時間に集合して、決めた時間にだいたい終了する。ヤル内容も前日までには決まっている。ネジをはめこむベルトコンベアの工場とさして変わりはしない。
部品が女の肉体であるだけだ。
最終的にエロいセックスを作りあげ、それをしっかり撮影して商品にしなければならない。それこそが、俺の責任だ。

女は、股を開いていればなんとか絵になる。感じてるかどうかなんて二の次だ。
しかし、男はそういうわけにはいかない。
まずは、ボッキだ。
ボッキしているかどうかだ。

近年のAVは、モザイクも薄くなった。絶対にごまかしはきかない。
そして、俺自身も年をとってしまった。ペニスを強烈な固さでボッキさせつづけるのはムズかしい。一瞬ボッキしても持続させるのは至難のワザ。よっぽどコンディションがいいか、女が好みでエロいか、なにかないと最後までボッキを持続させるのが、とにかくムズかしい年頃なのだ。

ハメ撮りの途中で少しでもペニスが柔らかくなったら俺の負けだ。女のテンションも下がるし、撮影も中断してしまう。
一度そうなってしまうと、エロいムードを再び作りだそうとしても、これまたムズかしい。なんとなくシラケた感じになってしまう。
だから結局は、俺のボッキにすべてはかかっているのだ。
そういうわけで俺の苦悩の根本は、ボッキなのだ。女、子供にゃわかるまい。

純情な中学生くらいの頃には、将来大人になってから、ボッキのことで悩むようになるとは夢にも思わなかった。想像もしなかったような、ちっぽけで、人には絶対言えない悩みなのだ。

でも、そんなことを言うと、この職業もありえない。他人にオナニーさせるための仕事。そんな仕事につく可能性があるなんて、学校の先生は教えてくれなかった。そんな発想すら絶対なかった。

しかし今、冷静に考えてみると、中学生の当時、夢中で読んでいたエロ漫画雑誌の数々も、実際は誰かが、それもおそらく男が妄想で描いたもので、俺はそれで一生懸命オナニーしていたのだ。

エロスの世界。

まだ女の裸もセックスもまるで知らない少年が、コーフンしてのめり込んでいった男と女、オスとメスの官能的な世界。それが本当は、誰か大人の男の人が勝手に頭の中で作り出した妄想世界であったなんて、考えてみればヘンテコな話だ。かみくだいて言えば、俺は男の人にオナニーさせられていたことになる。そして、俺は大人になってから、他人にオナニーさせる側になった。不思議と言えば不思議だが、あたり前と言えばあたり前のような気もする。オナニー自体が不思議なのか。

もともと俺はシンガーソングライターを目指していたが、耳の障害で断念した。その後、結婚して子供もできたので生計を支えるためにAV監督をはじめた。子供が10歳になった時に離婚して、監督の仕事を全部断わって、ハメ撮りの仕事だけにした。それは、お仕事的なセックスを撮るのがもうイヤだったのと、離婚して妻子を養う必要がなくなったので、少し自由に生きたいと思ったからだ。

ところが、ハメ撮りをつづけてこのザマだ。
若い頃には、到底気づかなかった。
ボッキなんかで悩むなんて……。
自然とボッキはするものだったから……。
別にそんなこと考える必要はなかった。しかし今じゃボッキが最重要課題だ。
それなりの撮影時間中、ボッキさせつづけることが……。
それが職業だし、最低限の責務だからだ。

これは間違いなく父親や母親には相談できない悩み。相談されたほうも困るだろうけど。

ハメ撮りをやめればいいのだろうけど、他にできることもない。やりたい仕事もまるで見あたらない。もちろん貯金もまったくない。

それゆえ俺は40代半ばで、ボッキで悩む。

中高年の男性であれば、それなりに理解できるはず。でも、それが仕事でなければそれほど気にはならないだろう。肉体的に衰えていくのは当然のことだからだ。
俺は他人をオナニーさせる責任において、セックスをする。オナニーしない人種にとっては、どうでもいい話だろう。たかが、そんなことぐらいって思うだろう。

しかし、ボッキは重要だ。

やわらかいままのペニスを目にすると、なぜか気持ちも萎える。ギンギンにはち切れんばかりにボッキしたペニスにこそ男の欲望はさらに増幅していくのである。
俺も、オナニーしてる人たちが商品を買ってくれた売り上げからギャラをもらって生活しているので、ボッキしないわけにはいかないのだ。

バイアグラも飲んでみたりはするけれど、効き目はうすい。やはり持続はムズかしい。
そして、ペニスの萎えと比例して、気持ちも萎え、AV作品としても萎えていくのだ。

俺を萎えさせる要素は他にもある。
俺はプライベートではスキンはつけない。
今まで一度もつけたことがない。
しかし、AVの撮影においては別だ。90年代のエイズ騒ぎの頃から、必ずつけるようになった。これはモデルプロダクションとの約束であり、お互いの身を守るためには当然のことである。出会ったその日に、どこの誰とも知らぬ人間とセックスするのだから……。

いわゆる、ゴムありセックス……。
若い頃からゴムなしセックスしか体験してなかった自分にとっては、なんとも魅力のないピストン運動だろう。
それでなくても萎えやすい、今現在の俺なのに……。ボッキする可能性はさらに低くなる。
気持ちというよりは、これはナマでヤルことになれきったカラダの問題なのか? 脳の指令は、なかなか下半身までは届いてくれない。
ゴムなしセックスであればと思うのだが……。

他にも萎える要素はたくさんある。
とにかく、ハメ撮りというのは忙しい。
単に女とセックスしているだけじゃない。
まず基本的に片手には、つねにビデオカメラを持っている。たまにベッドの脇に置いたりはするけれど、だいたいはカメラを持ちながらヤッている。ちゃんと写っているか、テープがまわっているか、時間の配分など、つねに確認している。もちろん、女を両手で抱きしめてピストンに没頭するなどありえない。

顔のアップ、乳房のアップ、結合部。
全身を上から、横から、ななめから。
いろんな体位のバリエーションはもちろん、キスのアップや乳首なめ、女性器への愛撫なども自分でやりながら撮影しなくてはならない。とにかく、いろいろ忙しい。

お尻も撮るけど、顔も写ってないと困る。
おまけに途中でバッテリーが切れることもある。テープも終わってしまったら大変だ。照明がある時は、影が出ないように気をつけなければ作品にならない。
たかだか、男と女のセックスを撮影するのに俺だけ忙しいのだ。

めんどくさいと言えば、相当めんどくさい。
いいや、めんどくさすぎる。
めんどくさすぎるセックスだし、めんどくさすぎる撮影なのだ。

そして、最終的には精子を発射しなければならない。そこは絶対、確実に撮影しなければ許されない。AVの商品価値として大事なところだからだ。
そういうわけで全然エッチな気分になってる場合じゃない。もっと、心底いやらしい気持ちになってみたいものだが……。

ヘビの生殺しとまでは言わないが、つらく長い旅のような時間である。
とてもとてもみんながうらやましがるような、めくるめくエロスの世界はそこにはない。

結論としては、AVは観るのが一番だ。
ボッキ力のおとろえた俺にとっては、このAVにおけるハメ撮りこそが過酷な労働なのだ。好きだったはずのエロ仕事が、結果として俺を苦しめることになっているのだ。

やはり男として、ボッキの重要性を痛感する。それは男のプライドにも通じるだろう。

女に対してどこか弱気であったり、卑屈になってしまうのも、このボッキ力というものが多かれ少なかれ関係しているように思える。
なにも考えずにボッキする。
なにがあっても、ボッキしつづける。
これは、とてもスバラシイことだ。
そうであれば、あれこれ考えずに、穴に挿入して、その肉の感触だけで最後までイケる。
女の性格や好みなど関係なく、女のカラダを使ってオナニーするみたいな感覚で、ちょっとゼイタクなオナニーとも言えよう。
不純かもしれないが、それで射精できるのであれば、それはそれで満足だ。
男っていうのは、そういう生き物だろう。
一方通行の快楽でも充分に成立してしまうものだ。それこそが、オナニーというものだ。

まあ、こんなことを日夜考えつづけて生きていること自体、ひどくかわいそうな話だが、ボッキ力がおとろえるということは深く精神にも影を落とすようだ。
世の男性諸君からみれば、ハメ撮りで悩むこと自体が、ゼイタクな悩みと言えよう。
俺は、どこまでも一生懸命ハメ撮りしつづけるしかないのだ。

(続く)

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異端のAV監督・ゴールドマンが来る!!
ゴールドマン 87年にアートビデオより「電撃バイブマン」で監督デビュー。その後、実験的な作品をリリースするなどAV業界に対して常に挑戦的な姿勢を持ち続ける。中でも89年に発表された60分ワンカットの8ミリビデオ作品「なま」は伝説級。近年はハメ撮りでの言わせ系淫語で独自の世界を展開。20年間で約1500人の女とハメ撮りし、300本以上のハメ撮り作品を制作してきたAV業界の巨頭。
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10.07.25更新 | WEBスナイパー  >  セックス・ムーヴィー・ブルース
文=ゴールドマン |