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Alice who wishes confinement
私の居場所はどこにあるの――女児誘拐の不穏なニュースを観ながら倒錯した欲望に駆られた女子高生が体験する、エロティックでキケンで悩み多き冒険。理想と現実の狭間で揺れ動く乙女心とアブノーマルな性の交点に生まれる現代のロリータ・ファンタジー。オナニーマエストロ遠藤遊佐の作家デビュー作品!!――ロリコンって人種は、セックスそのものには興味がないものなのかしら。
タナベが彼女の体をオモチャにするようになってから、数日が経つ。けれどもまゆりの体はまだ処女のままだ。
毎晩毎晩、口では言えないようないやらしいことをしているのに、血の通った男と女が一つの部屋にいたら普通にするだろう行為だけがないのは、ちょっとヘンなんじゃないだろうか。
リビングの床に横になって、ぼんやり考える。ここのところタナベに弄ばれる以外はだいたいこうして横になっているので、もう何年もここにいるんじゃないかと錯覚しそうになる。
「イタズラ以上のことはしない」という彼の態度は徹底していた。なんといっても唇にキスすらしないのである。
まゆりは別にセックスがしたいとは思わないし、挿入が怖いという気持ちも依然としてある。でも、どんなに恥ずかしい行為でも、毎日されていれば慣れてくるものだ。最近では、あんなに苦手だった中年特有の体臭にだんだん安心感を覚えるようになってきている。舌でアソコを舐めまわされ散々イカされた後には、ぐったりした体をギュッと抱きしめられたいと思うことすらある。
一度、勇気を出して「レイプしないんですか」と聞いたことがあった。
それに対するロリコン男の言い分は、「お前みたいな売女とセックスして手玉に取られちゃかなわないから手は出さない」というものだった。
「僕の理想は清楚で純粋な少女だからね。見た目だけ可愛くったって、男に貢ぐだけ貢がせて逃げ出そうとするようなずる賢い女じゃ勃起しないんだ」
まゆりがあからさまに傷付いた様子を見せると、タナベは調子が出てきたのか“自分の夢”とやらを得意げに話しだした。
「ハプニングバーって知ってるかい? 時にはいやらしいハプニングが起きることもある大人の遊び場さ。昔、僕がそこに通っていたときに、素晴らしいカップルに会ったことがある。男は冴えない初老の縄師で、女は絶世の美人。一見釣り合わないようにも見える2人だけど心と体が完全につながっていて、その美女は縄師の言いなり。どんな卑猥な命令にも喜んで従うんだよ。素晴らしいと思わないか? 男と女はそうでなくちゃ。嘘や打算なんて糞食らえだ。僕もいつかそんな相手にめぐり逢って世界中の人達に見せびらかしたいと思ったよ。まあ、ようやく見つけた相手は、こんな売女だったけどね……」
――なによ、私ばっかり責めて。自分だって嘘つきのくせに……。
まゆりは、タナベの「一生監禁してやる」というセールストークに騙されたことをまだ根に持っている。でも、「自分だけの女を手に入れたい」と切望していたタナベの気持ちを考えると、どうしても憎みきることができない。
「ああン……お願い、欲しいのぉ……中にちょうだい。な、何でも言うこときくからぁ……」
考え事をしているところへ、女の甲高い声が急に耳に入ってきてビクッとした。
タナベが会社に行く前にセットしていったアダルトビデオである。
彼は毎朝「少しは娯楽もなくちゃな」とニヤニヤしながら、2人で観ようと約束していた『24』の代わりに、どぎついAVを流していく。自分がいない間もセックスのことだけを考えさせておこうという魂胆なのだろう。それは大抵、清楚で可愛らしい女子校生がスケベなヒヒじじいに性感を開発され、次第にその虜になっていくという内容だった。中にはモザイクのかかっていない、そのものズバリのものまである。
家にひきこもっていたときによくインターネットでHなサイトを眺めていたけれど、初めて観るAVは迫力が違って、つい見入ってしまう。なんといっても42インチの大画面の中で、男女の生々しい痴態が繰り広げられるのである。目が釘付けになっても仕方がない。
しかも、ヒロインはいつも子犬のような顔をした色白で黒髪ロングヘアの女の子。つまり、まゆりによく似たタイプなのだ。それを観るたびに、まるで自分が画面の中の少女になったような気分になり、無性に興奮してしまう。
その他にも、部屋の中にはセーラー服姿の少女グラビアが載ったエロ本や、色とりどりの大人のオモチャが散乱していた。
セックスはしないといっても、20年もの間溜めに溜めたタナベの欲望は半端なものではなかった。むしろ普通に犯されたほうがマシだったかもしれない。ピンクローター、バイブ、電動マッサージ機、緊縛用の麻縄、様々なコスプレ衣装、そしてまゆりの裸を撮影するためのポラロイドカメラ。彼がリビングに持ち込んだダンボールの中には、あらゆる種類のエログッズが詰まっていた。それを一つずつ取り出し、驚くまゆりの反応を充分に楽しんでから順番に試していくのである。
初めて味わうピンクローターの振動や麻縄の甘い感触は、まゆりの体を日毎に変えていった。口には出さなかったけれど、心のどこかにタナベの帰りを心待ちにする自分がいるのだ。絶頂に達するスピードも日毎に早くなってきている。
そして昨日は、ついにアソコの毛を剃られてしまった。思い出しただけでも恥ずかしくてどこかへ消えてしまいたくなる。
タナベは数日ぶりに入浴させるのを交換条件に剃毛を迫り、二枚刃のカミソリとたっぷりのシェービングフォームを使ってまゆりの恥ずかしい部分を丸裸にしてしまった。
まずハサミでその部分の毛を短くカットし、それから丁寧に時間をかけて土手から膣の周りまでをツルツルに剃り上げる。熱い蒸しタオルの下から現われた幼女のようなパイパンを見て、中年男は思わず息を飲んだ。ああ、なんて可愛いんだ――。
飾り毛のなくなったその部分を狂ったように舐めしゃぶられ、まゆりはアッという間に絶頂に達した。
今、まゆりはタナベに与えられた男物のTシャツ一枚の姿だ。
18歳の小柄な少女には大きめのサイズだが、下着をつけることは許されていないため、プリッとした可愛いお尻やツルツルのアソコが丸見えである。座って下を向くとふっくらと生々しいワレメが自然と目に入り、恥ずかしいようなムズムズするような、なんともいえない気持ちになる。
――私って、いやらしい。
エログッズとAVだらけの部屋を見て、まゆりは小さな声でつぶやいた。
一週間前までは整然と片付いていたリビングが、今では世にもふしだらな空間になっている。でも、不思議と汚らわしいとは思わなかった。
色とりどりの大人のオモチャと大画面テレビから流れる喘ぎ声の中で、ドキドキしながら遊び友達を待つ自分。なんだか秘密基地みたいじゃないか。
午後11時。タナベが仕事を終えて会社から帰ってきた。
以前は必ずと言っていいほど定時に帰宅していたのに、最近はこれくらいの時間になるのが普通だ。来月頭には大阪に転勤しなければならないのだから、引継ぎやら何やらで忙しいのだろう。
それでもタナベは簡単な食事を終え風呂に入った後、毎晩深夜から“楽しい遊び”を決行する。一日ごとに感度の増していく少女の体を飽くことなく弄び、時には明け方にまで及ぶこともあった。
自分は誰もいない昼間にいくらでも眠れるが、彼はそうはいかない。いやらしいことしか頭にないロリコンに見えるけど、こう見えてちゃんとした大人で社会人なのだ。2、3時間の仮眠をとっただけでまた何事もなかったかのように会社に出かけていく中年男の意外なタフさを、まゆりは密かに尊敬している。
「これを飲みなさい」
いつものようにコンビニで買ってきた弁当を食べ終え、さあこれからお楽しみが始まろうという時、タナベが言った。差し出された手のひらには毒々しいピンク色のカプセルが3つ載っている。
「……なんですか?」
少女は少し身構えた。
昼の間ずっと見せられていたアダルトビデオを思い出したからだ。それは、薄幸そうな顔をしたセーラー服姿の女子校生が、何人もの男に嬲りものにされるという内容だった。画面の中の少女はベッドの上に縛り付けられ、最初は嫌がって大声で泣き叫んでいた。しかし、媚薬を飲まされてしばらくすると人が変わったようにトロンとした目付きになり、ちょうだいちょうだいと狂ったように腰を振って次々と男を受け入れるのだ。
きっといやらしい薬に決まってるわ。タナベがどこからか持ってきたエログッズの山に目をやり、まゆりは確信した。よく見ればカプセルの毒々しい色は、ビデオの中に出ていた媚薬とそっくりだ。
「イヤ、飲みたくない」
「どうしてだい」
「だって、そんなもの使うなんて、いくらなんでも卑怯です……」
「そんなもの?」
タナベは一瞬きょとんとしたが、少女の目線の先にAVのパッケージがあるのに気づくとニヤニヤしながら言った。
「へえ。オマンコ舐められるのが大好きな売女でも、やっぱり名門星涼学園の生徒だけある。なかなか勘がいいじゃないか。でも、イヤだと言えば許されるなんて思わないほうがいい。きっちりこいつを飲むまでは、水も食事もおあずけだってわかってるだろう? 今日だけじゃないぞ、明日も明後日もずっとだ」
「……」
「さあ、飲むんだ」
こういう時のタナベの声は、穏やかなのに抗えない威圧感がある。
まゆりがおずおずとカプセルを口の中に入れ、ペットボトルのお茶を含むとコクリと音を立てて飲んだ。
赤い唇を開かせ、中に何もないのを確認すると、タナベは満足そうに「よし、いい子だな」と言った。
「その薬はドバイの大金持ちが好んで使う強力な媚薬だ。感度が普段の数倍になり、男が欲しくてたまらなくなる。夫以外の男には決して肌を見せない貞淑なイスラムの女たちが、それを飲むと誰彼かまわず股を開き、ヨダレを垂らしてイキまくるそうだよ。それだけでいくらしたと思う? 高かったんだぞ」
じっくり元をとらせてもらわなきゃな。怯える少女の胸元を見ると、Tシャツの下ですでに乳首が固くなっている。楽しくてたまらないという顔で、中年男はその敏感な突起に手を伸ばす。
「あ……許して……」
丸出しの秘部から生温かいものが溢れてくる。
私、どうなっちゃうんだろう――。大声で泣き出したいのはもちろんだ。でも、どういうわけか「このままスケベな売女になってしまいたい」という甘い感覚も湧いてくるのだ。
2つの感情の間を揺れ動きながら、まゆりはギュッと目を閉じた。
(続く)
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